2015年07月29日

6月4日の質疑で“潮目が変わった”/参考人全員の「違憲」発言、迷わず1面に/論点の「反芻」で核心を伝える=金井辰樹

 「潮目が変わる」という言葉は政治の世界でよく使われる常とう句の一つだが、これほどはっきりと潮目が変わったのは記憶がない。
 6月4日、衆院憲法審査会での参考人質疑。自民党推薦も含め、参考人として招かれた3人の参考人が、そろって安全保障関連法案を「違憲」と発言した時のことだ。3人のこれまでの発言を検証すれば、ある程度予測できることではあったが、憲法学界の重鎮が、安倍内閣が最重要法案と位置づける法案を「違憲」と断じた政治的インパクトは大きい。東京新聞は夕刊1面トップで「安保法案 参考人全員『違憲』与党推薦含む三氏」と報じた。

 審査会が終わった後、自民党国対は、「オウンゴールだ」と大騒ぎになっていたし、民主党の代議士会では「違憲発言」を引き出した議員が、英雄のような扱いを受けていた。この日を境に、法案への反対の声が「異次元」の高まりをみせたのは間違いない。
 しかし、驚いたことに、在京の全国紙は1紙が中面のベタ記事を載せただけで、他の3紙は「違憲発言」を夕刊で報じなかった。他社がどういう判断をしたのかは知らないし、さほど関心もない。ただ東京新聞は迷わず、翌5日朝刊も1面トップで「『違憲立法』論点焦点に」とつないだ。
 昨年、東京新聞は、憲法、安保、原発問題などで核心を突く見出しと記事を一面で見せる「論点明示報道」でJCJ大賞を受賞した。安倍政権が立憲主義を軽視していることをいち早く1面の見出しで指摘したことなどを評価されたのだが、一方で「論点明示報道はまだ発展途上」という辛口の指摘もいただいた。
 自分なりに考えると「論点明示報道」を高める一つの方法は、過去に明示した論点をフォローアップすることなのだと思う。例えば昨年7月1日、政府が集団的自衛権の行使を認める閣議決定を行って以来、東京新聞は繰り返し、この決定は「違憲」の疑いが強く、立憲主義に反すると論点を示してきた。安保関係法案の審議でも、この論点がどのように進行しているのかを深掘りして紙面で示そうと考えている。だからこそ参考人質疑での「違憲」発言に即反応できたのだと思う。
 安倍政権は歴代の政権と違い、同時に次々と政策課題を出す。安保法案の審議をしている間に、新国立競技場の建設設計の変更を表明し、さらに戦後70年談話を出すという具合に……。報道する側は、目の前で起きる出来事に振り回されてしまいかねない。政権側は、それが狙いかもしれないが、政権が打ち出すものを後追いするだけでは、読者には問題の本質が伝わらない。
 わたしたち報道機関は、示した論点を節目ごとに何度も掘り下げ、読者に示していかなければならない。「論点の反すう」こそが論点明示報道の進化形である。連日、安保報道で頭を悩ませながら、政治報道の役割を自問自答している。
(東京新聞政治部長)


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posted by JCJ at 13:30 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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