英語国アメリカでさえマイナンバーとは言わない。向こうでは社会保障番号と正直に言う。
日本政府が横文字を使うときは要注意なのだ。この場合「国民総背番号」のほうがよほど正確だし、「個人情報番号」でも良い。メディアは必ず日本語にすべきなのである。
誤配などの混乱を起こしながら、「番号」の通知配布が始まっている。納税対策だと説明もする。だが納税額を知ればその人の収入が判る。銀行の預金額も集約するというから、個人の貧困度や借金履歴まで国は掌握できる。その上番号カードは写真で顔認証も行なうという。街の監視カメラを使えばその顔がいつどこにいたかを追跡できる。さらに健康保険情報を通じて隠したい病歴や使用薬も把握される。スーパーや本屋での購入記録も入るから、個人の関心も暴露される。他人に知られては困る番号だが、漏洩を防ぐのは本人に限らず役所や企業でも不可能という。国の情報は秘密保護法で隠し通し、個人情報は国がすべて握る。まさにファシズムへの布石である。
戦争法が強行採決される間に「徴兵制はない、憲法違反だから」と首相は答弁した。戦争法そのものが憲法違反なのだから信用できるか、と言いたいが、実は徴兵制廃止は米欧諸国の趨勢である。ベトナム戦争での徴兵が国民の反戦気運を広げたという教訓から、アメリカは志願制に切り替えた。堤未果の著書によれば、志願兵は貧困層の若者だという。衣食住は無料で、車や重機の免許も取れる。預金ができるし兵役を終えれば大学の学費も出る、という囁きで、軍の徴募係が高校でイラク・アフガンの兵を集めた。それを「経済的徴兵」と訳すようだが、意味を汲んで「脱貧困徴募制」と言ったほうが判りやすい。
派遣労働法も改悪された。その貧困地獄から脱出しようとする若者が日本では増える。自衛隊の給与を少し上げれば絶大な効果が出る。幹部候補の約束で大学生を「自衛隊貸費学生」とし、毎月5万4千円を支給する制度も機能する。
驚くのは、沖縄市と宜野湾市が18歳から26歳の適齢者2万4千人の情報を沖縄防衛局に渡していたことだ(琉球新報10月25日)。旭川市も同様のリストを自衛隊に書写させている。「番号」制度なら、国は若者たちの健康も貧しさも全部わかるから、机上で「甲種合格者」を選び出せる。
一部自治体による防衛庁との馴れ合い行動。これが全国に広がることがあってはならない。
(JCJ代表委員)
*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2015年11月25日号

