2015年12月01日

新基地建設 国が法乱用、県を恫喝/「政治の堕落」と翁長知事=与那原良彦

 新基地建設問題をめぐり、政府は沖縄県の翁長雄志知事を相手取り訴訟を起こした。沖縄県と政府の法廷闘争は1995年の代理署名訴訟以来、2度目。沖縄に基地を置くためになりふり構わない政府の実態は20年たっても変わっていない。
 名護市辺野古での埋め立て承認を翁長知事が取り消したことを違法として、石井啓一国土交通相は11月17日、取消処分を取り消す代執行訴訟を福岡高裁那覇支部に提起した。訴状では「瑕疵があるか否かにかかわらず、承認処分を取り消すことは許されない」とまで言い切っている。沖縄の民意を踏みにじった埋め立て工事で支払った経費473億円を挙げ、取り消しになれば「全くの無駄金となり、国民がその負担を追うことになる」と県を恫喝する。

 翁長知事は17日の会見で、住民の土地を奪って建設した米軍基地の歴史を踏まえ「『銃剣とブルドーザー』による強制接収を思い起こさせる」と批判。取り消しを「違法と決めつけられるいわれはない」と反論した。
 翁長知事の承認取り消し以来の政府の対抗策は法の乱用であり、到底納得できない。沖縄防衛局は、国民の権利を救済する「行政不服審査法」で「私人になりすまし」て国交相に審査と取り消しの執行停止を請求。今度は国交相が国の立場で代執行を求めた。法の趣旨をねじまげてでも政府に楯突く者を従わせようとする構えだ。
 安倍政権のやり方に対し、翁長知事は「強権きわまる」とし、「日本の政治の堕落」と断じる。だが、その批判の矛先は政権の暴走を止められないこの国のジャーナリズムにも向けられている。
 新基地建設は、選挙で示した民意や地方自治を蹂躙するものであり、一方的に「公益」を押し付ける国家権力が民主主義を破壊する企てだ。代執行訴訟などの裁判闘争も沖縄県と政府の対立だけに矮小化すると、問題の本質を見失ってしまう。森本敏元防衛相も海兵隊駐留が沖縄でなくてはならない軍事的な理由はないとしている。

 辺野古での座り込みは11月18日で500日になった。工事車両が出入りするキャンプシュワブ・ゲート前は多くの市民が工事の中止を訴え、海上でもカヌーで抗議する。政府は警視庁の機動隊も導入し、オジーやオバーをごぼう抜きにする。けが人や逮捕者が出ている。最悪の事態を招きかねない。

 沖縄の記者は連日ゲート前に張り付き、船に乗り沖合で取材する。過剰警備を監視し、辺野古の今を伝えている。
 米軍オスプレイの配備は当時の知事をはじめ、全市町村長、全議会が反対しても、強行された。一方、佐賀県では普天間飛行場配備のオスプレイの訓練移転を早々と断念した。日米同盟のために、沖縄だけをいけにえにしている。
 「沖縄2紙をつぶす」という報道圧力発言は、沖縄のジャーナリズムの使命を再確認するきっかけになった。新基地建設阻止の辺野古の闘争は美しい海を守るだけではなく、国家権力から民主主義と社会正義を守る闘いである。裁判の結果がどうであれ闘いは続く。沖縄に生きるジャーナリストたちは県民の立場で報道を続ける。

(沖縄タイムス政経部長)


*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2015年11月25日号


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