2014年03月24日

本とアマゾンと消費税の問題を考える=守屋龍一

 原田マハ「砂に埋もれたル・コルビュジエ」という短編がある(『本をめぐる物語』角川文庫所収)。戦地の惨状や広島での原爆体験を語ってくれた父が認知症になった。ある日、家からいなくなり、捜しまわる娘が、やっと公園の砂場に佇む後姿を発見する。それは命よりも大切な一冊の本を掘りだすためだった。読めば、胸にズーンとくる。
 だが私たちの周りでは、公共図書館に所蔵されている『アンネの日記』やナチスのホロコーストに関する大切な本が、何者かの手によってビリビリに破られ、被害は39館・計306冊に上る事件が起きている。

 またヒロシマの原爆の悲惨さを描く、中沢啓治『はだしのゲン』を有害図書に指定し、小中学校の図書室から追放する動きがある。
 こんなに本が、粗末に扱われていいのか。いま日本の出版界は未曽有の危機にある。2013年の雑誌・書籍の販売金額は、前年比マイナス3・3%の1兆6823億円。9年連続で前年割れ。1996年ピーク時の2兆6564億円から、1兆円が消えたことになる。
 とくに雑誌の落ち込みは激しく「漫画サンデー」「すてきな奥さん」が休刊。出版社も取次業も売上上位10社中7社が減収、書店は1996年の2万店から1万5千店に激減し、本をどこに行って買ったらよいか戸惑う、悲惨な事態だ。
 電子書籍に食われているからだとの指摘もある。電子書籍の販売金額は2012年度729億円、前年度比プラス16%。2017年度には2390億円と予測している。
 電子書籍がもてはやされるが、購入元の電子書籍ストアが廃業・倒産などすれば、まったく読めなくなる。購入した紙の本は、所有権を得て永久に読めるが、電子書籍は「会員制ウェブサイト」と同じ、所有権はない。
 日本の出版市場で、米国のアマゾン・ドット・コムが、伸長しているのも脅威だ。アマゾンは、日本で消費税を支払っていない。電子書籍コンテンツを配信するサーバーが、海外に置かれているためだ。そこから配信する以上、消費税が課税されず、日本で安く電子書籍を販売できる。昨年1年間で約250億円の消費税の税収が失われているという。
 さっそく楽天もデータ配信用のサーバーをカナダに置き、Koboという子会社からの配信とし、消費税逃れの手を打った。これでは日本の出版業界は太刀打ちできず、公正な競争が阻害されるのは明白だ。
 消費税を負担する日本の出版業界と消費税を負担しないグローバル企業の「価格競争力」の差は、決定的なものになる。さらに4月からは、消費税5%が8%になる。来年10月から10%となれば、日本の出版業界が大打撃を受けるのは目に見えている。
(JCJ代表委員)

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2014年3月25日号


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