2016年03月30日

「国民生活より米国貢献」に励む安倍政権 米大統領選がTPPに及ぼす影響は?=栩木 誠

 環太平洋経済連携協定(TPP)は2月4日、ニュージーランドのオークランドでの合意式で交渉参加12カ国が調印、15年10月の大筋合意から一歩踏み出した。しかし、TPPが正式に発効するまでには、交渉参加各国議会での協定批准承認など幾多の関門が待ち構えている。

 特に、今秋の大統領選予備選挙が佳境に入った米国では、先行するクリントン、トランプ両氏やサンダース氏など民主・共和両党の有力候補がこぞって「米国の産業や雇用を危うくするTPPに反対」を主張。米議会の実力者たちもTPP早期承認には厳しい姿勢を示している。
 カナダや豪州、ニュージーランドなどの交渉参加国でも、国内の関係団体や市民の間に根強い批判が高まりつつある。

 こうした中で、全交渉参加国の中で突出して前のめりだった安倍政権は、国民に対する説明責任を全く果たさない状況の下、今国会でのTPP関連法案の強行を企図している。そこには、国民の利益よりも「日本が先陣を切って協定承認にこぎつけることで、米国への側面支援を果たしたい」との思惑が優先している。TPPが発効するためには、「域内GDP(国内総生産)の85%以上かつ6カ国以上の批准が不可欠」なためである。
 「TPPは日米FTA(自由貿易協定)」とも評されるように、正式発効には12カ国の総GDPの約78%を占める日米批准が絶対条件だからである。  安倍政権がTPP関連法案の強行に猪突猛進する背景には、@TPPが戦争法制と共に「戦後体制脱却」の車の両輪A時間が経過するにつれ、「聖域5品目を守り切れなかった」TPPの屈辱的内容が国民に明らかにされる――ことがある。

 漂流する「アベノミクス」に腐心する安倍政権は、その経済成長戦略で「強靭な農業」を柱に位置付ける。農業協同組合や農業委員会など戦後の日本農業を支えてきた制度を崩壊させてきた「安倍新農政」が、いわば目玉として位置付けるのがTPPであった。TPPはまた、農業分野だけでなく医療や保険、労働など「戦後の日本の在り様」を根底から覆そうとするものでもある。
 安倍政権は今、国会でのTPP関連法案の早期議決に躍起になっている。「(コメなど重要5品目について)10年を超える期間をかけた段階的な関税撤廃も認めない」とした国会議決に反して、5品目はじめ全農水産物の関税ゼロ・大幅引き下げなど日本の権益と国民の利益に反した今回のTPP大筋合意。安倍首相は、「国益にかなう最善結果を得ることができた」と誇らしげに語り、大手新聞やテレビも「新たな通商時代の幕開け」と報じた。しかし、「まず合意ありきの玉虫色決着」だっただけに、時間の経過と共にバイオ医薬品や農産物分野、ISD(投資家対国家紛争処理)条項や知的財産権など各分野で内包された、多くの問題点や交渉参加国間の矛盾が次々と噴出してくる可能性が大きい。

 ここまでのTPP報道では、地域や住民の視点からの報道を続けてきた多くの地方紙や地方局とは対照的に、大手紙やキー局は翼賛報道に流れる傾向が顕著だった。TPP問題の議論が重大局面を迎える今こそ、TPPの抱える核心に迫り、それを明らかにしていくためにもジャーナリストの役割が一段と重要性を増している。
*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年3月25日号


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posted by JCJ at 09:00 | TrackBack(0) | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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