2015年05月03日

【今週の風考計】5.3

飯嶋和一『狗賓童子の島』(小学館)を読み、感動に浸った。大塩の乱から9年後、隠岐に流された15歳の常太郎は、そこで医術を学び疫病の治療にあたる。島民たちも彼を温かく迎えいれる。だが年貢の過酷な取り立て、尊王攘夷をめぐる藩政の混乱などで、島民に鬱積する不満は、ついに蜂起へと進む。幕末、流刑の島で起きた壮大な歴史ドラマだ。この目で隠岐が見たくなり、先週末、隠岐の島々を旅して歩いた。「狗賓」が棲むという島後・大満寺山の乳房杉には、道が通行止めで行けなかったが、かぶら杉や八百杉を見て、その巨大さと深淵さを実感した。玉若酢命神社の脇にある隠岐家住宅の大黒柱や戸板には、<隠岐蜂起>で繰り広げられた闘いの刀傷や鉄砲跡が、今も残っている。配流された後鳥羽上皇や後醍醐天皇の行在所を観ながら、島前の中ノ島・知夫里島・西ノ島にも残る流人と島民の紐帯へ思いをはせる。そして牛や馬が放され、野ダイコンの花が咲く丘陵、木々の間では鶯が鳴き、神社の周辺をキジの番いが歩く。道筋にはオキシャクナゲの赤い大輪。食べては岩ガキ、チヌの刺身、亀の手が入ったお吸い物、海の幸を堪能する。聞いては隠岐民謡「しげさ節」が心に響く。(2015/5/3)
posted by JCJ at 08:22 | TrackBack(0) | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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