2012年01月01日

【外務大臣 玄葉光一郎殿】貴省に対する公開質問書の提出及び回答要請に関する件=沖縄密約情報開示請求訴訟 資料

平成23年11月14日

外務大臣 玄 葉 光一郎  殿


沖縄密約情報公開訴訟
原告共同代表  桂      敬  一
        柴  田  鉄  治
        新  崎  盛  暉

貴省に対する公開質問書の提出及び回答要請に関する件

 私たちは平成21年に自民党政権下で、国を被告(処分行政庁は貴省及び財務省)とする、いわゆる沖縄密約情報公開訴訟を、 原告として提起しました(東京地方裁判所民事第38部 平成21年(行ウ)第120号 文書不開示決定処分取消等請求事件)。その結果、 同22年4月の地裁判決おいては、貴省および財務省(旧大蔵省)に対する当該密約を証する文書の開示命令を得ることになりました。
 しかし、情報公開の推進を国民に約束した民主党政権下で、国はこの判決を不服として控訴し(事件名: 東京高等裁判所第19民事部 平成22年(行コ)第183号 文書不開示決定処分取消等請求控訴事件)、 私たちは被控訴人として再び裁判の続行を強いられる事態となりました。

 そして、本年9月の控訴審判決は、該当の密約やそれらを裏付ける公文書の存在を認める事実認定、 および行政文書の開示請求者に課せられる当該文書所在に関する挙証責任を軽減する法解釈などの点は、原審の判断を踏襲したものの、 当該文書を保有せずとする行政の主張を裏付ける 「特段の事情」 が生じたり、行政による隠匿が嵩じて 「廃棄」 などに至った場合、 開示請求者が文書保有ありとした 「推認」 は崩れ、行政が主張の文書 「不存在」 は事実とみなされ、その事実だけを理由に、 不開示処分を決定しても、情報公開法上は適法である、とする判断を示して、原審判決を取り消し、被控訴人(原告)敗訴としました。

 しかし、私たち原告は、このような判決には承服できません。
 情報公開法で開示禁止と指定されたもの以外の文書を、行政が国民に知られることをおそれて 「廃棄」、即 「不存在」 とし、 裁判所がその措置を法的に正当化するなどのことを、国民が容認できるものでしょうか。私たちは、控訴審判決を不服とし、 最高裁に上告の手続きをとることとしました。もちろん私たちは、最高裁の公正な判断を期して待つものです。だが、 行政のこのような意図的な公文書廃棄は、当該行政機関の責任を直ちに問う事案だ、とも思量するものです。そこで私たちは、 控訴審が廃棄の可能性を認定した貴省文書については、貴職に直接、疑問の点を質し、ご回答を得る必要がある、と考えました。

 さる9月22日、東京高裁が判決を下したとき、これについて貴省は報道機関に対して、 「開示対象文書は不存在につき不開示というわれわれの主張が認められた妥当な結論」 との談話を発表しただけでした。判決は、文書  「不存在」 に至る経緯を、貴省内担当者による文書の取得、特殊な保管、ならびに廃棄の可能性という行為を列挙し、説明しましたが、それは、 従来貴省が一貫して表明してきた取得、保有、保管すべてを否定してきた見解と、全く相反するものです。しかし、報道発表は、 そうした食い違いについての言及をいっさい避けたものでした。また、控訴審判決は一審につづき、開示請求の対象文書はいずれも 「密約」  を内容とするものだったと、沖縄財政密約の存在を正式に認定するものでしたが、その点についても、 なんらコメントを明らかにしませんでした。

 私たち原告が開示請求を行った三つの密約文書は、控訴審判決の指摘のとおり、どれも 「第1級の極めて重要な歴史的文書」 であり、 「国民共同の知的資源」 (公文書管理法)のなかでも最上位にランクされる性質を有するものです。したがって、主権者・国民全体が、 これら文書の存否、閲覧の可能性に重大な関心を抱くのは当然のことです。これに対して貴省は、 みずからが行ってきた従来の主張と異なる判断が裁判所によって示され、それら主張を前提にとってきた対応に疑念が生じる事態となった今、 これらの食い違いに関して、進んで国民に納得のいく説明をすべき義務がある、といわねばなりません。国民には、それを求める権利があります。

 以上のような考え方から、私たち原告は貴省に対して、主権者・国民に代わって問題と思うところを別紙により提起し、 回答を求めるしだいです。本状ならびに質問事項は公開質問書とし、貴職にお届けしたのち、報道機関等によって広く一般に伝えられるよう、 取りはからうこととさせていただきます。

 原告団全員の氏名等を以下に記しました。一同、誠意ある回答を心から期待いたすものです。私たちは、ご回答もまた、 国民のあいだに広く周知してまいる所存です。ご回答は、平成23年末までに下記にお送りくださるようお願い申しあげます。

(宛先)原告団事務局長 岩崎貞明
〒160−0007 新宿区荒木町1−22−203 メディア総合研究所

   沖縄密約文書不開示決定処分取消等請求事件 原告名簿
    原告共同代表 桂  敬一 (元立正大学教授。東京都大田区在住)
   同       柴田 鉄治 (元朝日新聞記者。神奈川県川崎市在住)
   同       新崎 盛暉 (沖縄大学名誉教授。沖縄県那覇市在住)
  原 告      岩崎 貞明 (『放送レポート』編集長。東京都品川区在住)
   同       奥平 康弘 (東京大学名誉教授。東京都調布市在住)
   同       加藤  剛  (ジャーナリスト。愛知県名古屋市在住)
   同       加藤 義春 (元原子力研究所職員。茨城県東海村在住)
   同       金平 茂紀 (東京放送記者。神奈川県横浜市在住)
   同       我部 政明 (琉球大学教授。沖縄県那覇市在住)
   同       北岡 和義 (日本大学講師。静岡県熱海市在住)
   同       小中陽太郎 (作家。東京都世田谷区在住)
   同       澤地 久枝 (作家。東京都渋谷区在住)
   同       田島 泰彦 (上智大学教授。埼玉県所沢市在住)
   同       辻   一郎 (元毎日放送記者。大阪府吹田市在住)
   同       西村 秀明 (毎日放送記者。大阪府箕面市在住)
   同       西山 太吉 (元毎日新聞記者。福岡県北九州市在住)
   同       藤田 文知 (元BPO統括調査役。東京都江東区在住)
   同       松田  浩  (元日本経済新聞記者。千葉県松戸市在住)
   同       元木 昌彦 (元講談社編集者。東京都中野区在住)
   同       森広 泰平 (アジア記者クラブ事務局長。
                    東京都江戸川区在住)
   同       山口 二郎 (北海道大学教授。北海道札幌市在住)
   同       由井 晶子 (元沖縄タイムス記者。沖縄県那覇市在住)
   同       米田 綱路 (『図書新聞』記者。東京都墨田区在住)
           (2011年10月30日現在。最高裁判所上告人23名)


(別紙)質 問 事 項

1.外務省は、米軍用地の原状回復費用肩代わりとVOA施設移設費用支払いの二つの密約文書を、「交渉の“途中経過”のメモ」  と考えているのか。

(質問の趣旨)
 外務省は、私たちの米軍用地の原状回復費用肩代わりとVOA施設移設費用支払いの二つの密約文書の開示請求に対して、裁判において、 これら文書が、実際には外交交渉の最終合意を記録するものであるにもかかわらず、交渉の“途中経過”のメモに過ぎない、と強弁し、 自省におけるその取得・保管を、はぐらかしてきた。しかし、裁判所は、一審・控訴審とも、当該文書の取得・保管の事実を明確に認定した。 この食い違いについて、外務省は何ら説明をしていない。

2.外務省は、米軍用地の原状回復費用肩代わりとVOA施設移設費用支払いの合意を、「密約」 と認めるのか。

(質問の趣旨)
 財務省は、米国財務省と取り交わした沖縄財政密約のうち、「無利子預金問題」 など、ある部分の存在は認めた。これに対して外務省は、 いわゆる有識者委員会の極めて不明確な調査結果を発表しただけですませたままだ。同委員会は 「狭義の密約」「広義の密約」 とする曖昧な方法ではあるが、密約の存在を認めたといえなくもない。
 しかし、それに対し、岡田外相は「コメントはしない」と言明するのみで、それ以上踏み込もうとしなかった。民主党政権は、 沖縄密約の徹底糾明と情報公開の促進を旗印に掲げ、発足した。にもかかわらず、自民党政権下でつくられた密約に対して、 なぜ明確な認定と是正のための判断をためらうのだろうか。とくに沖縄財政密約については、東京地裁も東京高裁もそろって、 その存在を全体にわたり、完全に認定した。外務省だけがその事実を認めることを回避しつづけているが、その理由がまったく理解できない。
 民主党政権のこうした煮え切らない態度の結果、民主党は自民党とのあいだで沖縄密約問題を、 政権運営への協力を得るための取引材料に利用しているのではないかなどとする、国民の疑惑さえ招いているところがある。

3.控訴審が、2001年の情報公開法施行前というタイミングで密約文書の意図的な廃棄が行われた可能性を指摘したが、 とくに廃棄という点に絞った調査はしなかったのか。そうした事実を確認するために、第三者を起用した調査委員会を設置するなど、 再調査の実施を検討する考えはないのか。将来における公文書の不当な廃棄、隠蔽を、どのようにして防止するのか。

(質問の趣旨)
 控訴審判決は、政府がかねてからの密約全面否定方針に基づき、当該文書を、2001年の情報公開施行前というタイミングで、 意図的に廃棄した可能性がある、と結論付けた。
 この意図的な隠蔽には積み重ねがあり、2000年前後から、沖縄密約を証す米国側保有文書を米国の国立公文書館が相次いで公表、 その内容が日本にも報道されるようになると、同年5月、当時の河野洋平外務大臣が、すでに退任していた吉野文六元アメリカ局長に電話をかけ、 取り扱った密約に関する問い合わせについてはその存在を否定するように、と依頼していた。当時の外務当局が、 組織的に事実の隠蔽に動いていたのである。これは吉野元局長自身の証言によって明らかにされた事実である。
 ところが、岡田克也外務大臣を委員長とした 「外交文書の欠落問題に関する調査委員会」(2010年4月設置)は、「・・・組織的、 意図的な廃棄を示唆するような説明や文書は確認されなかった」と、いとも簡単な結論しか出さなかった。
 2000年前後から情報公開法施行の2001年までの期間は、たかだか10年前のことであり、隠蔽や廃棄が事実であれば、 その当事者の多くは今も現役であり、退任者もまだ生々しい記憶を失っていないはずだ。しかし、 当事者たちが重大な行政犯罪に類する意図的な公文書廃棄を、簡単に証言するとは考えられない。だから、欠落問題調査委員会も、 真実を語る証言が得られなかったのではないか。
 民主党政権は、2011年4月に、「国民の知る権利」 を書き入れ、大きな改善策を盛り込んだ情報公開法改正案をまとめ、 国会に提出したのに、審議することなく、これを棚上げにしている。最近はむしろ、情報公開に逆行する 「秘密保全法制」の実現に力を入れ、 限定の曖昧な政府の「特別秘密」の法定化を急ごうとしている。自民党単独支配時代の「国家秘密法」を思わせるものだ。民主党政権が掲げた 「情報公開」という国民に対する公約を撤回したのではないか、という疑念すらある。
 このような状況から生まれる疑惑と政治不信を一掃するためにも、外務省はこの際、東京地裁・ 東京高裁の密約認定に合致する方向ですべての事実の解明に力を尽くし、国民の信頼を回復することのできる回答を示すべきではないか。

以 上


 

平成23年11月14日

内閣総理大臣 野 田 佳 彦  殿


沖縄密約情報公開訴訟
原告共同代表  桂      敬  一
        柴  田  鉄  治
        新  崎  盛  暉

外務省への公開質問書提出のお知らせ及びお願いの件

 平成21年に国を被告(処分行政庁は外務省及び財務省)とする、いわゆる沖縄密約情報公開訴訟 (東京地方裁判所民事第38部 平成21年(行ウ)第120号文書不開示決定処分取消等請求事件)を提起した私たち原告は、 本年9月29日の控訴審判決における認定事実や判示理由に照らしたとき、 それらの所見と外務省のこれまでの言動とのあいだに多くの食い違いがあることを重視し、これらについて不審を晴らすため、 公開質問書を11月14日付で外務大臣宛に提出、回答を求めることにしましたので、 政府の最高責任者としての貴職にもお知らせ申しあげるしだいです。公開質問書の写しを同封いたしますので、 詳細はこれによりご理解くださるよう、あわせてお願い申しあげます。

 私たちの訴訟の提起は自民党政権下のことでした。そして、平成22年4月の東京地裁一審判決は、被告・ 国に対して当該密約を証する文書の開示を命令するものでした。しかし、情報公開の推進を公約した民主党政権下で、 国はこの判決を不服として控訴(事件名:東京高等裁判所第19民事部 平成22年(行コ) 第183号 文書不開示決定処分取消等請求控訴事件)、私たちは被控訴人として再び裁判の続行を強いられ、納得し難い判決理由により、 原審判決を取り消され、訴え、請求もすべて却下、棄却される事態に逢着しました。

 この控訴審判決の事実認定は、開示請求対象の密約文書がとくに重要なものであればあるだけ、外務省が密約そのもの、 ならびにその証拠文書を隠蔽する必要を強く感じ、公式発言ではそれらの不保有を言明しながら、 実際には限られた人間による特殊な保管をつづけ、最終的には平成13年の情報公開法施行前、秘かに 「廃棄」 した可能性が否定できない、 とするものでした。そして、このような可能性を根拠に被告の主張する 「不存在」 は妥当なものであり、 不開示処分決定の理由としても情報公開法上十分であるとし、この決定を適法としたのです。 私たちは情報公開法をこのように解釈する判決には承服できません。そのため、本年10月12日、最高裁判所に上告いたしました。

 もちろん私たちは、最高裁判所の公正な判断を見守る所存です。しかし、控訴審判決の指摘と、 外務省の言明とのあいだに認められる食い違いは、裁判とは別に追及せざるを得ない問題です。なぜならば、判決が外務省の各種の密約の存在、 それを裏付ける文書の取得、その廃棄までの保管の続行等を、すべて事実として認定したのに対して、外務省は、 沖縄返還交渉当時から現在に至るまで、それらすべてを 「不存在」 「不保有」 とのみ、いい続けてきたからです。 控訴審判決についての報道談話も、「請求文書を保有していないという従来の政府の主張が認められた」 (藤村修官房長官)、 「ないものないないから、すみませんということです」 (山口壮外務副大臣)と述べるだけのものでした。このように判決を、 自分たちを正当化するものとして、全面的に肯定、受容するからには、外務省は廃棄によって 「不存在」 「不保有」 の状態に至った、 と判決が断じた部分をも、受け入れざるを得ないのが法理です。外務省は否応なく、 事実とされた公文書廃棄の行為について説明責任を負う関係に置かれます。

 私たちはこの点を、不備が目立つ現行の情報公開法によってのみ、争うつもりはありません。そのことは、 民主党も情報公開法改正案をおまとめになっておられるので、貴職にも十分ご理解いただけるものと考えます。私たちはそれよりも、 国民の納得がいかない、こうした問題を放置し、政府が統治行為の正統性を危機に晒すことをおそれるものです。外務省は、 実際に文書廃棄をしているのなら、その事実を率直に認め、それが正当な行為なのか否か、不当な行為であるとしたら、 なぜそうした事態が発生したかの理由、責任の所在、今後の防止策などを、早急に国民の前に明らかにすべきです。あるいは、 廃棄の事実がないのなら、一審判決が命じたように、さらに探索を続け、文書開示に結びつけていくべきです。 過失による紛失が確認できたのなら、そのことを謝罪したうえで、米国側保存文書を用いてでも、密約の事実を認めるべきです。 政府に対する国民の信頼回復を真面目に望むなら、それこそが早道です。

 私たちは、発足した民主党政権が情報公開の促進を公約し、沖縄密約関係文書の公開に力を入れだしたことを歓迎、 自民党単政権時代の談合がまかり通ってきた国内政治、不透明な外交に、終止符が打たれるのかと期待しました。しかし、 本件訴訟を提起したのち、せっかくの政権交代が起こったのに、政府は公約の方向には大きく動こうとせず、外務省にいたっては、 曖昧な調査を重ねながら、相変わらず自民党時代の密約外交を庇いつづけており、私たちはしだいに大きな失望を感じるようになりました。 情報公開法改正案も国会提出後、店ざらしのままであり、明年の通常国会に提出と報じられている 「秘密保全法制」 は、 限定不能とも思える 「特別秘密」 を設けて公務員に厳しい守秘義務を課し、必然的に情報公開とは逆行する流れを強めるおそれがあります。 民主党政府は政権運営への協力を求めるため、情報公開を自民党との取引材料にするのか、との疑惑を国民のあいだに招きかねません。

 そのような疑念を払拭し、「国民の知る権利」 を尊重、日本における情報公開制度の発展を目指し、 民主主義をしっかり根付かせるためにも、外務省は今、沖縄密約問題をめぐる態度について深刻に反省し、 私たち原告の公開質問書にも誠実に回答することが求められている、といわなければなりません。また、外務省をそうした方向に導き、 実地において情報公開制度の基盤的な条件を整えるためにリーダーシップを発揮することは、 まさに政府の最高責任者である貴職が双肩に担うべき課題であります。外務省の指導、監督に関して遺漏のないご協力を賜りたく、 重ねてご高配をお願いいたします。なお、貴職に対するのとほぼ同じ内容の書状と外務大臣宛の公開質問書を、 被告代表者である平岡秀夫法務大臣にもお送りしたことを、ここに申し添えます。

以 上

 



平成23年11月14日

 

法務大臣 平 岡 秀 夫  殿


沖縄密約情報公開訴訟
原告共同代表  桂      敬  一
        柴  田  鉄  治
        新  崎  盛  暉

外務省への公開質問書提出のお知らせ及びお願いの件

 平成21年に国を被告(処分行政庁は外務省及び財務省)とする、いわゆる沖縄密約情報公開訴訟 (東京地方裁判所民事第38部 平成21年(行ウ)第120号 文書不開示決定処分取消等請求事件)を提起した私たち原告は、 本年9月29日の控訴審判決における認定事実や判示理由に照らしたとき、 それらの所見と外務省のこれまでの言動とのあいだに多くの食い違いがあることを重視し、これらについて不審を晴らすため、 公開質問書を11月14日付で外務大臣宛に提出、回答を求めることにしましたので、 訴訟における国の代表者としての貴大臣にもお知らせ申しあげるしだいです。公開質問書の写しを同封いたしますので、 詳細はこれによりご理解くださるよう、お願い申しあげます。

 私たちの訴訟の提起は自民党政権下のことでした。そして、平成22年4月の東京地裁一審判決は、被告・ 国に対して当該密約を証する文書の開示を命令するものでした。しかし、情報公開の推進を公約した民主党政権下で、 国はこの判決を不服として控訴(事件名:東京高等裁判所第19民事部 平成22年(行コ) 第183号 文書不開示決定処分取消等請求控訴事件)、私たちは被控訴人として再び裁判の続行を強いられ、納得し難い判決理由により、 原審判決を取り消され、訴え、請求もすべて却下、棄却される事態に逢着しました。
 この控訴審判決の事実認定は、開示請求対象の密約文書がとくに重要なものであればあるだけ、外務省が密約そのもの、 ならびにその証拠文書を隠蔽する必要を強く感じ、公式発言ではそれらの不保有を言明しながら、 実際には限られた人間による特殊な保管をつづけ、最終的には平成13年の情報公開法施行前、秘かに 「廃棄」 した可能性が否定できない、 とするものでした。そして、このような可能性を根拠に被告の主張する 「不存在」 は妥当なものであり、 不開示処分決定の理由としても情報公開法上十分であるとし、この決定を適法としたのです。 私たちは情報公開法をこのように解釈する判決には承服できません。そのため、本年10月12日、最高裁判所に上告いたしました。

 もちろん私たちは、最高裁判所の公正な判断を見守る所存です。しかし、控訴審判決の指摘と、 外務省の言明とのあいだに認められる食い違いは、裁判とは別に追及せざるを得ない問題です。なぜならば、判決が外務省の各種の密約の存在、 それを裏付ける文書の取得、その廃棄までの保管の続行等を、すべて事実として認定したのに対して、外務省は、 沖縄返還交渉当時から現在に至るまで、それらすべてを 「不存在」 「不保有」 とのみ、いい続けてきたからです。 控訴審判決についての報道談話も、「請求文書を保有していないという従来の政府の主張が認められた」 (藤村修官房長官)、 「ないものないないから、すみませんということです」 (山口壮外務副大臣)と述べるだけのものでした。このように判決を、 自分たちを正当化するものとして、全面的に肯定、受容するからには、外務省は廃棄によって 「不存在」 「不保有」 の状態に至った、 と判決が断じた部分をも、受け入れざるを得ないのが法理です。外務省は否応なく、 事実とされた公文書廃棄の行為について説明責任を負う関係に置かれます。

 私たちはこの点を、不備が目立つ現行の情報公開法によってのみ、争うつもりはありません。そのことは、 民主党も情報公開法改正案をおまとめになっておられるので、貴職にも十分ご理解いただけるものと考えます。私たちはそれよりも、 国民の納得がいかない、こうした問題を放置し、政府が統治行為の正統性を危機に晒すことをおそれるものです。外務省は、 実際に文書廃棄をしているのなら、その事実を率直に認め、それが正当な行為なのか否か、不当な行為であるとしたら、 なぜそうした事態が発生したかの理由、責任の所在、今後の防止策などを、早急に国民の前に明らかにすべきです。あるいは、 廃棄の事実がないのなら、一審判決が命じたように、さらに探索を続け、文書開示に結びつけていくべきです。 過失による紛失が確認できたのなら、そのことを謝罪したうえで、米国側保存文書を用いてでも、密約の事実を認めるべきです。 政府に対する国民の信頼回復を真面目に望むなら、それこそが早道です。

 私たちは、発足した民主党政権が情報公開の促進を公約し、沖縄密約関係文書の公開に力を入れだしたことを歓迎、 自民党単政権時代の談合がまかり通ってきた国内政治、不透明な外交に、終止符が打たれるのかと期待しました。しかし、 本件訴訟を提起したのち、せっかくの政権交代が起こったのに、政府は公約の方向には大きく動こうとせず、外務省にいたっては、 曖昧な調査を重ねながら、相変わらず自民党時代の密約外交を庇いつづけるばかりであり、 私たちはしだいに大きな失望を感じるようになりました。情報公開法改正案も国会提出後、店ざらしのままであり、 明年の通常国会に提出と報じられている 「秘密保全法制」 は、限定不能とも思える 「特別秘密」 を設けて公務員に厳しい守秘義務を課し、 必然的に情報公開とは逆行する流れを強めるおそれがあります。民主党政府は政権運営への協力を求めるため、 情報公開を自民党との取引材料にするのか、との疑惑を国民のあいだに招きかねません。

 そのような疑念を払拭し、「国民の知る権利」 を尊重、日本における情報公開制度の発展を目指し、 民主主義をしっかり根付かせるためにも、外務省は今、沖縄密約問題をめぐる態度について深刻に反省し、 私たち原告の公開質問書にも誠実に回答することが求められている、といわなければなりません。また、外務省をそうした方向に導き、 情報公開制度の基盤的な条件を整えていくことは、本訴訟における被告代表者である貴職に、強く望まれるものです。外務省の指導、 監督に関してよろしくご協力賜りたく、重ねてご高配をお願い申しあげます。なお、 貴職に対するのとほぼ同じ内容の書状と外務大臣宛の公開質問書を、野田佳彦首相にもお送りしたことを、ここに申し添えます。

以 上


posted by JCJ at 22:59 | TrackBack(0) | パブリック・コメント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック