創立されたのは1956年の1月16日であるが、創立されるまでには様々な試行錯誤があった。中心になって動いたのは総評の国民文化会議と劇団協議会であった。
そのもとで東京労演は出発したのだが、会の基本組織をサークルに置いた。しかし会を発足させるに際して、「鑑賞団体が例会を選ぶというのは僭越である。所詮大劇団中心に例会が組まれるのは目に見えている」と、中小劇団からの猛烈な反対があった。しかし、東京の場合、最終的に「原則として毎月3本を例会に取り上げる」という妥協案がとられ、以後、今日までこの方針が採用されてきた。
1968年7月、文学座の『女の一生』(杉村春子主演)と、民藝の『イルクーツク物語』(奈良岡朋子主演)の2本例会で2万1200人の会員を動員したのがピークであった。その後はそれを超えることはなく、右肩下がりの下降線が続いていった。
その後、全国に鑑賞運動は広がったが、東京以外の演劇鑑賞団体では、毎月、というより隔月に1本の例会という形で運営されており、会員に選択の余地はない。
例会作品が3本あるということは、そのうちのどれを選ぶかは会員の自由であり、したがって、「どれも選ばない」という選択肢もあり得たのが、致命傷になったのではなかろうか。
今年6月の例会では、ついに会員数が250人となってしまった。この数で事務所を構え、専従職員を抱えて会を運営してゆくのは不可能である。それどころか、各劇団に払うべき上演料すら滞る一方であった。発足当初に掲げた「良い演劇を安く」というスローガンはとうに有名無実となり、会費は入会金を含めれば一般売りよりも高くなってしまった。これでは会員が増えるわけはない。
より少なくなった会員数で、過去の未払金を負担してゆくことは絶対的に不可能である――ということに気付いた時はすでに遅きに失したといえよう。
それにしてもこれ以上会を続けてゆくわけにはいかないという結論が6月28日の臨時総会に提案され、ここに60年になんなんとする幕を引くことになったのである。
JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2014年7月25日号5面より
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