2012年10月29日

市民目線の報道に立ち返ろう=太田武男

 「ばかにしないで!」「余りに沖縄を踏みにじっている」―9日朝、テレビから沖縄の声が聞こえた。オスプレイの普天間配備を追った「みのもんたの朝ズバ」。日米合意の安全確保策が空手形でしかない実態を伝え「基地を無くすしかないね」と締め括った。
 世界一危険な基地に危険なオスプレイの強行配備は、第3次野田改造内閣発足の日だった。首相は記者会見で「日本政府として、安全性を十分に確認できた。わが国の安全保障に大きな意味がある。本土への訓練移転を具体的に進め、全国で負担を分かち合うよう努力を重ねたい」と述べた。「日本列島不沈空母化」(1983年・中曽根元首相)の仕上げ宣言かと怒りがよぎった。
 沖縄県民大会や各地で示された民意、全市町村議会からの度重なる抗議や決議も一顧だにされなかった。声高な「領土」発言とは逆に、主権も民主主義も無視する異常な米国追従。米海兵隊は今後、全国の6ルートで低空飛行訓練を計画する。
 高度規制や人口密集地回避など日米間で確認した「安全確保策」は、試験飛行の初日から破られた。沖縄・普天間の違反飛行や、爆音・墜落の恐怖が否応なく全土に広がる。日米同盟の議論も迫られよう。
 9月末に那覇市で開いたマスコミ倫懇は「日本の今とメディアの責務」を論じた。沖縄紙からは「基地が沖縄にあり続ける方が都合よく、本土メディアはそれに合わない報道を除外した」「米国、官僚、大手メディアが三位一体で…」と日米安保を絶対視する全国紙との「目線の違い・差別」を指摘した。大手紙からの反論もあったが、参加者は「基地・原発は全国の問題」「忘れず伝え続ける」ことを確認したようだ (7日付中国新聞)。
 9月14日に政府が纏めた「原発ゼロ」への「エネルギー新戦略」も米国と財界の反発で事実上、棚上げされた。使用済み核燃料の再処理継続など新戦略は矛盾だらけだったが、それでも当初メディアは『原発ゼロ』への一歩と絶賛した。
 ところが18日に経済3団体トップが記者会見して猛反発するや、翌日の閣議決定をあっさり見送った。20日の朝日社説は「米国や経済界、立地自治体が原発ゼロに強く反対したためだ」と「原発ゼロ」腰砕けを批判した。
 福島原発事故と核兵器、日米同盟とオスプレイの経過から「9条の輝く世界」を考えた。折しも京都大学教授の山中伸弥さんが、iPS細胞(多機能幹細胞)の開発でノーベル医学・生理学賞を受けた。iPS細胞を、人類社会をつくる「私」に置き換えて連想した。「一粒の私」が人権と民主主義、戦争拒否と環境保護、四つの思想を遺伝子に持てば人類に無限の可能性を開く――実現の道は努力しかないが。(JCJ代表委員)

(JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2012年10月25日号)



<JCJ機関紙購読・会員加入申込みHP>
http://jcj-daily.sakura.ne.jp/postmail/postmail.html

・「ジャーナリスト」はタブロイド判8面、毎月25日の発行です。
・年間購読料:3000円(12号分)です。
※会員の場合、機関紙購読料は会費に含まれています。(←いまなら郵送料込み)

posted by JCJ at 04:05 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック