2015年09月16日

内向きの精神論でこり固まり、「違憲立法」へとひた走る安倍自公政権に未来はない(2)

▽18日までの成立を目指し、強行も辞さない構え

 共同通信によると、参院平和安全法制特別委員会の鴻池祥肇委員長(自民党)は15日夜の理事会で、16日に安倍晋三首相が出席して安全保障関連法案の締めくくり質疑を行い、質疑を終了する日程を職権で決定した。理事会に先立ち与党が日程を提案したものだが、野党は「徹底審議すべきだ」と反対した。しかし、与党は早ければ16日にも採決する考えで、記事によると<17日とする余地を残すが、18日までの成立を目指し、強行も辞さない構え>という。
 また、自公与党と次世代、日本を元気にする会、新党改革の野党3党の幹部が15日、会談して、自衛隊派遣の歯止め策として国会承認手続きの厳格化を閣議決定することで大筋合意した。

(JCJふらっしゅ「ニュースの検証」=小鷲順造)


 NHKなどによると、自民・公明両党と、次世代、日本を元気にする会、新党改革の、安全保障関連法案を巡る修正協議が行われ、自衛隊を派遣する際に国会の関与を強めるため、付帯決議と閣議決定を行うことで大筋で合意した。これを受けて3党は、法案の採決で賛成する考えを明らかにしたという。

 協議のなかで、与党側は、1)安倍総理大臣とも協議した結果、2)次世代、日本を元気にする会、新党改革の3党の主張を踏まえ、3)日本が武力攻撃を受けるおそれがある時などを除く「存立危機事態」では、自衛隊を派遣する際に例外なく国会の事前承認を求めるなどとした付帯決議を参議院で行うとともに、それを尊重するとした閣議決定を行いたいと提案した。

 次世代、日本を元気にする会、新党改革の3党は「自衛隊の派遣に国会の関与を強めるよう求めるわれわれの主張がおおむね受け入れられている」として、与党側の提案を受け入れることを伝えた。日本を元気にする会の井上国会対策委員長が、次世代、日本を元気にする会、新党改革の3党を代表して、「われわれの主張が法的に担保されることになるので、政府案に賛成したい」と述べ、参議院での法案の採決で賛成する考えを明らかにした。

 自民・公明与党両党は、維新の党との修正協議も行ったが、衆議院に続き、参議院でも決裂した。維新の党は、<アメリカ軍への攻撃が日本への攻撃にもつながる危険がある場合に限り、武力行使ができるとする独自の要件などを盛り込んだ対案を参議院に提出>(NHK)しているが、与党側は、武力行使の要件などについての考え方の隔たりが大きいとして、政府案の修正には応じられないという考えを、維新に伝えた。維新の党は、執行役員会を開いて対応を話し合った結果、「国会答弁では全く不十分であり、法文で党の主張が担保されないかぎり、与党側の提案は受け入れらない」(NHK)として、修正協議を打ち切る方針を決め、与党側に伝えた。

 なお、14日には、公明党の山口那津男代表が参院平和安全法制特別委員会の質疑に立った。集団的自衛権の概念などについて横畠裕介内閣法制局長官に質問し、横畠長官の答弁を受けて、「基本的論理は一貫していて、憲法の枠内に収まる」「安保環境は変化しており、考え方を補足、整理するのは当然だ」と、法案への理解を求める発言を加えた。

▽創価学会も公明党も、大きな分岐点を迎えている

 時事通信は、<山口氏が党首討論以外の委員会で質問するのは異例。代表自ら政府の見解をただし、支持母体の創価学会に根強い安保法案への懸念を払拭する狙いがあるとみられる>として伝えた。

 山口代表は、政府が存立危機事態に該当する場合があるとして挙げていた、中東ホルムズ海峡での機雷掃海について、「いまの中東情勢から分析すれば想定できるか」と質問し、それに対して首相の安倍氏は、「現在の国際情勢に照らせば、現実の問題として発生することを具体的に想定していない」とこれまでの答弁を否定する内容に修正した。

 当初から指摘されている首相の安倍氏の、到底首相とは思えないおそまつ極まる答弁(ホルムズ海峡での機雷掃海の件は、自公協議の段階で了解されていたもので、その修正の意図もあったのではないか)の修正を援護したものと思われる。

 また、山口代表は、法案のこれまでの政府の憲法解釈との適合性について聞いた。横畠裕介内閣法制局長官が答えた。「新3要件の下で認められる武力の行使は、国際法上の集団的自衛権の行使を認めるものではなく、海外での武力行使を認めるものではない」と述べた。

 この横畠裕介・内閣法制局長官の答弁は、これまでの安倍氏や閣僚の面々がしてきた法案説明・答弁とも著しく食い違っている。ただし、その首相の安倍氏や閣僚の面々の発言は、言い間違い、朝令暮改、二転三転ばかりで定まらず、明白に憲法違反する内容が含まれるほか、判断を政府にまかせるよう促す答弁(法案そのものの不備・検討不足)が相次ぎ、また、安倍氏のホルムズ海峡での機雷掃海の件の取り下げに象徴されるように、そもそもこの法案(法案群)を国会に提案する理由や前提そのものが根拠薄弱であり、何のためのものなのかさえ、自公与党は、結局、明らかにすることさえできなかった。

 それは「国家秘密」のためというより、米国とのガイドライン合意の土台をつくろうとする作業のプロセスにあわせて、首相の安倍氏がこだわる「集団的自衛権行使容認」の路線を付加する自民党の流れ(国会で多数を占める「いましかない」?)に対し、公明党が内閣法制局などを巻き込んで「合憲」の範囲内で「集団的自衛権行使容認」のレトリック群を構成し、公明党なりに「暴走にブレーキ」をかけようとしたものともいえるだろうが、山口代表の質問に対する横畠・内閣法制局長官の答弁にあるように「新3要件の下で認められる武力の行使は、国際法上の集団的自衛権の行使を認めるものではなく」「海外での武力行使を認めるものではない」という、自公両党だけの間にしか通用しない奇妙な「集団的自衛権」を生み出すこととなった。

 しかしながら、その後の審議のプロセスでも明らかになっているように、政府・自民党は、公明党のいう「合憲」のしばりなど無視して突っ走ろうとする。自公合意の枠におさめる気などまったくなく、しかしながら法案審議の過程ではその本音と自公協議の建前の狭間で揺れ動き、さらに国会では、自公与党間の事情や二党の間だけのかけひきや用語を超えた質疑が飛び交い、そもそも首相の安倍氏は、なぜ「集団的自衛権行使容認」への転換にこだわるのかという原点そのものさえ、根拠薄弱、ビジョン不在、説得力皆無という姿をさらけだしてきたわけである。

 またこの日、山口代表は首相の安倍氏に対して、参院送付から60日たっても議決されない場合、衆院で再可決できる「60日ルール」が適用可能な状態となっている点について、「この60日で結論を出すことができず極めて残念だ」と強調して、「参院として結論を出していくべきだ」と説いた。安倍氏はこれに対し、「政府としては引き続き分かりやすく丁寧な説明に努めて参りたい。その上で、熟議の後に、決めるべき時は決めなければならない」と答えた。

 「分かりやすく丁寧な説明に努めて参りたい」と答えながら、自公与党は早ければ16日・17日にも委員会採決する流れへと向かっている。18日までの成立を目指し、強行も辞さない構えである。連休前に仕上げなければ、デモが大きくなるからという理由が報じられているが、そういう問題ではないだろう。この山口代表と安倍氏のやりとりもまた、山口氏が党首討論以外の委員会で異例の質問に立ち、「首相に対して言うべきことは言った」という<かたち>を整えるためだけに行われたものと解するほかなかろう。

 横畠・内閣法制局長官の「新3要件の下で認められる武力の行使は、国際法上の集団的自衛権の行使を認めるものではなく」「海外での武力行使を認めるものではない」という答弁をあえて引き出したのも、公明党と自民党の間ではこういう約束ができていて、両党だけでなく内閣法制局長官もそう答えていると<最終段階>でアピールすることで、公明党がとった自民党との「集団的自衛権行使容認」と「安保関連法案」の正当化をはかったものと思われる。

 次世代、日本を元気にする会、新党改革との、自衛隊を派遣する際に国会の関与を強める付帯決議と閣議決定を行う合意と、法案賛成の取り付けにも、公明党の果たす役割の影響がうかがわれる。自公の与党間のやりとりだけみれば、ふがいない安倍流を公明党がうまくサポートし軌道修正をはかったということになるのだろうが、それは国会や政党間のバランスや調整にとどまる問題である。そしてその分、自民党だけでなく公明党の責任は重いというほかない。

 1)安易に政権と袂を分かつだけでは政党として未成熟と批判されかねない、2)憲法9条の改憲に突進させないためにも憲法の枠内に「集団的自衛権行使容認」をおさめる道しかなかった、3)実際に東北アジアの脅威は増している等々、判断の材料はさまざまあるのだろうが、筋の通らない理屈とレトリックで日本国憲法の掲げる平和主義の根幹である第九条の解釈の変更に手を染め、日本社会を民主主義社会として地盤を成立させている立憲主義を損ないかねない政権運営に手を貸した事実は消えない。

 まして、上記のような理由や背景で、閣議決定と今回の安保関連法案の成立にいそしんできたというのであれば、なおさら公明党は、平和主義を掲げる支持母体である創価学会からの「批判」を封じ込めるのでなく、「批判」の風を背負って、自民党にはびこる右翼カルト路線の封じ込めの「力」とすべきではなかったのか。彼らの掲げる「自主憲法制定」「憲法9条破棄」「武器輸出・共同開発全面解禁」「国防軍創設」などの路線は、公明党はいざ知らず、支持母体の創価学会の唱える主張や理念とはまったく相容れないはずである。

 創価学会の内部には、法案への不安が広がる。共同通信の世論調査では、6月の終盤には、公明支持層の法案反対は47.2%となり、賛成36.6%を大きく上回った。「学会では声を上げづらい」と明かす人たちが出、「法案に反対したら、他の会員に『反逆者』と言われた。対話も拒まれ、孤独で悔しい」と嘆く声があがっるようになっている。安保法案反対のデモ行進をする参加者の中にも、創価学会の三色旗を振る人が出始める(→東京新聞)。
 だが、創価学会は、「九条の平和主義と専守防衛を踏まえ、それに基づく法案の審議が国会で進められていると認識しています」(創価学会広報室の話、東京新聞8月30日)とし、「法案をめぐる会員の集会や動きは関知せず、公認したものでもありません。当会の名前と三色旗が政治的に利用されることは大変遺憾です」(同)とのコメントを出した。救いがあるとすれば「関知せず」の部分にとどまるのみだ。

 これは創価学会によるコメントだが、安保関連法案の問題は、創価学会と公明党の従来の関係をこえた国民的な議論を必要としている。この問題は、与党が審議を打ち切って、法案を成立させて以降、いよいよ本格化することになるだろう。民主主義社会において、その基盤である立憲主義をないがしろにして、憲法遵守義務に違反する行為であることが濃厚である閣議決定と関連法案成立を、市民社会の大半の反対を無視して強行しようとしているのだから、当然の話である。公明党には政党として、また与党の一員として、かかえる事情も種々あることだろう。しかし、公明党のそうした事情は、創価学会の組織や会員個々に共通の課題とはいえない。与党のパートナーとして公明党が抱えるジレンマや事情の論理で、創価学会の会員の目を曇らせたり閉じさせるようなことがあってはならない。

 創価学会は、宗教団体として、あらためて政党支持の自由を組織内に根づかせる努力を進めるべきであるし、公明党は自民党との駆け引きや政党としての生き残りのために、創価学会の組織や会員を集票マシンとして動員することについて、いよいよ慎重であることが要求されるだろう。創価学会も公明党も、その歴史の大きな転換点を迎えているように思えてならない。

▽一刻も早く、本末転倒、有害無益な政権を退場させよう

 いま日本の市民社会は、再度、第二次世界大戦後にようやく獲得した民主主義と平和主義、そして人権尊重社会の再確認と、その足場を再構築する時を迎えている。政党として、また政治家として生き残ることができるかどうかの瀬戸際に立っているのが、いまの政権与党である自民党であり、そのパートナーである公明党である。

 とくに自民党は、2009年に迎えた政権交代によって下野し、政党存続の危機にまで追い込まれた。受けたショックの大きさは、再度政権に返り咲いた自民党のいまの姿に端的に現れている。政権を追われた自民党は、その末期症状をきちんと自覚して再生への道をさぐる努力を放擲していたことが、いま完全にあらわになっている。何も変わっていなかったどころか、体質を悪化させ、それを先鋭化させてきたのである。

 アベノミクス、原発政策、TPP――当初は民意を慮り、さぐるようにして動いていたが、いずれも失敗または逆方向へ転進。国外への武器の輸出を禁じた武器輸出三原則にかわり防衛装備移転三原則を策定して、この分野へのビジネス面の拡大と防衛省の影響の及ぶ範囲の拡大に乗り出す姿勢を示した。また、日本国憲法96条の改定(各議院の総議員の三分の二以上の賛成で国会がこれを発議の条文規定の緩和)に頓挫した安倍政権は、「集団的自衛権行使容認」の閣議決定を行い、日米ガイドライン改定の時期をみすえた具体的法制度化に向けて自公与党協議を行い、それをベースに「集団的自衛権行使」を容認する実質的改憲状態へと持ち込もうとしている。

 ほかに、これもずさん極まりない秘密保護法の制定の強行や、マイナンバー制度の導入(国民総背番号制)、国民消費を冷え込ませる消費税の二段階再増税や、派遣労働者の使い捨て助長や制度の固定化を促しかねない労働者派遣法改定、大学の学部や教科書選定問題など教育現場への圧迫も続けている(第1次安倍内閣での改正教育基本法、防衛庁の省昇格などをさらに強める動き)。

 市民社会をだまし、得た票と議席をもって、まるで親の仇とでもいわんばかりに、成熟した民主主義社会の破壊に突進し、自ら対米従属と対財界御用聞きへと逃げ込んで援軍を呼び込もうとする古臭い手法を繰り返しながら、日本社会を時代錯誤の未成熟な半独裁国家へと誘おうとしている。

 安保関連法案とその審議の進め方には、政権のその未熟かつ姑息、無策・無能の本質がそっくりそのまま詰め込まれている。時代に対応できず、国民をないがしろにし、強い者の威光にすがって自らを大きく見せようとし、その愚かな強引さと市民社会からの抗議に自己満足する。すでに、抗議の強さに対して自らが抱く恐怖心もまた、自己陶酔の源泉となっているのかもしれない。――そのような疑念を抱かせられるほどに、日本の政治はいま重大な危機に陥っている。日本社会は一刻も早く、この本末転倒、有害無益な政権を退場させて、本来歩むべき軌道へと進路を戻さねばならない。

(こわし・じゅんぞう/日本ジャーナリスト会議会員)


与党、16日にも安保法案採決 参院委、審議打ち切りへ(共同通信15日)
http://www.47news.jp/smp/CN/201509/CN2015091501001973.html
安保法案 与党・野党3党 修正協議で大筋合意(NHK15日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150915/k10010235901000.html
安保法案めぐる修正協議、与党と野党3党が合意(TBS15日)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2588795.html
安保法案 自民・公明と維新の修正協議は決裂(NHK15日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150915/k10010235081000.html
公明代表が異例の質疑=安保法案理解求め−参院特別委(時事通信14日)
http://www.jiji.com/jc/ci?g=pol&k=2015091400782&pa=f
揺れる創価学会員 安保法案で自民と協調「おかしい」(東京新聞8月30日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2015083002000118.html
安保採決、徹夜攻防か=与党「再可決」「信任決議」も視野(時事通信15日)
http://www.jiji.com/jc/zci?g=pol&k=201509/2015091500825&pa=f


posted by JCJ at 15:51 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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