2016年03月11日

日本の政治家は原発事故からいったい何を学んだのか――安倍首相「資源に乏しい我が国に原子力は欠かすことはできない」、丸川環境相「反放射能派という人たちがわーわー騒いだ」

▽地震、津波、そこに原発の過酷事故を加えてしまった大人災

 東日本大震災は11日、発生から5年を迎えた。
 共同通信は前日午後6時過ぎ、社機から、東京電力福島第1原発を撮った。敷地がライトで照らされ廃炉に向けた作業が続く。避難区域に指定されたまま暗闇が広がる周辺の町も――。<大震災、避難なお17万4千人 関連死3410人に>の記事に、その写真を載せている。そこにはあわせて、岩手県陸前高田市の広田湾で、海上保安部の潜水士による海中捜索を見守り、献花する行方不明者の家族たちの写真、宮城県気仙沼市朝日町で建設されている防潮堤の写真がある。

(JCJふらっしゅ「報道クリップ」=小鷲順造)

 震災の犠牲者数は死者、行方不明者を合わせ2万1865人に上る。
 震災の死者は全国で1万5894人、行方不明者は2561人、厳しい避難生活やストレスが原因となった震災関連死は3410人。
 震災と東京電力福島第1原発事故による全国の避難者は、なお17万4千人に上っている。
 福島県では、住宅1万5171棟が全壊、7万9032棟が半壊。3859人が亡くなり、183人が重軽傷を負った。
 地震や津波などによる「直接死」1604人。避難による体調不良などによる「震災関連死」2031人。224人は遺体が見つかっていない(死亡届などが提出された方)。遺体も見つからず、死亡届も提出されていない行方不明者は3人。
 避難者数は9万7333人に上る。内訳は県内避難5万4174人、県外避難4万3139人、避難先不明者20人。(以上、10日午前8時現在、県発表の東日本大震災の被害状況速報に基づく)
 地震、津波、そこに原発の過酷事故が加わった大災害であり大事故・大事件であることを、私たちはあらためてとらえなおしておかねばならないだろう。警鐘を無視して原発事故対策を怠った東電幹部、国策として原発推進の姿勢を崩さない自民党の責任が、厳しく問わねばならない。

大震災、避難なお17万4千人 関連死3410人に(共同通信10日)
http://this.kiji.is/80576079411036162?c=39546741839462401
東日本大震災、発生から5年 犠牲者2万1千人、復興途上(共同通信11日)
http://this.kiji.is/80576079411036162?c=39546741839462401
福島県、避難者なお9万7333人 「震災関連死」は2031人(福島民友11日)
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20160311-056770.php


▽「科学技術と自然災害が結びつくことで、想像を絶する規模の危険が生じる新たな時代」

 地震発生時刻のは午後2時46分だった。
 きょう午後、政府は東京で追悼式を開く。全国各地の慰霊行事がある。大災害の犠牲者に鎮魂の祈りがささげられる。
 発生から5年間、国は「集中復興期間」として自治体を支援した。v  それを3月終え、2016年度から政府は、「復興・創生期間」と呼ぶさらに5年間の新たな期間に入るとしている。

 なお、10日には、国連の潘基文事務総長が、東日本大震災から11日で5年となるのに合わせて「日本の国民、とりわけ大切な人を失った人々に哀悼の意を表する」との声明を発表した。
 潘氏は東京電力福島第1原発事故を念頭に「科学技術と自然災害が結びつくことで、想像を絶する規模の危険が生じる新たな時代にわれわれはいる」(共同通信)と警鐘を鳴らした。
 「科学技術と自然災害が結びつくことで、想像を絶する規模の危険が生じる新たな時代」という言葉。いよいよ重みを増している気がしてならない。

国連事務総長、哀悼の意 震災5年で(共同通信11日)
http://this.kiji.is/80771577367184891?c=39546741839462401


▽「資源に乏しい我が国に原子力は欠かすことはできない」首相の安倍氏

 首相の安倍氏は10日午後、東日本大震災から11日で5年を迎えるにあたって、今後5年間を「復興・創生期間」と位置づけて、被災地の支援を行っていく考えを示した。
 安倍氏は、「今後5年間を復興・創生期間と位置づけ、十分な財源を確保し、被災地の自立につながる支援を行っていく考えであります」「(東北への外国人観光客を)2020年に(現在の)3倍の150万人に押し上げることを目指す。今年をまさに東北観光復興元年にする」(日テレ10日)と語った。
 2020年には東北への外国人観光客を今の3倍に増やす方針を明らかにし、現在も一部区間が不通となっているJR常磐線について、東京オリンピック・パラリンピック前の2019年度中に全線開通を目指すとした。
 また、福島第一原発事故に伴う帰還困難区域の見直しについては、今年夏までに政府の考え方を示すとした。
 福井県の高浜原発が9日、運転停止を命じる仮処分決定を受けたことに関連して、「資源に乏しい我が国に原子力は欠かすことはできない」(同)として、新規制基準に適合した原発について<再稼働を進める方針>を改めて示した。

 大切な日を前に、平然と「資源に乏しい我が国に原子力は欠かすことはできない」と口にする人物が「首相」という二重三重の悲劇の渦中にある日本社会。過去の歴史から学ぼうとする姿勢もなく、それを書き換えてさまざまなことを「なかったこと」にしようとする輩たち。

 そうした面々に政治家の職とそれに伴う権限を与えているのは、われわれ選挙民であり、日本社会である。彼らには、彼らを縛る<日本国憲法>というルールを事前に与えているわけだが、そのルールに縛られることを嫌い<改憲>して、逆に、われわれが手にしている権限そのものを制限しようとしている。人類社会の歴史の積みあげを知らず、自らが社会に立つその足場を知らない、実に恥知らずな面々としか言いようがない。

 私たちは、彼らを<政治家>として雇用しなければならない義務を負っているわけではない。逆に、選挙で落選させるという権限を有している。その権限を、私たちは<義務>としてとらえなおして、日本社会の未来を展望し、再構築へと踏み出す決断を迫られるときがある。
 いまがまさにそのときであると、私には思えてならない。

被災地自立へ全力支援=常磐線全面開通は19年度中−安倍首相会見(時事通信10日)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201603/2016031000670&g=soc
首相“今後5年間を「復興・創生期間」に”(日テレ 10日)
http://www.news24.jp/articles/2016/03/10/04324453.html
地方創生のモデルに=福島再生、国が前面−高木復興相(時事通信2日)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201603/2016030200142
「風評対策」国が情報発信 復興基本方針了承、観光客の回復を(福島民友11日)
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20160311-056786.php
<点検復興創生>創造的事業と両立挑む(河北新報2月24日)
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201602/20160224_11022.html
<点検復興創生>試される知事の本気度(河北新報2月23日)
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201602/20160223_13024.html


▽福島第2原発「廃炉にすべき」85%

 福島民友新聞が11日付で、県民を対象に行ったアンケート調査の結果を公表した。
 震災以降の国の対応について「不十分」との回答71%を占めた。「十分」は26%だった。同紙は、<復興施策をめぐる政府の対応への不満が数字となって表れた>と伝えている。

 「不十分」とした理由については、「風評が根強く残っている」「復興大臣が次々と代わり一貫性がない」「対応が遅い」「風化が進んでいる」(自由記述方式)という趣旨の回答が多かったという。
 また東京電力福島第2原発の今後については、「廃炉にすべき」85%、「再稼働」10%。残る5%は「無回答」など。
 「廃炉」と答えた人の多くは「安全性が担保されていない」「いまさら原発事故のリスクを持ちたくない」「再生可能エネルギーの普及を加速させるべき」などの意見が多かったという。
 「再稼働」の回答者は「帰還した人の雇用が生まれる。交付金や税金を復興に回せる」「日本のエネルギー需要に対応するためには仕方ない」などの意見が出たという。

 記事は回答について、福島大行政政策学類の丹波史紀准教授のコメントを載せている。丹波准教授は「具体的な対応がなされていないことへの県民の健全な評価を反映しているのではないか」と分析。「中間貯蔵施設整備や原発事故の収束作業など国が前面に出て対応したと感じることは少ないといえる。こうした国の姿勢そのものへの疑問と感じる」としている。

 また10日には、消費者庁が10日、2月に行われた第7回「食品中の放射性物質に関する意識調査」の調査結果を発表した(2月4〜9日にインターネットで行い、福島県を含む震災の被災地と東京都など都市部の消費者約5100人が回答)。
 食品の放射性物質検査が行われていることを「知らない」との回答が36.7%となり、昨年8月の前回調査を2ポイント上回った。これはこれまでの調査で最も高いという。「低線量」への受け止めについて「十分な情報がないため、リスクを考えられない」との回答も33.9%(前回比2.8ポイント増)と過去最高となった。
 消費者庁は、原発事故から5年近くが経過し、食品と放射性物質に関する消費者の「知識や理解の度合いが低下している」と分析しており、さらなる情報発信に取り組むとしている。
 また、食品の産地を気にする購入者のうち「放射性物質の含まれていない食品を買いたい」との回答は19.2%となり、前回比2.3ポイント減となった。さらに放射性物質を気にする人のうち、福島県産の食品購入を「ためらう」と答えたのは15.7%(同1.5ポイント減)となったという。

 食品の放射性物質検査が行われていることを「知らない」人が過去最高に増え、さらに「低線量被曝」について「十分な情報がないため、リスクを考えられない」との回答も過去最高となる事態と、食品の産地を気にせず購買する傾向の高まりが同時に起きているようだ。
 これは直面する厳しい現実を覆い隠し、「安心」や「安全」を情緒に流して、成り行きまかせにする無責任な、何でも<なかったことにする政治>と同歩調をとる危険な兆候といえる。情報不足も含めて、そうした状況を軽視し促進させることは、将来に問題を先送りすることになり、問題を先送りしても簡単には消えない放射性物質の影響を軽視したり過小評価することにつながりかねない。「忘却」は福島の応援にも支援にもつながらないことを、心しておきたい。

 何世代、何十世代にもわたって、外からもたらされた深刻な「病」をかかえたまま、厳重な管理をつづけることを求められる甚大な被害の中に私たちはいる。
 丸川珠代環境大臣は、東京電力・福島第一原発事故の後、国が除染の長期目標を定める過程で「反放射能派という人たちがわーわー騒いだ」などと発言し、その後撤回を口にした。しかし、その発言「撤回」も、その後の国会での答弁をみていると、きちんとした認識や反省による「撤回」ではないようだ。政治運営をまかせられる基礎力を欠き、そのうえ誤った認識を共有して、独りよがりで突っ走ろうとする。批判をうけるといったんは引っ込めるが、認識は変わっていない。
 つまりは、この環境相もその任にそぐわない。日本社会は、二重三重どころか四重五重の悲劇の渦中にある。もう、変えなければならない。その限界にきているのではないだろうか。

(こわし・じゅんぞう/日本ジャーナリスト会議会員)


国の対応「不十分」71% 福島県民アンケート、復興施策に不満(福島民友11日)
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20160311-056782.php
検査「知らない」36%、前回上回る 消費者庁・食品放射性物質調査(福島民友11日)
http://www.minyu-net.com/news/news/FM20160311-056776.php


posted by JCJ at 16:25 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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