米大統領選に向けた共和党の指名争いでトップを走るドナルド・トランプ氏。
日米安保を「不公平」と述べていた同氏だが、ニューヨーク・タイムズが3月26日に掲載したインタビューで、自分が大統領に就任した場合、日本の核兵器保有を容認する考えを示した。日本が在日米軍の駐留経費負担を増額しなければ撤退させる方針も明らかにした。(→日本経済新聞)
(JCJふらっしゅ「報道クリップ」=小鷲順造)
また2日、米ウィスコンシン州での遊説で、日本は北朝鮮による核の脅威から自力で身を守るために武装するべきだと改めて主張、「彼らが武装しないのが望ましいとは思うが、このまま巨額の金を払い続けるつもりはない。率直に言って、北朝鮮から自力で身を守らせるべきだという論も成り立つはずだ」「米国が国力衰退の道を進めば、日韓の核兵器の保有はあり得る」と述べた。(→CNN)
オバマ大統領は、1日の記者会見で「こんなことを言う人物は外交や核政策、朝鮮半島や世界全体の情勢がよく分かっていない」(CNN)と批判していた。
ニューヨーク・タイムズのインタビューでトランプ氏は「米国は世界の警察官はできない」と話しているが、オバマ大統領の「世界の警察官」返上の発言とは相当、発言の意味や狙いは異なっているようだ。
ブッシュの戦争が米国にもたらした膨大な損失とツケを抱えて、そこからの脱出を命題として負ったオバマ大統領の抑制的な「世界の警察官」返上姿勢と、トランプ氏の「米国に警察官」の役割を求めるならカネよこせの主張は、真逆である。
それだけでなく、トランプ氏の主張は、要は、日本はもっと金を出せ、米軍駐留経費をもっともっと増額しろと要求するだけのものであり、日本から得られる多額の在日米軍駐留経費負担が、米国に与え続けているメリットについて知らないか、あるいは無視しているかを疑わせるものである。
さらに、いわゆる<日米同盟>がもつ(特に米国の軍産複合体にとっての財政的な)意味には触れないか隠蔽して、さらに日本から金を引き出そうとする乱暴さにおいて、精緻とビジョンを欠くものであり、到底、健全といえる内容ではない。
在日米軍の駐留経費を増額しなければ撤退させる、日本は北朝鮮による核の脅威から自力で身を守るために核武装でもなんでもしろというトランプ氏。米軍の撤退論には、苦笑いしながらも、喜ぶ人も多いと思われるが、日本の核武装論については、到底苦笑いで済ませることはできない。その点については、トランプ氏という共和党側で有力とされる大統領候補に対して、日本からも厳しく批判の声をあげていく必要があろう。
日本の「思いやり予算」(=在日米軍駐留経費の日本側負担)は、2016〜20年度の5年間の支出総額は9465億円にふくらむ見込みとなっている(3月31日の参院本会議で特別協定可決・承認され、4月1日に発効)。2015年度までの過去5年分より約130億円の増額を意味する規模で、当初の「思いやり予算の削減・圧縮」どころか真逆の流れとなっている。
ここにも、根拠薄弱で独りよがりな閣議決定で集団的自衛権行使容認へと憲法解釈を変更して、強引に<安保法>成立へと持ち込み、米国の軍産複合体に対する卑屈な信奉と従属姿勢をひたすら示して、自らの権力基盤の延命を追い求め、彼らがつくった流れに日本の国会を引きずり込んでやまない安倍自公右翼カルト・プロパガンダ政権の本質が見事にあらわれている。
トランプ氏、日本の武装を改めて主張 北の核の脅威に対応で(CNN3日)
http://www.cnn.co.jp/usa/35080589.html?tag=top;topStories
トランプ氏、日本の核兵器保有を容認 米紙に語る(日本経済新聞 3/27)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM27H0S_X20C16A3FF8000/
思いやり予算協定を承認=5年間に9465億円−国会(時事通信 3/31)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016033100801&g=pol
http://www.cnn.co.jp/usa/35080589.html?tag=top;topStories
トランプ氏、日本の核兵器保有を容認 米紙に語る(日本経済新聞 3/27)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM27H0S_X20C16A3FF8000/
思いやり予算協定を承認=5年間に9465億円−国会(時事通信 3/31)
http://www.jiji.com/jc/article?k=2016033100801&g=pol
▽日本政府「憲法は核兵器保有を禁止していない」
1日(日本時間2日未明)、首相の安倍氏は核安全保障サミットのオープニング会合でスピーチした。日米両政府は核物質の撤去や米国への移送を明記した「核セキュリティ協力に関する日米共同声明」を発表した。
安倍氏はスピーチで、米国が核テロ防止のため撤去・返還を求めていた茨城県東海村の「高速炉臨界実験装置」(FCA)の高濃縮ウランとプルトニウムの全量撤去について、当初は19年ごろまでを予定していたが前倒しして完了したと報告、京都大原子炉実験所(大阪府熊取町)の学生訓練用の原子炉「京大臨界集合体実験装置」(KUCA)で使用してきた高濃縮ウランを全量撤去する方針を明らかにした。(→毎日新聞)
核不拡散に取り組む姿勢をアピールしたものだが、同じ1日、政府は同日の閣議で、核兵器の保有や使用について、「憲法9条は、一切の核兵器の保有および使用をおよそ禁止しているわけではない」とする答弁書を決定している。この<矛盾>を、安倍自公政権は、どう説明するのか。またこれは、日米両政府が合意した核物質撤去と米国への移送の<意味>をも疑わせるものとなるが、同政権はいったいどう説明できるのか。
TBSによると答弁書は、まず憲法の解釈として、「自衛のための必要最小限度の実力を保持することは憲法9条によって禁止されているわけではない」とした。あわせて、「我が国は非核3原則により政策上の方針として一切の核兵器を保有しないという原則を堅持している」とし、核兵器の保有や使用について「核兵器であっても仮にそのような限度にとどまるものがあるとすれば保有することは必ずしも憲法の禁止するところではない」とする。
これをそのまま受け取ると、核兵器の保有や使用の障害となっているのは「非核3原則」であり、「日本国憲法第9条」ではない、とも読めることになる。つまり、「非核3原則」を変更すれば、「日本国憲法第9条」の改定なしに核兵器の保有や使用が可能となる、と世間に刷り込むための<布石>として決定した答弁書のようにも読めるのだ。
ここには、国是としての「非核3原則」と、その礎として厳然と存在する「日本国憲法第9条」とを、その位置づけや成り立ちや国を成り立たせている重大な歴史的重みを無視して、事務的に優先順位をつけ単純に並列させ、核兵器の保有や使用の壁は「非核3原則」であり、その際、憲法上許されると示されてきた「自衛のための必要最小限度の実力」という条件がつく、というかたちにスライドさせる本末転倒したレトリックが潜んでいるようにみえる。
「自衛のための必要最小限度の実力」の保持を拡大解釈し、核兵器の保有や使用もその解釈の範囲にとどまると政権が強弁しても、国会を通過させられるような条件をみなさんが整えてくだされば、そのときは「9条」の改変なしに核保有の道に突き進みますよ、と支持層にメッセージをおくっているようにも解釈できる内容にもなっているのだ。
安倍政権の、独りよがりの暴走がいよいよとまらない。追い込まれれば追い込まれるほど、この政権はこうした暴走を強めるのだろうか。この政権は<改憲!改憲!>と叫びながら沈んでいくのだろうか──。
日本社会を彼らの沈没の道連れにすることなど、断じて許されない。日本の市民社会はいまこそ全国規模の連帯を広げ、われわれこそ日本国憲法の<保守>であり<旗手>であることを明確に、高らかに宣言し、それをいまの政権に対してはっきりと見せつけ、突きつけていくときである。
(こわし・じゅんぞう/日本ジャーナリスト会議会員)
<核サミット>高濃縮ウラン、京大から撤去 安倍首相表明(毎日新聞2日)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160402-00000002-mai-pol
政府、「憲法は核兵器保有を禁止していない」とする答弁書を決定(TBS1日)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2739307.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160402-00000002-mai-pol
政府、「憲法は核兵器保有を禁止していない」とする答弁書を決定(TBS1日)
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2739307.html