11日、オバマ米大統領は、「イスラム国(ISIS)」に対する武力行使を認める決議案を議会に提出した。人質の救出といった一定の地上作戦を可能とする内容を盛り込んだ。イラクやアフガニスタンの時のような「長期で大規模な地上作戦」を意図しておらず、期限を3年としている。
CNNによると、オバマ大統領は議会宛ての書簡の中で、決議案が通過すれば、大統領には「限定的な状況における地上戦闘作戦」を承認する権限が与えられると説明し、この中には救出作戦や、特殊部隊による「ISIL指導部に対する軍事活動」が含まれるとした。また、ISISは米国家安全保障上の利益や地域の安定にとって「重大な脅威」を投げかけると指摘して、「いわゆるISILはイラクとシリア、および中東の人々や安定を脅かし、米国家安全保障を脅かす」「米国の人員や同地にある施設を脅かし、米国民の殺害にも関与した」と述べ、ISISに拘束されて死亡したジェームズ・フォーリーさんやケイラ・ミューラーさんらの名を挙げた。
(JCJふらっしゅ2015年2月12日号「ニュースの検証」=小鷲順造)
議会で多数派を握る共和党は、オバマ政権の外交政策はあまりに消極的だとして、より強力な措置を求めている。民主党からは、中東での新たな戦争を懸念する声が上がっている。
大統領は軍事行動が困難なことは今後も変わらないとし、「しかし、われわれの有志連合は攻勢に出ている。ISIL(イスラム国)は守勢であり、ISILは敗北する」とテレビを通じて述べた。またオバマ大統領は、「体系的、持続的な空爆」と地上部隊の支援や訓練、人道支援の承認を求めると決議案について説明している(CNN)。民主党議員の多くは地上部隊投入にはより厳しい制限をかけるべきなどとして決議案への懸念を表明しており、ロイター通信は、<決議案の承認は困難とみられている>と報じた。
決議案は上下両院の承認が必要で、共和党のベイナー下院議長は記者団に対し、「(決議案で示された)この戦略で大統領が成し遂げることを望むミッションが達成できるとは思えない」(ロイター)と述べ、議会での審議を経て決議案の内容は変わるとの見方を示した。
米大統領が対「イスラム国」武力行使案、地上部隊の限定投入も(ロイター11日) http://jp.reuters.com/article/idJPKBN0LF1UR20150212
ISISへの武力行使承認、オバマ米大統領が議会に要請(CNN11日) http://www.cnn.co.jp/usa/35060284.html
ISISへの武力行使承認、オバマ米大統領が議会に要請(CNN11日) http://www.cnn.co.jp/usa/35060284.html
▽日本の安倍首相はこの機を逃さず、日本の平和憲法の改正を遂行しようとしている
ロイターが9日付で、コラム「イスラム国が人質焼殺映像で得たもの」(Peter Van Buren)を出している。筆者は、米国務省に24年間勤務。近著に「Ghosts of Tom Joad: A Story of the #99 Percent」などがある。コラムは、イスラム国は、世界のメディアを巧みに操作してあのように身の毛もよだつような方法で3人の人質を殺害し、以下のような成果を上げたとしている。
1)イスラム国は米国の同盟国2国に屈辱を与えた。日本とヨルダンは共にイスラム国との交渉を模索したが、結果的に脆弱で無力であることが露呈した。
2)だんまりを決め込んだ米国も、同盟国にとって無力であることが示された。
3)米国の主要なパートナーであるアラブ首長国連邦(UAE)は、昨年12月のヨルダン軍パイロットただ1人の拘束を受け、米国がイラク国内での捜索・救助態勢を強化するまで空爆作戦への参加を中断していることが明らかになった。これに対し、米国は対策強化を直ちに発表し、現場での人員を増強した。
4)日本とヨルダンの両政府は人質殺害を受けて報復を誓ったが、イスラム国との戦いという泥沼に足を踏み入れてしまった。保守主義である日本の安倍晋三首相はこの機を逃さず、論議を呼んでいる日本の平和憲法の改正を遂行しようとしている。
初めは血気にはやるものだ。報復の名の下で、さらに何人の自国民の死を容認できるかはまだ分からない。
5)ヨルダンはイスラム教スンニ派の女性死刑囚を処刑したが、同死刑囚は殉教者となり、彼女の大義に新たな声を与えたことになる。
6)イスラム国は、果てしなく動き続けるエンジンのような報復のサイクルを新たにスタートさせることに成功した。限られた有志連合を束ねるのに苦労する米国は、この泥沼の深みにはまることを余儀なくされる。オバマ米大統領は、ヨルダンへの支援を年間6億6000万ドルから10億ドルに増額するとすでに発表している。
7)イスラム国は野蛮極まりない映像を世界に流し、暴力的な聖戦主義を信奉する者たちに見せた。イスラム国の関心は、その映像を見て衝撃を受ける人ではなく、それを見て彼らの戦いに参加しようとする人にある。
そのうえで、以下を指摘している。
A)イスラム国はこれが「主義の戦い」であることを理解している。主義や思想は爆撃でダメージを受けることがないことも分かっている。そのような戦いでは、本質的に勝ち負けは存在しない。ただ壮大な戦いに苦しむだけだ。
B)フランスの風刺週間紙「シャルリエブド」襲撃事件の容疑者は、2011年に死亡した米国出身のイスラム教説教師アンワル・アウラキ容疑者の影響を受けたとみられている。アルカイダの勢力が低下したにもかかわらず、そこからイスラム国が分派している。死人がこの世のおぞましい行為に影響を与えているということは、イスラム国の戦闘員を駆り立てる本質的な考えに取り組まなければ、この問題は終わらないということを示している。
また、<問われる米国の「テロとの戦い」>として、
C)ヨルダン以外のアラブ諸国の大半は、イスラム国が公開した映像に対し、断固たる態度は示すものの行動は起こさなかった。そもそもイスラム国への対応は依然として米国の手に委ねられているが、米国は自身の中東でのプレゼンスがまさに戦いの悪化を招いていることを理解しているようには見えない。
D)「Cutting the Fuse: The Explosion of Global Suicide Terrorism and How to Stop It(原題)」は、1980─2009年に中東で起きた2100回の自爆攻撃を調査し、その大半が米国による介入が動機であったと結論付けた。
E)米国の「テロとの戦い」の実績は悪い。イスラム国が公開した映像はそのことを改めて証明しているにすぎない。主義や思想を撃ち倒すことはできない。それに勝るもので負かすしかない。イスラム国は悪い考えがひどく効果的であることを証明してみせた。9・11(米同時多発攻撃)から13年以上が経過した今、米国側は何を示すべきかを問う必要がある。
全文に目を通されることをおすすめする。
コラム:イスラム国が人質焼殺映像で得たもの(ロイター9日) http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0LE0FQ20150210?sp=true
▽安倍首相施政方針演説:改憲へ国民的議論深化
12日午後、首相の安倍氏は衆院本会議で、昨年12月の衆院選後、初の施政方針演説を行った。
「イスラム国」による邦人人質事件について、「日本がテロに屈することは決してない」と強調し、日本人の安全確保に万全を期し、人道支援を継続する考えを示した。また、集団的自衛権の行使を可能にするため、「あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする安全保障法制の整備を進めていく」とし、関連法案の今国会提出を強調。沖縄県の米軍普天間飛行場に触れ、「名護市辺野古沖への移設を進めていく」と政府方針を堅持する姿勢を示した。
さらに、来年夏の参院選後を目指すとしている「憲法改正発議」について、「憲法改正に向けた国民的な議論を深めていこうではないか」と強調した。
上に紹介したコラムの<保守主義である日本の安倍晋三首相はこの機を逃さず、論議を呼んでいる日本の平和憲法の改正を遂行しようとしている。初めは血気にはやるものだ。報復の名の下で、さらに何人の自国民の死を容認できるかはまだ分からない>との記述を、思い起こさずにはいられない内容だ。
改憲へ国民的議論深化=テロに屈せず−安保「切れ目なく対応」−施政方針演説(時事通信12日) http://www.jiji.com/jc/c?g=pol&k=2015021200486
▽政府:米軍以外の他国軍隊への自衛隊による後方支援も可能に
毎日新聞によると、政府は、米軍以外の他国軍隊への自衛隊による後方支援も可能としたい考えのようだ。そのため、「周辺事態法」を改正する検討に入った。記事は、<現行法では後方支援を行う対象は米軍のみだが、朝鮮半島有事のような場合、米軍以外の関係国も作戦に参加する可能性があり、対象国の拡大が必要と判断した>のだという。政府は13日から始まる安全保障法制に関する与党協議で、こうした法改正の趣旨を説明する考えという。
<政府が「準同盟国」と位置づけているオーストラリア軍などを念頭に、対象を米軍のみならず、共同作戦に参加する米国の同盟国などの軍隊に拡大する>という。
周辺事態法は、日本への武力攻撃はないが、日本周辺で「我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態」が発生した場合に、武力を行使する米軍に対し、自衛隊がどのような支援ができるかを定めた法律。記事は、1999年に制定され、小渕恵三首相(当時)は国会で「中東やインド洋で起こることは想定されない」と答弁するなど、一定の地理的制限があるとも考えられてきたこと、米軍による日本の防衛義務を定めた日米安全保障条約の「効果的な運用」を図り、日本の平和と安全を確保することを目的としていることを記している。
また記事は、「周辺事態法」改定の動きの一方で、<「国際社会の平和と安定」のための活動に関しても、政府は自衛隊による他国軍隊への後方支援の法的枠組みを検討している>と伝えている。「国際社会の平和と安定」は、日本の平和と安全に直接的には関係ないことから、周辺事態法の適用は困難として、新たに国際平和協力のための恒久法を制定する必要があるとの判断に傾いている、というのだ。
目的が、「日本の平和と安全」を確保することだろうが、「国際社会の平和と安定」の名目だろうが、どこへでも自衛隊を派遣できるようにしようという考えのようである。つまりは目的や名目は何でもよく、使えるものは何でも使い、実質改憲済みの状態に可能な限り近づけ、日本国憲法第9条を改憲して、戦争のできる国にし、戦争に参加する国にし、戦争を起こす側の国へと日本社会をつくりかえようとする腹をもつ輩が、国会や政府、あるいはそれに連なるかたちで蠢いているということである。
実に危険極まりない状況である。
朝日新聞は7日付の社説<邦人救出 地に足のついた議論を>で、「イスラム国」による人質事件を機に、政府が今国会で成立をめざす安全保障法制に関連し、安倍首相は救出を可能にする自衛隊法改正に意欲を示していることを取り上げた。
社説はいう。
<政府が念頭におくのは、現地の警察や軍の能力が不十分で、その国家の同意が得られた時に限って自衛隊を派遣するというごく例外的なケースだろう。安倍首相は国会で、邦人救出の難しさを認めた。一方で、「火事が起きた家に、消防士が入らなければ、救出されない人は命を落とす」とも述べ、あくまで法改正をめざす考えだ>と指摘し、<しかし、自衛隊による海外での邦人救出と国内での消防活動を同列には論じられまい。一連の議論のなかで、首相は憲法9条の改正にまで言及し、「国民の生命と財産を守る、その任務を全うするためだ」と語った。憲法の制約を解き、自衛隊の海外での武力行使に道を開けば、国民の生命を守ることになるのか。疑問点はあまりに多い。短兵急な議論は危険だ>と釘を刺した。
また同紙6日付社説<憲法と自民党 改正ありきの本末転倒>では、「優先度の高いものから取り上げていく方法もあるが、国会も国民も何しろ初めての経験。できるだけ多くの政党が合意できる項目から取り上げていくのが適切ではないかとの船田氏の憲法審査会での説明について、<つまり、憲法改正の必要性から考えるのではなく、各党に異論が少なく、実現可能性の高いものから手をつけていこうというのだ><これが国の最高法規を改めるのにふさわしいやり方なのだろうか><内容よりも改正のやりやすさを優先しようという運び方は、自主憲法制定を党是に掲げる自民党にとっては自然なことなのかもしれないが、本末転倒だと言わざるをえない>と批判し、<「イスラム国」による人質事件はあまりに痛ましかった。しかし、再発防止などの対策を日本の平和主義の根幹である9条の改正に結びつける議論は、短絡に過ぎる>と批判している。
疑問点だらけの短兵急な議論ばかりが先行する安倍政権。目的や名目は何でもよく、使えるものは何でも使い、実質改憲済みの状態に可能な限り近づけ、後戻りできないところまで実態づくりを進めて、日本国憲法第9条の改憲へと突き進もうとしているのが、安倍自公連立政権である。
安倍氏は施政方針演説で、<「この道をさらに力強く前進せよ」ということが総選挙で示された国民の意思>と強調した。決して大勝したわけでもなく、投票率も最低を更新した。にもかかわらず、「この道をさらに力強く前進せよ」ということが総選挙で示された国民の意思と言ってのけ、国民が強く反対するものでも強引に、後ろ向きに前のめりに進める厚顔無恥。
この政権の後を引き継ぐことになる新たな政権は、まずは、安倍氏らが日本国憲法の枠組み突破に利用した「閣議決定」を覆す閣議決定をいくつも行うことから始めることになるのだろう。それにしても、後に後悔を残すような「実態づくり」が進められてからでは遅い。マスメディアは、この政権の性格ややっていることについての報道や論評に「断片化」が起きていないか、厳しく自らを検証する必要が出ているように思う。
周辺事態法:改正へ 後方支援、米軍以外へも(毎日新聞11日) http://mainichi.jp/shimen/news/20150211ddm001010200000c.html
邦人救出 地に足のついた議論を(朝日新聞7日) http://digital.asahi.com/articles/DA3S11590408.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11590408
憲法と自民党 改正ありきの本末転倒(朝日新聞6日) http://digital.asahi.com/articles/DA3S11588606.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11588606<
邦人救出 地に足のついた議論を(朝日新聞7日) http://digital.asahi.com/articles/DA3S11590408.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11590408
憲法と自民党 改正ありきの本末転倒(朝日新聞6日) http://digital.asahi.com/articles/DA3S11588606.html?iref=comkiji_txt_end_s_kjid_DA3S11588606<
▽ODA見直し:他国の軍隊への支援を、非軍事分野に限って解禁
10日、政府は「開発協力大綱」を閣議決定した。
日本経済新聞は、11日付社説「国際環境の変化が促すODAの改革」で、<対外支援の原則をうたったODA大綱を約11年ぶりに見直し、名称を開発協力大綱に改めた。援助の主眼を、貧困撲滅だけでなく、平和の構築や民主主義の普及に広げる路線を示したものだ>とし、<大規模なテロや災害、組織犯罪などが国境を越えて広がり、途上国の発展にとっても深刻な火種になっている。こうした国際環境の現実を考えると、改定の方向性は妥当といえるだろう>と書いて理解を示した。
「途上国の発展にとって、沿岸や国内の安定は欠かせない。その意味で、相手国の治安や安全の確保のためにもODAを使っていこうという新大綱の趣旨は理解できる」とする一方で、「ただ、懸念も残る」として、「海上警備のために日本が供与した巡視艇が戦闘用に使われたり、災害対策用に提供した物資が軍用に回されたりする危険は、ぬぐいきれない。そうした事態を防ぐため、転用禁止の誓約を相手国から取り付けるとともに、事後の検証もきちんとできるようにしなければならない」と、軍事転用の可能性について、転用禁止の誓約と事後の検証を求めた。
時事通信はこの件で、岸田文雄外相が10日、「軍事目的の支援を行うことは今後もない。基本的な原則は今までと全く変わっていない」と話し、ODAが軍事に転用されないよう、厳格に臨む考えを強調したことを伝えた。
また、政府が10日に閣議決定した「開発協力大綱」は、安倍晋三首相が掲げる積極的平和主義を反映した内容で、途上国の経済基盤整備に絞ってきた日本の政府開発援助(ODA)の在り方も変化しそうだと伝え、<新大綱ではODAを「国益」につなげることもうたったが、日本の援助を軍事転用させないための歯止めをどう担保するかなど、課題もある>とした。
東京新聞は11日付「平和外交後退 ODA新大綱決定」の記事で、1)これまで原則禁じてきた他国の軍隊への支援を、非軍事分野に限って解禁したことが柱、2)軍事分野への転用も懸念される、3)新大綱には「積極的平和主義」を明記、4)安倍晋三首相の持論に基づいて進めてきた一連の政策の延長線上にあり、日本の平和外交をさらに変質させる恐れがある、と的確に伝えている。
記事は、この件を伝える記事中で以下を整理している。
1)安倍政権は2012年12月の第二次政権発足以来、「積極的平和主義」の旗の下、憲法の柱である平和主義に反するとの批判が強い政策を進めてきた。
2)13年には、国家安全保障会議(日本版NSC)を設置。少人数の閣僚らで外交・安全保障政策を決められるようになった。
3)外交や防衛に関する情報を「特定秘密」に指定し、国民に閉ざす特定秘密保護法も成立させた。
4)昨年4月には武器輸出を原則禁止する武器輸出三原則を見直して、輸出を事実上解禁。
5)7月には、他国を武力で守る集団的自衛権行使を容認する閣議決定にまで踏み切った。
6)安倍政権は、米国を中心とした各国と軍事面を含めて連携を強化し、中国などに対抗する戦略をとってきた。
7)今回の新たな大綱も、開発支援目的に限ってきたODAを、そうした戦略に使えるようにする意識が透けて見える。
大事な整理であり、指摘であろう。
記事はさらに、岸田文雄外相は10日の記者会見で「国際社会の平和と安定に一層貢献していく」と新大綱の意義を強調したが、他国軍が日本のODAを正しく使っているかどうかを把握するのは困難で、援助したものが軍事分野に転用される懸念はぬぐえない。中国との間で新たな緊張を生む可能性すらある、とも指摘している。
この件は、2014年4月に、安倍自公政権は「武器輸出三原則」の緩和をすすめようと、それに代わる「防衛装備移転三原則」を閣議決定したこと、そして、防衛省が軍事装備品の輸出を後押しする新しい資金援助制度の創設に向けた検討に入っていることと深く関係してくるものと思われる。
これは、武器を日本から調達する国や、他国との共同開発に乗り出す日本企業などを金融面で支援しようという主旨で、現行の<政府開発援助(ODA)では扱えない>相手国の軍事力向上に協力できる体制を整え、日本との安全保障関係を強化することを狙いとする。防衛省は12月にこの件の「有識者会議」の初会合を開いている。夏までに提言を取りまとめ、具体策を2016年度予算要求に盛り込む考えという。
この動きと、今回の「これまで原則禁じてきた他国の軍隊への支援を、非軍事分野に限って解禁」という動きが無関係とは思えない。まずは、「他国の軍隊にむけ、非軍事分野に限って解禁」するところから始めてパイプ作りと実績づくりを進めて、軍事装備品の輸出へと結びつけてゆく。その際、近い将来、武器を日本から調達する国や、他国との共同開発に乗り出す日本企業などを金融面で支援してゆくことをアピールするという流れを想定しているものと考えられる。
ここでも、目的が、「日本の平和と安全」を確保することだろうが、「国際社会の平和と安定」の名目だろうが、どこへでも武器を輸出できるようにしようという考えなのではないか。目的や名目は何でもよく、使えるものは何でも使い、実質改憲済みの状態に可能な限り近づけ、日本国憲法第9条を改憲して、戦争のできる国にし、戦争に参加する国にし、戦争を起こす側の国へと日本社会をつくりかえようとする腹をもつ輩が、蠢いているとしか思えない。
岸田文雄外相がいかに「軍事目的の支援を行うことは今後もない。基本的な原則は今までと全く変わっていない」と話しても、日本国憲法第9条の改憲をもくろむ政権であり、人質事件を機に、人質救出に自衛隊派遣を持ち出し、軍隊への後方支援も米軍以外へも拡大しようとしている政権である。武器輸出を原則禁止する武器輸出三原則を見直して、輸出を事実上解禁し、他国を武力で守る集団的自衛権行使を容認する閣議決定を行い、関連法案の今国会提出を行うと宣言している政権である。憲法の制約を解き、自衛隊の海外での武力行使に道を開こうと、あの手この手を打ってきている。
ODA大綱を約11年ぶりに見直して、名称を開発協力大綱に変えたというこの動きは、日本製の武器と自衛隊の海外での武力行使へと続く道を資金的にバックアップし、具体的な歩みを進めようとする一手に他ならないであろう。この全体像をウオッチすることを放棄し、経済復興に役立つならとか、歯止めをかければ大丈夫などと放置すれば、気がついたときには「こんなはずじゃなかった」という時代を再び迎えかねない(そうした状況が迫り来ようとも、そんな事態に陥ろうとも、安倍氏やそれを取り巻き種々に知恵をつけてやまない面々はなんら責任を果たせるわけでもなく、その能力も微塵も有していないのである)。
そうした安倍自公連立政権の逸脱し病んだ体質を象徴するのが、サンゴを破壊し、市民に対し暴力的で過剰な警備で挑む沖縄での姿であろう。
市民とジャーナリストは広く連帯し、政府を厳しく監視し、この国会を厳しくウオッチし、情報をすばやく広く共有し、来たる統一地方選挙をバネに、このゆがみ、逸脱した方向へと動いている日本の政治をいまやるべきことに正対する政治へと引き戻し、日本社会の真のつくり変えの道を現出させていくべきときを迎えている。
(こわし・じゅんぞう/日本ジャーナリスト会議会員)
軍事転用歯止めが課題=「安倍カラー」の新ODA大綱(時事通信10日) http://news.nicovideo.jp/watch/nw1444628
国際環境の変化が促すODAの改革(日本経済新聞11日) http://www.nikkei.com/article/DGXKZO83068060R10C15A2EA1000/
平和外交後退 ODA新大綱決定(東京新聞11日) http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015021102000149.html
辺野古工事 ブイ固定に設置 20トン塊 サンゴ破壊(東京新聞10日) http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015021002000259.html
国際環境の変化が促すODAの改革(日本経済新聞11日) http://www.nikkei.com/article/DGXKZO83068060R10C15A2EA1000/
平和外交後退 ODA新大綱決定(東京新聞11日) http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015021102000149.html
辺野古工事 ブイ固定に設置 20トン塊 サンゴ破壊(東京新聞10日) http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015021002000259.html