2013年04月03日

憲法をめぐる「よじれ」をどう正す=柴田鉄治

 日本国憲法は制定以来、一度も改訂されていない。これは世界でも珍しく、ドイツの基本法(憲法)が50回以上も改訂されているのと比べると大違いだ。
 この事実だけをみれば、国民の圧倒的な支持があるようにもみえるが、そうではない。制定直後を除けば、国論が最も割れているのが憲法なのだ。しかも、体制を支えるべき与党が改憲を主張し、野党が護憲を叫ぶという奇妙な逆転状況が、戦後ずっと続いてきたのである。

 そのうえ、党是に改憲を掲げる自民党が政権をほとんど独占してきたのに、歴代首相は改憲派の、あの中曽根政権でさえ、「この政権では改憲を提案しない」と宣言するのを常とした。
 こうした憲法をめぐる「奇妙なよじれ現象」を一気に解消しようと試みたのが、6年前の第1次安倍政権だった。ところが、安倍首相が改憲に向って一直線に走り出したとたんに、国民世論は逆方向に動いた。
 実は、憲法をめぐる世論調査にも、それまで奇妙なよじれ現象があった。核心部分である「9条の改訂」についてはいつも反対意見が多数派なのに、どこを改めるべきかを問わずにただ「改憲に賛成か反対か」を訊くと改憲派が多数を占め、しかもその比率が年々増える傾向がつづいていたのだ。
 それが、安倍首相の改憲の動きに反比例するかのように、この改憲派の比率まで大きく減る方向に動いた。各地に「9条の会」が林立し、「9条を守れ」の声が一段と高まったことはいうまでもない。
 こうした「教訓」を学んで、第2次安倍政権の改憲への動きは、極めて慎重だ。7月の参院選までは目立たないように改憲論も中身まで踏み込まず、手続き論の憲法96条(衆参両院の3分の2以上で発議)の改正(2分の1以上に)から入ろうとしている。
 メディアまでそれに同調するかのように、憲法問題への取り組みが極めて鈍いように感じるのは私だけだろうか。安倍政権が改憲に向けて何を考えているのかは、選挙前に発表した自民党の改憲案にすべて出ているのに……。
 それを読むと、単に自衛隊が国防軍に変わるというだけでなく、憲法についての基本的な性格まで変えようとしていることが透けて見えてくる。国家が暴走しないように縛るものが憲法のはずなのに、逆に憲法によって国民の自由や権利を制限しようとしているのだ。そうなれば、言論の自由、報道の自由まで脅かされる。
 9条改正で国防軍化に賛成しているメディアがあることは承知しているが、報道の自由の制約に賛成するメディアはあるまい。安倍政権が憲法をめぐる「奇妙なよじれ」を一気に解消しようと策を練っているのなら、国民の側も先回りして、手続き論の段階からはっきり「ノー」と言おうではないか。

(しばた・てつじ/JCJ代表委員)

posted by JCJ at 11:08 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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