2015年05月29日

蔦屋家電と丸山書房─本を扱う姿勢=守屋龍一

 5月3日、東京・世田谷区の二子玉川に、家電と本を同じ空間で販売する「蔦屋家電」がオープンした。売場面積1階860坪、2階1312坪の大型店舗。さっそく見学に行ってきた。
 1階のブックストリートを歩くが、照明が暗く、何か洞窟に入っていくような気分になる。在庫冊数は約12万冊、林立する棚に並ぶ本はあっても、タイトルは読めず、何がどこにあるのか、さっぱりわからない。
 しかも、スターバックスが売場面積を、いやに大きく占める。パソコンやiPhoneのブースがあるかと思えば、自転車を売るコアもある。

 若者たちが、中央のカフェスペースでコーヒー片手にキーボードをたたき、雑誌のページをくっている。陳列してある雑誌や本が無料で読めるのだ。粗末に扱い汚しても責任は問われない。
 2階へ上がると、本の並ぶブックストリートが馬蹄形に延びて、その周縁に掃除機・洗濯機などの生活家電、美容・コスメ、オーディオ、家具、玩具の店が取り巻く。GOOD MEALS SHOPで購入したビールや軽食は、自由に店内を歩きながら飲食していい。なかには乳母車を動かし、ビールの紙コップを持ち、本を開き、アイパッドを操作する若いカップルもいる。
 さて、肝心の本だ。まず文庫・新書・コミックが置いてない。書籍では、いやに増田宗昭の著書が数多く並ぶ。店内のコンシェルジュに、目的の本のある場所や在庫を聞くと、ひたすら検索に走る。本紙6面の「書評欄」に掲載した5冊の本は、なんと全てないのだ。呆れる。
 そうだ、店名にあるように、ここは「家電」売り場なのだ。12万冊の本・雑誌は呼び水でしかない。よくわかった。
 全国的にはビデオレンタルで知られるTSUTAYAが、代官山蔦屋書店、佐賀県・武雄市図書館、湘南T―SITEなど、全国で展開するカルチュア店舗の一つだ。8日、大阪・梅田の商業施設「ルクア1100」に開店した「梅田蔦屋書店」も同じ。
 その後、筆者の地元にある丸山書房を訪ねた。西武新宿線・久米川駅前に開業して50年、25坪の小さい書店だが、ニーズを先読みした品ぞろえ、気配りのある陳列には、いつも感心する。
 代表の丸山敬生さんは、「これまで武蔵野地域で営業していた書店は100あったが、いまや14店舗に減ってしまった。書楽やあゆみBOOKSも撤退しました。人口の減少・高齢化、後継者不足、テナント料のアップなど、中小書店はやっていけません。でも梱包を開けた時の新刊から滲み出す印刷の匂い、神田の問屋さんに行って、注文された本を手に入れ、それを渡した時の嬉しそうなお客さんの顔、頑張らなくちゃ!と思います」。
 本を愛する心意気が、胸に沁みる。
(JCJ代表委員)

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2015年5月25日号


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posted by JCJ at 05:16 | TrackBack(0) | 出版 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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