2016年05月10日

巨匠オルミ監督が父に捧げた物語『緑はよみがえる』――戦争とは休むことなく大地をさまよう醜い獣だ=今井 潤

 イタリアのエルマンノ・オルミ監督(80)がカンヌでパルムドールを受賞した『木靴の樹』が38年ぶりに日本で再公開されている。  この作品は19世紀の北イタリアの貧しい4軒の農家の話で、地主から農具や生活の品を借りて暮らしていた一家の少年の木靴が割れてしまい、父親が川辺のポプラの樹を伐り、新しい靴を作った。しかしその樹も地主のもので、一家は村を去らねばならなかった。貧しいが慎しみ深い農民の生活は現代人に強いインパクトを与えずにはおかない。社会の不条理への静かな告発になっている。

 最新作の『緑はよみがえる』は1917年、第一次世界大戦下のイタリア・アジアーゴ高原。冬の山中にイタリア、オーストリア両軍とも塹壕の中に立てこもっていた。劣悪な状況の下で、彼らの唯一の楽しみは家族・恋人からの手紙だ。
 戦況を理解していない司令部から理不尽な命令が届き、その任務に選ばれた一兵卒が塹壕から出たとたんに狙撃され、命を落とす。
 激しい爆撃が止み、司令部から後退の命令が届く。若い中尉は戦争の酷薄さに打ちのめされながら、母にこう綴る。

 「愛する母さん、一番難しいのは人を赦すことですが、人が人を赦さなければ、人間とは何なんでしょうか」と。
 オルミ監督は「父はヒロイズムに駆られて19歳で第一次大戦に従軍したが、過酷な戦場での体験はその後の父の人生を変えた。父が涙するのを見たのは一度ではありません」とこの作品を亡き父に捧げている。

(公開は4月23日より東京・岩波ホールにて)


*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年4月25日号


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posted by JCJ at 06:08 | TrackBack(0) | 映画の鏡 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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