2016年05月07日

長時間労働の実態を暴露 東京新聞・中澤誠記者 「過労社会」を取材=須貝道雄

 春のジャーナリスト講座は2月28日、東京新聞社会部の中澤誠記者を講師に迎え、東京で開催した。テーマは「『過労社会』を取材する」。ワタミ子会社に入社し、わずか2カ月で過労自殺した女性の問題を中心に、長時間労働の実態をどう取材し、暴いたかについて話してもらった。
 亡くなった女性は居酒屋「和民」の横須賀市の店舗に配属されていた。彼女の死が労災と認められたのは自殺から4年近くが経過した2012年2月のこと。当時、横浜支局で警察・裁判担当だった中澤記者は横浜司法記者クラブで、労災認定の記者発表を聞いた。驚きだった。カリスマ経営者として注目されていた渡邊美樹氏の会社で、過労自殺が起きた。「なぜ?」の思いが膨らんだという。

 後日、彼女の両親に会い、会社の経営理念に心酔して入社した本人のこと、過酷な労働などの話を詳しく聞き、社会面トップで続報を書いた。同時にデスクの了解を得て、後輩記者と一緒に「過労社会」のキャンペーンを始めた。「これまで何回も過労死がマスコミで報道されているのに、社会は変わらない。ワタミ過労自殺を契機に流れを変えようと考えた」と中澤記者は語る。
 労働問題と初めて正面から格闘することになり、取材は「もがく・あがく」が続いた。土日を使い、横浜と東京にあるワタミの居酒屋を回り、情報提供を求めるチラシを出勤する社員らに配った。午前3時ごろ、閉店で帰る社員の出待ちもした。加えて、会社幹部宅へ夜回りも。「あがき」が功を奏し、ワタミが折れて、幹部が直接取材に応じてくれた。
 弁護士が何回も口にしていた「36協定」に注目したことで、キャンペーンの方向が定まった。労働基準法では残業は違法だが、36条により、労使が協定(36協定)を結べば、いくらでも残業が許される。しかし専門家によれば、労使の合意を経ない、手続きがいい加減な「名ばかり協定」が結構あるという。ワタミもそうではないか。元社員らを取材した結果、36協定の不正手続きが明らかとなり、幹部も認めた。
 ワタミだけでなく、大手100社の36協定を情報公開請求で入手した。
厚労省が「過労死ライン」と定める月80時間以上の残業を許す企業が、全体の7割を占めることが判明。1面トップで記事にした。「これはまずいと経営者や人事担当にも届くような記事を考えた。数字を示したのはインパクトが大きかった」と振り返った。

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年4月25日号


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posted by JCJ at 07:25 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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