2012年01月23日

ソウル 日本大使館見据える「慰安婦の少女――日韓のトゲ、マスコミにも責任=杉山正隆

 韓国の市民団体が昨年12月14日、ソウルに設置した「慰安婦の少女の像」。 在大韓民国日本大使館前の片側1車線の道路をはさんだ歩道上に、小学校高学年くらいの少女の像が木の椅子に座っていた。 日の丸がはためく大使館を真正面に見据え、その眼からは涙があふれ、頬を伝っているようにも見えた。

 1月4日のソウルは最低気温がマイナス11度。小雪が舞っていた。可愛い絵柄の毛布が小さな体に巻かれ、首には2本のマフラー、 毛糸の帽子で寒さをしのいでいた。昨年のクリスマスには、チョゴリにビニール合羽姿。小さなツリーと、真紅のバラの花が数輪、 隣の椅子に置かれていた。

 ソウル中心部の大使館周辺は、警備の警察官が巡回しているものの、時おり同僚と笑いながら話し、その横を多くの通行人が行き交う。

 ソウル五輪が開かれた1988年以降、毎年数回、韓国を「定点観測」している私だが、 いわゆる慰安婦問題が韓国国民の話題に上ることは急速に薄れてきたように感じる。「竹島」(韓国名・独島)に関し、 韓国政府が着々と実効支配を強めているのとは対照的だ。

 以前は日本人と分かると乗車拒否することもあったタクシーなどでも、トラブルに巻き込まれることはなくなった。 禁止だった日本の音楽は巷にあふれ、日本専門チャンネルのテレビ局も。地下鉄の車内や構内などで日本語のアナウンスが入ることも珍しくない。

 民間レベルでは蜜月時代とも思える日韓にあって、「慰安婦問題を蒸し返すのか、何を今さら」との思いがよぎるかもしれない。しかし、 「慰安婦」と呼ばれる女性たちの高齢化は待ったなしの深刻な状態だ。さらに、日本以上に男性優位の韓国社会にあって、 彼女たちへの風当たりは今も相当なものを感じる。

 野田佳彦首相と李明博大統領は「未来志向の日韓関係」を確認したと日本政府は強調するが、問題は残されたままだ。時には、 政権批判の矛先をかわすために「日本カード」を切る韓国政府のしたたかさには辟易する一方、国内と韓国・ 中国などへの二枚舌を使い分ける日本政府の小ずるさには嫌気がさす。

 日韓に鋭く突き刺さったトゲを見据えない日本のマスコミにも話をこじらせた責任がある。「慰安婦の少女」は、 日本人男性でジャーナリストでもある私を見つめているようにも感じた。             

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」1月25日号(1面)
http://www.jcj.gr.jp/20120101men.pdf

 


 

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 JCJ機関紙「ジャーナリスト」見本(2012年1月25日号4面)
 http://www.jcj.gr.jp/20120104men.pdf

posted by JCJ at 19:11 | TrackBack(0) | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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