2014年03月24日

悪者はロシアか―ウクライナ危機=伊藤力司

 欧米メディアの影響が強い日本では、今回のウクライナ危機はもっぱらロシアが悪者視されている。しかし、欧米側が仕掛けた「新冷戦」で追い込まれたロシアが抵抗しているのが真相だろう。冷戦終結後20余年を経て、西側とロシアはまだ争っているのだ。
 2月初め ヌーランド米国務次官補(欧州・ユーラシア担当)とパイエト駐ウクライナ米大使の電話会談がユーチューブに流れた。この会談で、ウクライナのヤヌコビッチ政権が反政府運動を弾圧した場合に経済制裁すべきだと米国が主張したのにEU(欧州連合)側が反対したことが語られ、ヌーランドがEUを「くそったれ」と罵倒したことが暴露された。

 この電話会談は、米・EU間に意見の違いがあるにせよ欧米がウクライナの反政府デモに深くコミットしていたことを明るみに出した。ウクライナは2004年のオレンジ革命でロシアの衛星国からEU(欧州連合)寄りに転じたが、プーチンのロシアにとって「ユーラシア経済同盟」に不可欠の存在だ。この国はこの10年間、欧露の綱引きの対象だった。
 ヤヌコビッチ前大統領が昨年10月にウクライナとEUの協約締結の方針を変えたのは、ロシアが150億ドルの投資と天然ガスの安値販売を持ちかけたからだった。ウクライナにとってロシアは貿易の3割を占める最大の相手国で、貿易赤字の大半はロシア向けである。
 しかしこの背信を見た反政府側は、欧米の支援を得て首都キエフで連日のデモを展開。年を越してもデモの勢いは衰えず、むしろネオナチ系の反政府過激派が武力行使に走り、政府側がデモ制圧に軍を動員するに至った。その結果100人を超す死者が出るに及び、与党議員の多数から不信任を突き付けられたヤヌコビッチ前大統領は逃亡した。
 ウクライナの多数を占める親欧米派は勝利に沸いたが、人口の6割がロシア系のクリミア半島は収まらず、独立・ロシアへの併合に動いた。欧米はこれを非難し、ロシアに対する経済制裁を発動したが、元々がロシア領だったクリミアがロシアに帰属するのは自然な動きである。クリミアの帰属問題で、欧米はロシアと妥協せざるを得まい。

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2014年3月25日号


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