2014年03月14日

テレビ秘密保護法報道を検証する――2013年10月〜12月=放送を語る会

◆はじめに

 ◎〜モニター期間と対象番組、モニターにあたっての放送を語る会の姿勢〜

 2013年12月6日、特定秘密保護法は、参院での強行採決をもってついに成立した。この期間、テレビは、法案の内容や成立に至る政治過程をどのように伝えたのか、本報告は、数多くのテレビ報道番組をモニターした記録から、秘密保護法報道の特徴や問題点をまとめたものである。
 モニター期間は、10月6日から、12月10日までのほぼ2カ月と設定した。記録したのは、デイリーのニュース番組、週1回の報道番組である。

<モニター対象番組>
【NHK
】「NHKニュース7」「ニュースウオッチ9」「日曜討論」「時論公論」「クローズアップ現代」
【日本テレビ】「NEWS ZERO」「深層NEWS(BS)」「ウエークアップ!ぷらす」「真相報道バンキシャ!」
【テレビ朝日】「報道ステーション」「報道ステーションSUNDAY」
【TBS】「NEWS23」「報道特集」「サタデーずばッと」「サンデーモーニング」【フジテレビ】「スーパーニュース」「新報道2001」

 上記の番組の他に、「NHKスペシャル」、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」、「そうだったのか!池上彰の学べるニュース」などをモニター対象としたが、これらの番組では秘密保護法関連の報道がなかったため記録はない。
 モニターの方法は、各番組に担当者を決め、番組内容の記録とその日の放送についてのコメントの報告を求めるという方法をとった。記録はメンバー全体で順次読めるように共有した。これはこれまでの当会のモニター方法と変わりはない。

 今回のモニターは、これまでのモニター活動とやや異なるスタンスで実施している。最近の「TPP」「衆院選」「参院選」の報道モニターでは、報道の対象となる政治の動向について、団体として特定の主張を持って臨んだのではなかった。
 したがって、今回のモニター活動は、法案に対して批判と警戒感を持ちつつ行われたものであることを断っておきたい。この姿勢が、報告の客観性を弱め、説得力を欠くことになったか、あるいは逆にこの批判的姿勢によってこそ、放送メディアの弱点や欠陥を浮き彫りにできたかは、本報告を読まれる人びとの判断に委ねたい。

◆第1章 秘密保護法成立とテレビメディアの責任

 特定秘密保護法は、行政機関の長の判断で特定秘密が指定され、その秘密が何であるかも明らかにされないばかりか、国民の「知る権利」に応えようとするジャーナリズムの活動にも重大な制約が加えられる、きわめて危険な法律である。
 この稀代の悪法が成立してしまった背景に、メディアの怠慢があるとして、その責任を問う声がある。
 今回の秘密保護法のもとになったのは、2011年8月、民主党政権下で行われた秘密保全法制に関する有識者会議の報告書だと言われている。かつて自民党福田内閣時代にも、秘密保全法制の在り方に関する検討が行われており、政府による秘密保全の法制化の動きは執拗に続いていた。
 研究者や、一部のジャーナリストがこの危険性を繰り返し指摘してきたが、多くのメディアは、この動きをほとんど伝えず、国民に警告する役割を果たさなかった。
 今回のモニター報告は、限定された期間の報道を検証するのが目的だが、秘密保護法報道の大きな欠陥として、まずこのことを指摘しておきたい。

 国会に法案が上程されるに至って、テレビでも秘密保護法報道が増え始めたが、それでも、末尾資料のデータで明らかなように、10月から11月上旬にかけての報道は決して多くない。11月上旬からようやく連日のように報道されたが、この法案の重大な内容に照らしてみて、報道内容は満足できるものとは言えなかった。このことは本報告で明らかにしてゆきたい。
 法案への反対運動が全国で空前の盛り上がりを見せたが、成立を急ぐ政権の動きを止めることはできなかった。メディア、とくにテレビがもう少し早くこの法律の危険性を伝えていたら、状況は変わっていたかもしれない、という声が、市民の間からも聞かれた。
 こうしたテレビ秘密保護法報道の特徴と問題点は、今回のモニター報告の集積からつぎのように概括できる。

1、全体を通して、報道が国会での修正協議報道へ傾斜した。一方で国民の反対運動を軽視する傾向が見られた。また、法案の危険性について、独自の調査、取材に基いて伝える報道は不充分であった。
 この全体の問題点は、本報告第2章で番組内容の実例を挙げて批判する。
2、全体に問題点がありながらも、一部民放番組が批判精神を発揮して、法案の危険性を伝え続けたことも今回のテレビ報道で顕著な特徴であった。この事例は本報告第3章で記述する。
3、モニター期間中、NHKの報道姿勢が市民の強い批判を浴びた。これは今回の秘密保護法報道では注目すべき事象であり、この点の検証は欠かせないものとなった。とくに「ニュースウオッチ9」では、国会審議を含め、起こっている事実だけを伝える「客観報道主義」の弊害が露わになった。これは本報告第4章で解明する。

 このほか、番組の各種データを末尾の資料ページで示した。本文の理解を助けるものとして参照されたい。

◆第2章  秘密保護法報道全体の問題点

 特定秘密保護法案は、2013年11月7日衆議院で審議が開始された。それに伴って、各局とも本格的にこの法案に取り組むようになる(資料参照)。しかし、報道姿勢は、二つの流れに大きく分かれていた。すなわち、当初から「法案反対」のニュアンスが濃い番組を展開していたテレビ朝日、TBSのグループと、局としての主張は前面に出さず、事実の推移だけを伝えようとしたNHK、日本テレビ、フジテレビのグループである。特に後者に属する局の番組には、様々な問題点があった。

 ◎修正協議報道への傾斜

 与党単独での採決を避けたい自民・公明両党は、野党の一部を巻き込み「修正協議」に応じる構えを見せながら、法案成立を図ろうとした。協議は、11月14日、自民・公明両党に、日本維新の会、みんなの党が加わることで始まり、22日、4党合意が成立するまで続いた。問題は、この間ここで取り上げるニュース番組が、密室で行われた修正協議をめぐる各党間の政治的駆け引きを報じることに眼が向き、肝心の国会審議についての報道をおろそかにしたことである。

 その極端な例が日本テレビ「NEWS ZERO」だった。この番組では、ほぼ連日修正協議について報道していたが(資料参照)、内容はこれに関わる4党の動きのみで、国会審議の模様や、反対の立場をとる政党の主張などは一切報じられなかった。同じ局が制作するBS日テレ「深層NEWS」に至っては、修正協議に応じている党の関係者だけをスタジオに招くという、偏った扱いをしていた。
 また「ウェークアップ!ぷらす」では、11月30日の放送で、特定秘密の指定期間を60年にしたことや、第三者機関の設置についての日本維新の会の主張を当事者に語らせ、それを引き取る形で、コメンテーターの「修正することで法案は少しずつよくなる」という趣旨の発言を付け加えている。
 フジテレビ「スーパーニュース」も同様の傾向にあった。17日は安倍総理の「修正合意で成立を」という期待感をVTRで紹介し、さらに石破幹事長の「会期内成立」への意欲を、ナレーションの形で付け加えていた。まさに政府の広報機関的な報道の仕方である。翌日は修正協議の内容の解説に充てられたが、国会の動きや、反対を主張する党の見解は無視された。
 「NHKニュース7」も、似たような取り上げ方だった。18、19両日は、共産、生活、社民各党の見解も紹介しているが、修正案の内容などには踏み込んでいない。加えて、「野党との協議を通じ、なるべく多くの党の理解を得て成立させたい」という政府見解を繰り返し報じていた。「ニュースウオッチ9」は、修正協議にウェイトを置きつつも、上記の番組よりは全体のバランスに配慮していた。19日には、法案に賛成、反対それぞれの立場をとる専門家の見解を紹介することで、視聴者の判断材料に供しようとしていたし、20日には、特別委員会での社民党、共産党の議員の質問も紹介している。ただ、修正案の内容がどういうもので、法案自体がそれで改善の方向へ向かっているのかどうかなど、本質部分への言及はなかった。

 ここで批判すべき点が二つある。
 一つは、国会の軽視である。修正協議が続けられていた間、国会では衆議院安全保障特別委員会が開かれており、連日与野党の議員が質問に立っていた。反対の立場にある議員からの質問は、法案の問題点を突くものであった。森担当大臣の答弁が二転三転したのもその結果だった。19日には参考人質疑が行われ、各党が推薦した参考人が賛成、反対それぞれの立場からの陳述を行っている。
 一方、参議院本会議では15日、自衛隊法改正案が自民・公明、民主などの賛成多数で可決している。これは、海外での邦人救出の際、これまでの航空機、船舶に加え、車両も投入できるようにしようとするものだった。だが、国会でのこうした動きは、ほとんど放送されていない。国会審議という、民主主義の根幹をなす開かれた場での議論を無視し、密室で、しかも秘密裏に行われた修正協議が、あたかも本筋であるかのように報じたテレビ各局の姿勢は、ジャーナリズムの精神からは程遠いものだった。
 二つ目は、修正協議に関して、政党間の駆け引きという皮相的なことが報道の中心になり、協議の結果、法案がどのように修正されたのかの解説や論評が、ほとんどなされなかったことである。修正案は国会での審議が行われず、密室協議の結果がそのまま衆議院で可決される形になったが、国会を軽視したその運営の在り方についても、何らの批判も加えられなかった。
 実際には、修正協議の結果
 ●秘密指定の解除が、当初の30年から60年に後退、しかも永久に秘密にされかねない7つの例外項目が追加された。
 ●秘密指定が妥当かどうかのチェックを総理大臣が指揮監督する。これは当初の政府案にはなかった。
 ●防衛や外交に不利益を及ぼす6項目に加えて、これらに準ずる政令で定める重要な情報、という1項目を追加した。
など、むしろ改悪された感があるのだが、上記番組はいずれも、番組内で法案の詳細には触れていない。
 これに対し、「報道ステーション」と「NEWS23」は修正点について詳しく報じた上で、「報道ステーション」では「修正合意した内容は、政府案に歯止めをかけたというより、むしろ秘密を増やす要素が補強された形になっている」と批判し(11月22日)、「NEWS23」のアンカーを務める岸井成格氏は「修正が進んでいると、よくなっていると勘違いするが、悪くなることもある」と再三警告していた。(11月13日、19日)

 ◎反対運動の軽視

 前項でも触れたように、修正協議報道への傾斜は、法案に反対する党の動きを伝えることを軽視した。修正に応じた日本維新の会、みんなの党、そして独自の修正案を後半に提出した民主党を除いて、共産、生活、社民の各党は当初から法案に反対していた。その主張がどれだけ報じられたか。

 国会審議での発言、あるいは何らかの形での談話なども含めて、モニター期間中この3党の主張がテレビで取り上げられた回数は、資料2−1の「政治的に公平な報道であったか」を参照してほしい。これによれば、「NHKニュース7」のべ13回、「ニュースウオッチ9」のべ17回と、回数的には他の番組を上回っている。これに対し「NEWS ZERO」は、一度も反対野党の見解を伝えなかった。一方、「深層NEWS」では、生活の党の小沢一郎氏、共産党の志位和夫氏が短い時間ではあるが、一度ずつ出演している。
 この中でNHKが取り上げた回数が多いのは、政局の動きを中心に報道するという方針があったためと考えられる。反対に「NEWS23」のべ2回と取り上げた回数が少ないのは、独自の企画で反対を表明することが多かったため、これら野党の国会でのやり取りや談話に、重きを置く必要を感じていなかったからではないか。
 テレビ出演した政党にかなり偏りのある番組もあった。読売テレビ(大阪)の「ウェークアップ!ぷらす」(日本テレビ系列)である。毎週土曜日の朝放送されているこの番組は、モニター期間中秘密保護法について5回取り上げている(資料1−2参照)。しかし、この時登場したのは、毎回与党ないしは修正に応じた党、あるいは独自の修正案を提出した民主党のみで、法案に明確に反対した党は談話すら紹介されなかった。この局のある種強い意思さえ感じさせるものだった。

 一方、国会外での反対運動の扱いはどうであったか。特定秘密保護法案が衆議院で審議入りした11月7日から、参議院で可決成立した12月6日までの30日の間に、廃案を求める声は日増しに大きくなっていった。反対の街頭デモに加え、各種団体が反対声明を発表し、反対集会を開いた。しかし、その伝え方には、局によってかなりのばらつきがあった。
 前述したのと同様、資料2−2「政治的に公平な報道であったか」のうち、「反対・批判の声を伝えたか」の項を見てほしい。モニター期間中何らかの形で反対運動について報道した項目を記してみると、「NHKニュース7」16項目、「ニュースウオッチ9」14項目、「NEWS ZERO」5項目、「報道ステーション」16項目、「NEWS23」23項目、「スーパーニュース」3項目、という結果が得られた。(なお、ここでいう項目には、例えば、同じ日に街頭デモと、ある団体の反対声明両方を取り上げた場合は2項目としてカウントしている)

 これで分かるように、「NEWS ZERO」、「スーパーニュース」は、反対運動を取り上げた回数が極端に少ない。「ウェークアップ!ぷらす」では、11月30日反対デモの様子をVTRで短く紹介したのと、12月7日法案が成立した後で、出演者の一人が国会前のデモについて、一言触れただけだった。これとは逆に、「NEWS23」は項目数で圧倒的に他を上回っている。たとえば、法案審議が最終盤を迎えていた12月5日、この番組では、国会周辺でのデモだけでなく、山口、札幌、金沢、長崎と、地方での反対の様子も紹介し、それぞれのデモに参加した人たちの声も伝えている。また、ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英氏の談話を添えた、学者の会の反対声明や、映画人の会、日本ペンクラブ会長の反対の談話なども紹介している。この時点で、法案反対の声が、分野のちがいを超え、全国に広がっていたことが、画面から生き生きと伝わってきた。

 一方、同じ日、「NHKニュース7」と「NEWS ZERO」は国会周辺のデモについて報じただけだった。
 11月20日の時点で、この法案に対する反対の声は、学者や女性、TVキャスターたちが結集した任意の集団だけでなく、日本新聞協会、日本民間放送連盟などのマスコミの団体、各種労働組合、法曹界など実に多種多様な団体や個人にまで広がっていた。テレビが伝えたのは、その中のごく一部の動きでしかなかったが、それでも学者たちの反対声明や、映画人たちの反対集会は、多くの人々の共感を生んだ。が、その一方で、反対運動を無視しようとしたテレビ局もあった。為政者にとっては、反対が少ないほど法案は正当化される。つまり、反対運動を報じなかったテレビ局ほど、政権寄りとみなされても致し方なかったのではないか。
 では、なぜ人々はこの法案を危険なものと看做したのか。番組はその問いに答えたのか。

 ◎「危険な法案」への言及の少なさ

 特定秘密保護法案の審議の過程で問題となったのは
  @特定秘密の定義があいまいで、秘密の範囲が広がる恐れがあり、何が秘密なのかが国民に明らかにされないおそれがある。
  A秘密指定に関わる独立した第三者機関が存在しない。
  B処罰の対象が広く、過失、教唆、扇動がそれぞれ独立した形で処罰の対象になる。また、「テロ防止」「スパイ防止」の名目で、一般市民が逮捕や監視の対象になる危険性をはらんでいる。  
  C秘密指定の期間が長く、歴史的な検証が不可能になる恐れがある。
などだった。

 しかし、NHKは「ニュース7」、「ニュースウオッチ9」とも、法案の概要については触れたものの、内容については、十分説明しなかった。唯一触れたとすれば、Aに関して外国の例を取材し、報告したことぐらいか。(11月7日、12月4日)ただ、ここでも紹介にとどまって、審議中の法案の内容との比較はしていない。
 「NEWS ZERO」も11月26日、独自取材で、アメリカの情報保全監察局の内容をレポートした。これは「日本でもこの組織を参考に、第三者機関を作りたい」との安倍総理の発言を検証する意味もあった。しかし、この日衆議院を通過した法案には、第三者機関に関する条文は含まれていなかった。にもかかわらず、番組ではその不備について一言も言及していない。

 11月29日の「報道ステーション」が、元経済産業省の官僚、古賀茂明氏をスタジオに招き、「この法案の危険なところは、将来、アメリカの要請で日本が参戦したとして、情報が秘匿されてしまうと、参戦の是非を判断する手段を奪われてしまう。その結果、無用な戦争に巻き込まれる危険がある」との発言を紹介したのとは、大きな隔たりがあった。「報道ステーション」では、国民を無用な戦争から守るためにも情報公開は必要であって、それと真逆な方向に向かおうとしているこの法案は危険であると、法案の本質部分を指摘していたのだ。

 特定秘密保護法案は、この法律の直前に成立した国家安全保障会議設置法とセットになっていた。政府は二つの法律は不即不離の関係にあるのであって、どちらが欠けても機能しないと公言している。それらの法律と併せて、政権側には集団的自衛権の行使容認問題という次の目標があることは明らかであり、最終的には、憲法改正に行きつくことを、多くの識者が指摘していた。しかもその目的が、アメリカと共に戦争に参加するという、日本の在り方を根本から変えてしまう重大な問題を含んでいること。ある日突然、世界のどこかで、日本軍が参戦する、しかしその事実は秘密として隠される、そうした事態を招きかねない危うさをこの法案は持っていることを、危惧していたのだ。

 「国際ペン」、「日本外国特派員協会」、「ニューヨークタイムズ」の社説、そして国連高等弁務官までもが、この法案に反対、もしくは懸念の態度をあらわした特定秘密保護法。ところが、NHK、日本テレビ、フジテレビは、こうした事実すら紹介することなく、多くは政府発表に依拠した報道を繰り返し、日々の現象を忠実になぞっていた。しかも、あれほど理不尽な、暴力的な採決が行われたことに対しても、決して「強行」という言葉を用いようとしなかった。 

 ◎伝えられなかった法案の内容

 「強行」という言葉を用いなかった上記のニュース番組は、11月26日、12月6日、それぞれどのような内容の放送をしていたのだろうか。
 まず、特定秘密保護法案が衆議院を通過した11月26日、「NHKニュース7」、「ニュースウオッチ9」はともに、国会のこの日一日の動きを詳細に伝えている。反対する党の談話も織り込み、銀座でのデモ行進と参加者の声、日本ペンクラブの法案反対の談話なども紹介している。しかし、修正協議を経て採決に持ち込まれた法案が、原案とどのように変わったのか、なぜこれほど多くの人が反対を唱えるのか、法案の内容について検証するような報道はなかった。

 日本テレビには「NEWS ZERO」のほか、BSの報道番組として「深層NEWS」がある。26日この番組に出演したのは、なんと民主党と日本維新の会の国会議員達だった。題して「どうなる一強七弱国会で」だが、修正協議に応じていた当事者だけでいくら議論を重ねても、法案そのものの持つ問題点が明らかにされることはありえないだろう。
 フジテレビの報道番組「スーパーニュース」はどうであったか。この番組が放送された時間、国会ではまだ採決に至っておらず、番組は、衆議院特別委員会での日本維新の会の議員と安倍総理との質疑を中心に構成されていた。スタジオでの会話は、司会者の「審議は尽くされたのか」との質問に、記者が「審議は尽くされた」とする与党の見解を解説しているだけ。番組の最後は、「いよいよ秘密保護法についての採決が始まる」との国会からの報告があって終わっていた。

 確かに、これも現に起こっていることの報告ではある。しかし、激しく対立している問題を、反対勢力の動きを紹介することもなしに、一方の側からしか伝えないのは、「政治的に公平」という放送法の精神にも抵触するといえるだろう。ちなみに、フジテレビ「新報道2001」では、11月17日の放送で、フジテレビ解説副委員長が「この法案は今国会で成立します。必要ですし」と発言し、12月1日には「反対する人の中には"戦前に戻る"といっている人がいるが、違和感がある。CIAのスノーデンのような人を野放しにしていることの方がよほど怖い」と述べている。フジテレビは、当初からこの法案は必要との認識で報道してきたのではないだろうか。

 こうした報道姿勢は、12月6日法案が参議院で可決成立した際も変わることがなかった。NHKニュース番組の二つ、フジテレビの「スーパーニュース」、そして「報道ステーション」は法案が成立する前に放送を終えていた。
 「NHKニュース7」、「ニュースウオッチ9」は、この日一日の事実経過をバランスよく報道したが、「ニュース7」では、今まさに成立しようとしている、法案の問題点などには一切触れなかった。また「ニュースウオッチ9」では、大越キャスターが「日本にとって経験したことのない本格的な秘密保護法制であるから、法案成立後も建設的議論を重ねて、懸念の払拭に努めてほしい」と、あたかも法案が成立してしまったがごとき発言をして番組を終わっている。

 「スーパーニュース」は、放送の時点で本会議に上程されようとしていた内閣不信任案について、民主党の海江田代表の談話を交えてその動きを紹介した。しかし、野党に関しての報道はこれのみ。事実ではあるが、抵抗勢力は民主党のみ、と受け取れるニュースの内容だった。
 一方、法案が成立した午後11時22分ごろ放送中だったのは、「NEWS ZERO」と「NEWS23」だったが、「NEWS ZERO」は、キャスターの「今までの審議で示された問題点を、政府はしっかり認識していてほしい」との抽象的な言い方で番組を終わっている。
 これに対し「NEWS23」は、記者が「第三者機関設置に関する総理の提案は、骨格が全く分かっていない」と報告し、出演したゲストの国分功一郎氏(高崎経済大学准教授)の、「今の日本は独裁政治に近づいている。今国会のやり方は、"政府は恣意的に法を運用するぞ"と告げているようなもの」を締めの言葉にしていた。

(続きを読む→全文表示)
*「放送を語る会」HPへ飛びます。

posted by JCJ at 08:14 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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