政府が国会提出を決めた秘密保全法案は、政府・行政機関の情報の対象を国の安全や外交の分野だけでなく、
「公共の安全及び秩序の維持」にまで分野を広げたうえで、重要情報を「特別秘密」に指定し、これを漏らした場合や、
取材等で接近する行為について厳罰に処そうとしている。しかも、過失、未遂、共犯・煽動行為にも処罰範囲は広げられている。
これは、公務員のみならず、行政に関連する民間業者、そこで働く労働者、これらの情報にアクセスするマスコミや研究者、
一般市民の生活や活動をまで広く規制することになる。
第一に、秘密保全法によって指定される「特別秘密」という概念は曖昧かつ広範であって、きわめて恣意的に行われる恐れがある。
国民の強い反対で廃案にされた国家機密法と比べてみても、「防衛」「外交」の秘密は無限定と言って良い。それ以上に分野を広げられたら、
本来国民が知るべき情報が圧倒的に隠されることになる。
第二に、秘密保全法は、漏洩や「特定取得行為」と称する秘密探知について、未遂、共謀、教唆、扇動行為にまで処罰の範囲を広げている。
これによって厳罰(故意の漏洩は最高10年の刑が科せられる)の脅しで取材源を締め付けて情報を出させないようにする効果を持つ。そして、
国の行政機関、地方公共団体などを取材しようとするジャーナリストの取材の自由・報道の自由は大きく侵害される。
国民の情報公開を要求する行動も萎縮するし、情報公開の行動を呼びかけたり、相談に加わったりしただけで処罰されかねない。
そして見逃せないのは、この「特別秘密」を取り扱う者を特定させるために、「適正評価制度」の創設を提起していることである。
国民の中から秘密の管理者としてふさわしい者を選ぶためとして、評価基準(非公開)を設定し、
公然と国民のプライバシー情報を収集する仕組みである。これは軍事情報の取り扱い条件としてアメリカや財界が従来から求めていることである。
プライバシー保護の点からも明確な人権侵害であり、監視社会のより強化につながる。
何と、国政調査権を持ち、議会での自由な発言を保障されている国会議員までその対象とするべく検討中だとも報じられている。
最近の密約問題や尖閣沖漁船追突事件や福島第1原発事故への日本政府の対応を考えあわせると、政府・
行政情報から国民をシャットアウトしていくこの秘密保全法は、まさに国民の望むべきものと全く逆方向としか言いようのないものである。
ジャーナリストは真実を追究する。真実追究を抑えつけ、国民を秘密漏洩罪で締め付けて、自由に物を言うことがはばかられる社会、
日米軍事同盟の強化を進めるアメリカと財界の要求に応え、管理社会を強めようとする秘密保全法を私たちは許さない。
秘密保全法は現代の治安維持法とも言うべきものである。
日本ジャーナリスト会議は、憲法をまもり、平和と民主主義を実現する立場から、この法制に反対する。この法制を阻止するため、
全力を挙げることを表明する。
2012年3月8日
日本ジャーナリスト会議(JCJ)