これまでの審議で、戦争法案の多くの問題点が明らかになった。安倍政権は、集団的自衛権の行使について「政府が総合的に判断する」として拡大解釈の余地を残す答弁を繰り返し、他国に日本攻撃の意図が無くても集団的自衛権の行使は可能としている。安倍政権は、自衛隊は戦闘が発生しない地域に派遣するとしているが、法案には明記されていない。集団的自衛権行使に歯止めがかからないことを、政権自体が認めているのだ。
戦争法案で自衛隊の派兵について、安倍政権は地理的な限定をせず、支援地域は地球の裏側まで拡大する危険性がある。日本の安全に直接関係のない有志国連合による対「イスラム国」軍事作戦への支援も「法律的にはあり得る」としている。アフガン戦争で各国が参加した国際治安支援部隊(ISAF)のような国際組織にも派兵される可能性が強い。自衛隊の海外での武力行使は際限なく拡大する。
自衛隊の後方支援はこれまで「非戦闘地域」に限られていたが、戦争法案では「現に戦闘が行われている現場以外」に広げている。米軍などへの弾薬補給や自衛隊の現地補給基地などは攻撃の対象となる。自衛隊員が「殺し、殺される」危険が現実のものとなり、犠牲者は格段に増える。しかし、政府は「自衛隊のリスクはこれまでと変わらない」などとし、戦争法案がもたらす危険な現実を国民に説明せず、不誠実な態度に終始している。こうした状況を反映して、直近の世論調査では「安保法案 今国会成立『反対』59%」(「読売」8日)−推進派メディアでさえ「理解広がらず」と認めざるをえない事態である。
国会で与野党が合意して招致した憲法学者が声を揃えて「憲法違反」と指摘した事実は重い。安倍政権がこれに耳を傾けず、強行採決を企むことは、国民主権を踏みにじり、国権の最高機関である国会をないがしろにする暴挙であり、断じて許されない。私たち日本ジャーナリスト会議は、この戦争法案を廃案とし、安倍内閣の即刻退陣を要求する。併せて、全てのメディアに、廃案へ向けて取材・報道を強化するよう呼びかける。
2015年6月12日
日本ジャーナリスト会議(JCJ)
日本ジャーナリスト会議(JCJ)