2012年01月23日

情報支配への飽くなき執念――不気味な秘密保全法=高田昌幸

思想調査の第一歩 相互監視強まる恐れ

 秘密保全法案が1月召集の通常国会に上程される見通しになってきた。法案の具体的な条文は明らかになっていない。しかし 「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」が昨年8月にまとめた報告書を一読すれば、「情報支配」 にかける権力者のあくなき執念に身震いするはずだ。
 「平成の治安維持法」の問題点は、こんな小さなスペースでは書ききれない。それほどの悪法である。ここでは二つだけ指摘しておきたい。 一つは法案自体が抱える問題点についてである。

 報告書が示す秘密保全法制の問題点は多岐に及ぶ。細部には言及しないが、「特別秘密」を扱うかどうかを調査する「適正評価制度」 を挙げるだけで法制の不気味さは十二分に伝わると思う。

 「適正評価」の中核は人物調査であり、国による思想調査の第一歩といってよい。
 報告書によると、調査項目は(1)人定事項(氏名、生年月日、住所歴、国籍(帰化情報を含む)、本籍、親族等)(2)学歴・職歴(3) 我が国の利益を害する活動(暴力的な政府転覆活動、外国情報機関による情報収集活動、テロリズム等)への関与(4)外国への渡航歴(5) 犯罪歴(6)懲戒処分歴(7)信用状態(8)薬物・アルコールの影響(9)精神の問題に係る通院歴(10)秘密情報の取扱いに係る非達歴、 などを想定している。国の委託などを受けた民間企業も対象になるので、公務員だけの話ではない。対象者本人だけでなく、 配偶者なども含まれる。そして平たくいえば、調査の権限は上司が持つ。

 一方、報告書によれば、故意・過失による漏洩だけでなく、教唆、未遂、煽動なども処罰の対象だ。最高刑は懲役10年だから、 令状なしの緊急逮捕も可能である。「取材した途端に逮捕」も冗談の世界ではない。

 いいたいことの二つ目。
 こういう法律ができると、必ず、「取り締まる側」と「取り締まられる側」ができる。この点は強調しても過ぎることはない。「協力」 という名の密告も始まり、相互監視の傾向が強まるだろう。おそらく社会のありようが根底から変わる。警察・ 検察を軸とした権力機構はより強固になり、個人はますます踏みつぶされていくだろう。

 こんな法律を成立させてはいけない。それに法律は改正される。改正を重ねて当初とは全く違った内容・運用になることも珍しくない。 治安維持法が猛威を振るったのも、制定数年後に改正された後のことだった。
 「反対の声をあげよう」といった、生やさしい動きでは足りない。日本新聞協会なども反対意見を出しているが、紙面はいかにも生ぬるい。 それでも私は、現場の記者には期待する。特に若いジャーナリストの諸君。こんな悪法は諸君のプライドが許さないだろう。しつこく、 くどいほど取材して、法案の問題点を暴き出してほしい。

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」1月25日号(1面)
http://www.jcj.gr.jp/20120101men.pdf

 


 


<<JCJ機関紙「ジャーナリスト」購読申し込みは、下記頁からどうぞ>>

 お名前、ご送付先、連絡先などをご記入の上、「希望内容」のプルダウンメニュから、 「機関紙購読申し込み」を選択のうえ、最下部の通信欄に「●●月号から」と購読開始希望月号を明記してください。

<JCJ加入申込みHP>
http://jcj-daily.sakura.ne.jp/postmail/postmail.html

・「ジャーナリスト」はタブロイド判8面、毎月25日の発行です。
・年間購読料:3000円(12号分)です。
※会員の場合、機関紙購読料は会費に含まれています。(←いまなら郵送料込み)
・見本(PDF)をご覧ください。

 JCJ機関紙「ジャーナリスト」見本(2012年1月25日号4面)
 http://www.jcj.gr.jp/20120104men.pdf

posted by JCJ at 19:13 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック