2013年11月29日

「秘密保護法案は立憲主義踏みはずし改憲、非公開裁判への道」=藤原真由美弁護士(日弁連憲法委員会事務局長)に聞く

 特定秘密保護法案の強行採決が憂慮される状況のなか、反対運動も高まっている。一連の運動の中でも、日本弁護士連合会は、早くから法案の問題点を指摘してきた。日弁連憲法委員会事務局長の藤原真由美弁護士は、実質改憲を進めるためにつくられる様々な憲法違反の法律の一つとして、この法案を批判する。

――秘密保護法の危険性はだいぶ知られるようになってきました。
 最近、新しい論点が出てきました。今年6月に制定されたツワネ原則(国家安全保障と情報への権利に関する国際原則)がそれです。
 その一つは「何を秘密にしてはならないか」を決めるということです。絶対に秘密にしてはならないことを決めることが、国民の人権を守るためには重要です。一度、秘密の指定がされると、情報公開請求しても開示されません。
 秘密指定の必要性の立証責任も、秘密保護法の条文に明記していません。手続き規定を明記するのは国際標準なのです。
 このツワネ原則に則れば、法案は根本から見直さざるを得ません。
――秘密をめぐる刑事裁判になった場合、政府側が秘密の内容を開示しないからといって裁判所が被告を無罪にする可能性は……。
 ないですね。秘密にされている中味はわからないまま、形式犯と同じように処罰することになるでしょう。法律的に定まっていることを犯したという外形だけ立証すればいい。
 秘密が違法であったり、実質的に保護に値しないものであれば有罪というには不当な判断ですが、秘密の違法・不当性の判断を誰もできないということになります。
――今度の法律は警察分野も含まれますから、違法な治安対策を内部告発した場合も裁かれますね。
 内部告発者は処罰しないと森まさこ担当大臣が発言しましたが、その規定が条文には入っていません。何の保障にもならない。
 そもそも政府側は基本的な考え方が全く間違っています。
 「国民には知る権利がある」とこちらが言うと、相手は「政府には知らせない権利がある」というのです。しかしこれは誤りです。「国家は権利を持っていない」というのが、立憲主義の大原則なのです。
 憲法改正の議論を思い出してみてください。憲法は国を縛るもので国民を縛るものではないという原則が96条改正問題の時に知られるようになり立憲主義という考え方が運動の中核になったと思います。
 国は国民の権利に縛られるものであって、権利を持つものではないのです。
「裁量権」という言葉がよく使われますが、法律によって国家に任されている、国民から付託されているもので、国家に権利があるというわけではない。
 しかし今の政府は、国家にも権利があるという言い方をします。おどろきですね。
――法律観、国家観が違っているのですね。
 この法案は自民党の改憲案に符合します。
 国家秘密を完全に守ろうとすると、最終的には裁判を非公開にせざるを得ない。しかし憲法82条で定めるように裁判は公開が原則です。
 公の秩序に関わる場合は非公開にできるという例外はありますが、その例外も国民の権利に関する事件については秘密にしてはいけないと定めている。
 だから国家秘密を守るために裁判を非公開にするとすれば、憲法改正が必要になるのです。
 秘密保護法が成立したら、今の刑事訴訟法を改正する必要が出てくると思います。裁判手続が非公開の方向に向かっていく。
 現在の公判前手続きのような手続きか、裁判官だけが秘密の内容を見る手続きか。
――弁護側が「こんなものが秘密に当たるのか」という防衛はできませんね。
 できないでしょう。弁護士としては秘密の中味がわからないままですからほとんどお手上げですね。
 もし秘密の内容を調べて立証すれば、弁護士自体が秘密漏洩に当たることになります。つまり裁判で有効な主張ができなくなる。
――国全体が軍事化するわけですね。
 軍事化と警察化ですね。今度の法案は防衛省以上に警察が熱心です。
防衛省にもアメリカから秘密情報を提供してもらうための法整備という狙いはありますが。
 警察は例えば放射能の管理施設の警備を強化したい思惑はあると思います。
 刑罰を強化して威嚇作用を持たせるのは一番簡単な方策ですから、真っ先に考え付くのでしょう。
 市民の権利を害するおそれのあるものをまず考えるというのは、人権感覚に乏しい証拠ですよね。
 そもそも今回の法案は紙媒体の情報ばかりを想定しています。紙情報が漏れるのは管理が悪いからです。自分たちの管理のいい加減さを不問にして、国民に権利侵害を押し付けています。情報のデジタル化に伴う危険性とか、対処すべきことはもっと他にあると思いますが……。
――今回はなかなか法案の条文が明らかになりませんでしたね。
 法案ができているはずの時期に、情報公開法を使って法案の公開を求めた人たちがいるのですが、文書は真っ黒に塗られていました。
 パブリックコメントの募集期間も普通は1か月ですが2週間しかない。法案反対コメントが9万件とも言われます。
 しかし政府は全く意に介せず、審議の直前に初めて法案を明らかにしました。
 衆参のねじれ状態が解消できたから何でもできるというのでしょうか。国会さえ通れば、国民が反対していても法律は作れるというおごりが感じられます。
 法案の出し方、パブコメの募集などの過程自体が、まったく民主的ではありません。衆議院での強行採決のような暴挙があれば、厳しく糾弾していかなければなりませんね。

聞き手 保坂義久

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2013年11月25日号

posted by JCJ at 11:45 | TrackBack(0) | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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