2015年09月01日

中学の歴史・公民の教科書が危ない!=清水正文

 大阪市教育委員会は8月5日、来年度から市立中学校および特別支援学校で使用する歴史と公民の教科書に「育鵬社版」を採択した。この「育鵬社版」の歴史・公民教科書は、歴史学や憲法に携わる人びとをはじめ、多くの父母・市民から問題点が指摘されてきた。
 「歴史」では、アジア・太平洋戦争を「自存自衛」の戦争として肯定するだけでなく、「大東亜共栄圏」の呼称で「欧米による植民地支配からアジアの国々を解放するための戦争」であったとするなど、歴史を歪曲して描いている。

 「公民」では、日本国憲法がGHQに押し付けられたものと記述し、戦争放棄の平和主義と基本的人権の保障を敵視するなど、自民党の改憲案を引き写したかのような内容になっている。
 大阪市では今回の採択の会議に参加させる目的で「日本教育再生機構」とつながりの深い教育委員を任命し、今まで八つあった大阪市内の採択区を一つにするなど、「育鵬社版」採択に向けて着々と準備をしてきたといっても過言ではない。
 また、教育委員会議当日も会議の場所に傍聴者を入れず、遠く離れた会場にテレビ中継をする場所を設けて市民を締め出すなど、最初から「育鵬社版」を採択するために仕組まれたものと言わざるをえない。
 大阪では4年前に「公民」が採択された東大阪市と採択区が1つにされた大阪市が‘危ない’といわれていたので、自由法曹団・民主法律協会の弁護士とともに、私も「子どもと教科書大阪ネット21」の代表委員として「育鵬社版」を採択しないよう、また公正な採択が行われるよう両市の教育委員会へ要請に行った。
 両市の教育委員会事務局の対応は、「お預かりした文書は教育委員にお渡しし、要請の趣旨をお伝えする」というものであったが、果たしてどれだけ私たちの要請の趣旨が教育委員に伝わったのか、はなはだ疑問である。
 大阪では8月12日までに、この両市のほかに河内長野市(公民)、四條畷市(歴史・公民)が「育鵬社版」を採択した。関東でも横浜市・大田原市・藤沢市・武蔵村山市と都立の中高一貫校・支援学校などが採択している。8月末までに全国で採択が進められるが、これ以上「育鵬社版」の採択が増えないよう、各地での取り組みが求められている。
この教科書の問題は、安倍政権がねらう「安保法制=戦争法」と軌を一にした「教育再生」の重要な柱である。中学生は人格的成長の重要な時期にあり、このような一面的で偏った教科書で学ぶことになれば、「個人より国家を、人権より義務を優先する」という国家に忠実な国民が多く生まれることになる。
メディアもそのことに警鐘を乱打すべきである。
(JCJ代表委員)


*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2015年8月25日号


<JCJ機関紙購読・会員加入申込みHP> http://jcj-daily.sakura.ne.jp/postmail/postmail.html
・「ジャーナリスト」はタブロイド判8面、毎月25日の発行です。
・年間購読料:3000円(12号分)です。
※会員の場合、機関紙購読料は会費に含まれています。(←いまなら郵送料込み)

posted by JCJ at 10:58 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック