2016年06月04日

テメル新政権は貧困層に冷たい=伊藤力司

 ラテンアメリカ初のリオデジャネイロ・オリンピックが8月に開幕するというのに、開会を宣言するはずだったルセフ・ブラジル大統領の弾劾裁判が5月12日に上院で採決され、ルセフ氏は最長6カ月間の停職、テメル副大統領が大統領代行になった。
 リオ開催が決まった2009年10月、コペンハーゲンでのIOC(国際オリンピック委員会)総会でリオは東京など3都市に圧勝し、中南米初の五輪開催の栄誉を手にした。当時ブラジルはBRICSと呼ばれる主要新興国の一角として躍進、国を挙げた招致活動の立役者となったルラ大統領(当時)が記者会見で感極まって泣き出したほどだった。

 それから7年後、ブラジルは輝きを失い、中南米初の女性大統領を停職に追い込んだ。その原因は、2009年のGDP(国内総生産)が年率6%の高成長だったのが、2015年にはマイナス3・8%へと、この7年間に景気が急降下したことだ。
 今年の失業率は10%に達する一方、物価上昇率は10%で高止まりして国民生活を圧迫している。
 2003年に貧困層を支持基盤とする労働党のルラ前大統領の左派政権が誕生し、低所得者層に児童手当や住宅手当などを給付できた当時とは正反対になっているのだ。
 ルセフ政権批判の背景には、経済の失速によって景気が低迷する中で、富裕層や中間層が不満を高め、かつて長年にわたり政権を独占していた右派が勢いづいていることがある。しかし、現野党の方が以前には利権にまみれ、より腐敗していたことも事実だ。
 一部の富裕層や中間層は「労働党政権が貧困層にばらまきをやって働かない怠け者を生み出している」と主張し、貧困層への憎悪を増幅させている。
 テメル大統領代行の政権では、児童手当の廃止など、貧困層への公的支援が打ち切りになりそうだ。

 ブラジル貧民街で貧困層を支援するNGO(非政府組織)を立ち上げたフリージャーナリストの下郷さとみさんは、ルセフ停職に当たって「五輪は予定通り開催されるが、今後貧困層の暮らしが心配だ」と述べている。

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年5月25日号


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posted by JCJ at 00:00 | TrackBack(0) | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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