2016年02月20日

野党5党、安保関連法廃止法案共同提出──「違憲法制」を正し、平和主義・民主主義の正常化を

 19日、民主、共産、維新、社民、生活の5党は、安倍政権が昨年成立させた安全保障関連法が集団的自衛権行使を認めたのは「憲法違反だ」として、同法を廃止する法案2本を衆院に共同提出した。政府は安全保障関連法を来月29日に施行する方針。
 2法案は、集団的自衛権行使を可能にする「平和安全法制整備法」と自衛隊の後方支援を定めた「国際平和支援法」をそれぞれ廃止する内容。  法案提出に先立ち5党は党首会談を行い、1)安保法を廃止し、2)集団的自衛権行使を容認した閣議決定を撤回するため、3)国会や国政選挙で協力して政権打倒を目指すことを確認。民主党の岡田代表は「与党を少数に追い込むため5党で協力していく」とした。
(JCJふらっしゅ「ニュースの検証」=小鷲順造)


 5党は、安保法は憲法違反として共同で反対していく立場から、夏の参議院選挙をはじめ、4月の衆院北海道5区と京都3区の補欠選挙もふくめ今後の国政選挙で主要な争点の一つとして掲げ協力する。具体化に向け、幹事長と書記局長で協議に入る。
 民主党の岡田代表は、「5党で確認したところに意義があり、認識は完全に一致した。きょうの確認事項を達成するため、今後、5党の幹事長、書記局長が早急に協議して、具体化していきたい」(NHK)と語り、共産党の志位委員長は、「国政選挙での協力と具体化のための協議に入ることは、多くの国民の声に応える極めて重要で画期的なことであり、わが党としては、誠実かつ真剣に協議に臨み、できるだけ速やかに合意を得るよう全力を挙げたい。参議院選挙の1人区の候補者調整にあたっては、『戦争法』の廃止と、立憲主義の回復という大義の実現のために、思い切った対応をしたい」(同)と話している。
 共産党の志位委員長は党首会談で、これまで夏の参議院選挙における野党側の候補者調整の前提としてきた安全保障関連法廃止のための「国民連合政府」構想について、「賛否についてさまざまな意見があるので、いったん横において、選挙協力の協議に入りたい。定数が1人の『1人区』では思い切った対応をしたい」として、「国民連合政府」の構想を候補者調整の前提とせず、1人区で党の公認候補者を取り下げることも視野に入れて対応していく考えを示した。(→NHK)

野党5党 安保関連法廃止法案を共同で提出(NHK19日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160219/k10010414811000.html
野党5党 国政選挙での勝利へ最大限協力(NHK19日)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160219/k10010414841000.html
野党5党、安保関連法廃止法案を提出 党首会談で協力確認(日本経済新聞19日)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS19H0H_Z10C16A2EAF000/
5野党、安保廃止法案を共同提出 政府、3月29日施行へ(北海道新聞19日)
http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/politics/politics/1-0236673.html
野党5党、安保廃止法案を提出  政府は3月29日施行で調整(岩手日報19日)
https://www.iwate-np.co.jp/newspack/cgi-bin/newspack_c.cgi?c_politics_l+CO2016021901001361_1


▽「違憲法制」──放置し、既成事実化させるわけにはいかない

 東京新聞は19日付社説として<廃止法案きょう提出 安保の根幹 正さねば>を立て、<いくら積み重ねたとしても土台が揺らいでいれば、いつかは崩れてしまう。憲法違反と指摘される安全保障関連法。今こそ根幹を正さなければならない>と書き出した。(以下、要約しながら読み込んでおくことにする)
1)安倍政権が「平和安全法制」と呼んで採決を強行した安全保障関連法が参院本会議で可決、成立したのは昨年9月19日未明だった。
2)それから5カ月、閣僚や議員の相次ぐスキャンダルで政権のおごりやほころびか現れている。国会は政府・自民党の釈明の場と化し、安保法をめぐる議論は隅に追いやられた感がある。
3)だが、安倍政権の安保関連法は、他国同士の戦争に参加する「集団的自衛権の行使」を可能にし、多くの憲法学者ら専門家が「憲法違反」と指摘する法律であるから、このまま放置し、既成事実化させるわけにはいかない。
 と書いて、現在の状況と同士の立場を明示したうえで、
4)民主、共産、維新、社民、生活の野党5党がきょう安保関連法を廃止するための法案を提出するが、それに先立ち、衆院で統一会派を組む民主、維新両党がきのう、安保関連法の対案となる領域警備法案など三法案を提出した。
5)これは、安倍首相が「全体像を一括して示してほしい」と野党側に求めていた対案の提出であるから、与党側は廃止法案と合わせて、真摯に法案審議に応じるのが筋だ。
 と厳しく求める。

 社説は、安倍政権が成立を強行した安保関連法の最大の問題点とその背景・根拠を整理している。
6)安倍政権が成立を強行した安保関連法の最大の問題点は、主に自民党が担ってきた歴代内閣が踏襲してきた、集団的自衛権の行使をめぐる政府の憲法解釈を、安倍内閣が一内閣の判断で変更してしまったことにある。
7)戦後制定された日本国憲法は九条で、国際紛争を解決するための戦争や武力の行使、武力による威嚇は行わないと定めた。日本国民だけで310万人の犠牲を出し、交戦国にとどまらず、近隣諸国にも多大な犠牲を強いた先の大戦に対する痛切な反省に基づく、国際的な宣言でもある。
8)その後、日米安全保障条約によって米軍の日本駐留を認め、実力組織である自衛隊を持つには至ったが、自衛権の行使は、日本防衛のための必要最小限の範囲にとどめる「専守防衛」を貫いてきた。
9)一方、集団的自衛権とは、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力で阻止する、国連憲章で認められた国際法上の権利だ。歴代内閣は、日本が集団的自衛権を有していることは主権国家である以上、当然だが、その行使は専守防衛の範囲を超え、許されない、との見解を貫いてきた。
10)国際法との整合に挑んだこの憲法解釈は、国権の最高機関である国会や政府部内での議論の積み重ねの結果、導き出された英知の結集でもある。自国に対する武力攻撃は実力で排除しても、海外で武力を行使することはない。日本国民の血肉と化した憲法の平和主義は、戦後日本の「国のかたち」であり、安全保障政策の根幹である。
 であるから、<安倍内閣が2014年7月に行った、集団的自衛権の行使を一転認める閣議決定は、憲法の法的安定性を損ない、安保政策の根幹をゆがめるもの>であり、<この閣議決定に基づく安保関連法に対して、多くの憲法学者が「憲法違反」と断じるのは当然だろう>とあらためて指摘する。

 そして、であるがゆえに<日本の安保政策を、専守防衛という本来の在り方に戻すには、集団的自衛権の行使を認める閣議決定を撤回し、安保関連法を廃止する必要がある>として、5党による安保関連法廃止法案の提出について、<専守防衛を逸脱しつつある安保政策の根幹を正す第一歩>としたいし、かつ<与党側も逃げずに、堂々と論戦に応じるべきだ。安保関連法は3月末までに施行されるが、とりあえず施行の延期を検討してはどうだろうか>と提言している。
 そして社説は提言先を読者・市民に移して、<憲法を逸脱しつつある安保政策を根幹から正すには、世論の後押しが必要だ>と訴え、<国会周辺をはじめ全国各地できょうも行われる路上の訴えに、安倍政権はあらためて耳を傾けるべきだろう>と呼びかける。なぜなら、<専守防衛という戦後日本の国是を守り抜く決意を、国民が自ら選挙で示すことが重要>だからであり、<諦めや無関心は、政権の暴走を許すだけ>だからだ。

 社説は、<私たちの新聞が、平和主義を貫こうとする国民の側に立つのは当然だ>と立ち位置を明示し、<政府の言い分をうのみにせず、自らの判断力で問題提起を続ける。新聞として当然の役割を、この機にあらためて自任したい>と宣言して締めている。
 民主、共産、維新、社民、生活の5党が、安倍政権が昨年成立させた安全保障関連法が集団的自衛権行使を認めたのは「憲法違反だ」として結束、同法を廃止する法案2本を衆院に共同提出するその日、このわかりやすくかつ格調の高い社説を掲げた同紙にエールをおくりたい。

 また、朝日新聞もこの朝、社説として<安保・野党案 「違憲法制」正す議論を>を掲げた。
 民主党と維新の党がきのう、対案として、領域警備法案、周辺事態法改正案、国連平和維持活動(PKO)協力法改正案の3法案を国会に共同提出したこと、さらにきょう、共産党、生活の党と山本太郎となかまたち、社民党も加えた野党5党が「違憲」の安保法制を廃止する2法案を国会に提出するとしたうえで、<幅広い専門家らの「憲法違反」の指摘に反し、安倍政権が安全保障法制を成立させたのは昨年9月19日のことだった。それからちょうど5カ月>と振り返る。
 社説は、<憲法が権力を縛る立憲主義を守っていく。安保政策に違いはあっても、「違憲」法制を正す議論には党派を超えて粘り強く挑み、市民とともに幅広い連帯を育てていく。それが安保法制に疑問や不安を抱く民意に対する、野党の責任ではないか>と締める内容で、<予定通りなら安保法制は3月に施行される。法制成立から5カ月後の対案提出は、遅きに失した感は否めない。それでも、「違憲」法制をこのままにはできない、もう一度議論を巻き起こしたいと野党各党が一致した意義は大きい>として、「違憲法制」を正す議論を求めている。
 また、1)夏には参院選がある、2)安保法制が本格的に運用されるのは、そのあとになりそうだ、3)PKOに派遣する自衛隊への「駆けつけ警護」任務の追加や、米軍への弾薬提供など後方支援を広げる日米物品役務相互提供協定(ACSA)改定案の国会提出は参院選後に先送りされる。4)反発を再燃させたくないという判断だろう、5)こうした政府の動きに、野党がどう向き合うかが問われる、とする指摘も盛り込んだ。

 さらに、政府の安保法制について、<憲法9条の縛りを解き、地球規模での自衛隊の派遣と、他国軍への支援を可能にするもの>と整理、一方、<民主党は「専守防衛に徹し、近くは現実的に、遠くは抑制的に、人道支援は積極的に」と主張>していることを挙げ、<日本の安全に資するには、海外での武力行使に道を開くよりむしろ、日本防衛や日本周辺での活動を中心に、憲法の枠内での法整備を考えるべきだ>という指摘だと整理する。
 民主党が維新の党と共同提出した対案も、その線に沿っており、これは<現実的な考え方として国会で議論する価値はある>として、与党多数の国会では野党の対案はなかなか審議されず、たなざらしにされがちだが、<多くの疑問や反対を残したまま法制を施行することは、安保政策を安定的、継続的に運用する観点からも望ましくない。政府・与党も、すすんで議論に応じてはどうか>と書いた。

 政府・与党に提言するスタイルをとって論じられたものだが、1)「違憲」法制をこのままにはできない、もう一度議論を巻き起こしたいと野党各党が一致した意義は大きい、2)憲法が権力を縛る立憲主義を守っていく。安保政策に違いはあっても、「違憲」法制を正す議論には党派を超えて粘り強く挑み、市民とともに幅広い連帯を育てていく。それが安保法制に疑問や不安を抱く民意に対する、野党の責任ではないか、との指摘・提言。政府・与党への提言スタイルをあえて採用しつつ、<それでも、「違憲」法制をこのままにはできない、もう一度議論を巻き起こしたいと野党各党が一致した意義>を書き込む社説の矯めた姿勢に、スタンスを広く取った同紙内部に息づく芯の強さを感じとりたい。
 社説のタイトル<安保・野党案 「違憲法制」正す議論を>の呼びかけのとおり、政府・与党は真摯にこたえてもらいたい。

 昨日(19日)に続いて、野党5党の安保関連法廃止法案共同提出と今後の選挙協力について、新聞の社説がどう取り上げたかについてみておく。
 毎日新聞、日本経済新聞、読売新聞はそれぞれ、20日付の社説では取り上げなかった。産経新聞が「主張」(同紙社説)で<野党の安保廃止法 国の安全損なう「連帯」だ>を出した。全文は、下記URLで参照されたい。
 http://www.sankei.com/column/news/160220/clm1602200003-n1.html

 書き出しは、<現実の脅威である中国や北朝鮮の動向には目をつむり、早々と参院選向けのスローガンづくりに精を出している。民主党など野党5党による安全保障関連法の廃止法案提出は、その一環としか見えない>。
 そう断定する理由について、まず以下、五つの論点を提示する。
1)事実、5党の党首会談では安倍晋三政権の打倒に向け、国会や国政選挙での共闘を確認したという。
2)安全保障政策の内容より、反対ありきで連携を図ることが優先されている。真に国民の平和と安全を考える視点、責任の欠落ぶりに暗澹(あんたん)たる思いがする。
3)5党に決定的に欠けているのは、集団的自衛権によって同盟の抑止力を強化し、戦争の危機を遠ざけて平和と繁栄を保つという知恵だ。これは世界の主要な民主主義国の常識であり、国連憲章も認めている。
4)東シナ海や南シナ海における中国軍の動き、北朝鮮の核・弾道ミサイル開発に、国民は不安を感じている。もはや個別的自衛権だけでは日本を守りきれない。何十年も昔の冷戦時代の憲法解釈にこだわり、眼前の危機に対応しないのは危うい。だから安保関連法が必要になったのである。
5)野党5党の非現実的な主張をよそに、日米の安保協力は歩みを進めている。

 そのうえで、昨年改定の新防衛指針(ガイドライン)に基づく日米の同盟調整メカニズム(ACM)について、<北朝鮮の核実験・ミサイル発射で早速機能し、自衛隊と米軍は密接に連携することができた。3月下旬の安保関連法施行により、絆は一層強まるだろう>と評価したうえで、民主党と維新の党が、安保関連法廃止法案提出の前日に、グレーゾーン事態に備える領域警備法案など3法案を安保関連法の「対案」として衆院に提出したことについて、<両党はこれにより「安全保障で現実的対応をとれる」というが、評価に値する内容ではない>と切り捨てた。理由は、<自衛隊が平時から米軍などを守る「武器等防護」の充実を見送っている。また、グレーゾーン事態への対処で、前もって指定する領域警備区域を設けるという。手薄になる地域を相手に知らせるようなもの>だという。
 同社説「主張」は締めで、<安保関連法の下での自衛隊の活動について、さらに議論を深めるべき点は少なくない>と指摘した上で、民主党と維新の党に対して、<いかに国民を守るかにこだわる政策を練り、出し直してはどうか>と提案している。

 産経新聞の主張のキーワードは、集団的自衛権についての論点としては、「世界の主要な民主主義国の常識であり、国連憲章も認めている」「集団的自衛権によって同盟の抑止力を強化し、戦争の危機を遠ざけて平和と繁栄を保つという知恵」にあるようだ。
 また、集団的自衛権行使容認・安保関連法を必要とする情勢判断面での根拠は、「東シナ海や南シナ海における中国軍の動き」「北朝鮮の核・弾道ミサイル開発」に、「国民が不安を感じている」という点に軸足をおいて、「もはや個別的自衛権だけでは日本を守りきれない」という主張につなげている。産経新聞はこの立場をとり続けている。
 政府・与党のこの動きに反対する5党の連携については、「反対ありきで連携を図ることを優先」「真に国民の平和と安全を考える視点、責任が欠落」といういわば使い古された<野党は反対ばかり>で<責任感が欠如している>という批判を繰り返すにとどまっているようだ。
 米軍と自衛隊の「融合」の観点については、新防衛指針(ガイドライン)についての記述から読み取れる。<北朝鮮の核実験・ミサイル発射で早速機能し、自衛隊と米軍は密接に連携することができた><3月下旬の安保関連法施行により、絆は一層強まるだろう>と強力に推し進めるべきという立場である。
 集団的自衛権行使容認・安保関連法施行、そしてそれを「改憲」へと歩みを進めるための足場としてふみ固めようと主張する姿勢といえよう。

 集団的自衛権行使容認・安保関連法施行、そして「改憲」へとつなげようとする政府・与党の流れは日本の市民社会にとって重大な分岐点となる。これをそのまま許容してしまうのと、そうではなく、日本国憲法をいま再度私たちの足で踏み固めて、立憲主義の楔を深く打ち込み、平和主義と民主主義と人権尊重を機軸とした社会をさらに力強く発展させていくのとでは、日本の近未来はまったく逆の様相を示すことになるだろう。
 政権・与党に擦り寄ったり、同歩調をとる新聞の社説などについても目を通すなどして、これから広げていく会話や交流に深みや意義をもたせていきたいところである。

(つづく)


(こわし・じゅんぞう/日本ジャーナリスト会議会員)


廃止法案きょう提出 安保の根幹 正さねば(東京新聞19日)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016021902000139.html
安保・野党案 「違憲法制」正す議論を(朝日新聞19日)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12216115.html?ref=editorial_backnumber
野党の安保廃止法 国の安全損なう「連帯」だ(産経新聞20日)
http://www.sankei.com/column/news/160220/clm1602200003-n1.html

posted by JCJ at 09:36 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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