2016年06月09日

忖度の空気、末端に広げ現場を威圧/NHK会長「即刻辞任を」 報道の大原則投げ捨て、安倍政権にべったり=河野慎二

 籾井勝人NHK会長は4月20日、局内の熊本地震対策会議で「原発については、住民の不安をいたずらにかき立てないよう、公式発表をベースに伝えてほしい」と指示した。その指示の影響か、NHKの地震報道に、「忖度」が感じられる。
 今回の熊本地震では、本州から九州を貫く中央構造線断層帯が注目され、その線上に愛媛県の伊方原発があり、鹿児島県の川内原発は延長線上近くにある。ところが、筆者が見る限り、NHKニュースはこの原発の問題を報道していない。それどころか、熊本と大分を震度5強の地震が襲った4月18日には、各地の震度を示す画面の地図から川内地区が消されていた。
 テレビ朝日「モーニングショー」(4月21日)でコメンテーターの玉川徹氏が「事故の危険に臆病なくらいの対応」を国に求めたのとは対照的だ。

 会長の指示通りのNHKニュースだとどうなるだろうか。熊本地震の震源域に近い鹿児島県川内原発について、政府や九州電力の発表を垂れ流すだけで、専門家の見解などは報道されないだろう。そうなると、住民の命や暮らしを危険にさらすことになりかねない。
 本来のジャーナリズムはそんなものではないだろう。3・11福島原発事故では、政府・東電がメルトダウンなどの事実公表を大幅に遅らせ、被害を拡大した。その中で、NHKはETV特集「ネットワークでつくる放射能汚染地図」を放送し、高い評価を得た。
 自らの被曝の危険を顧みない取材で核心に迫ったETVの取材は、NHKにとって掛替えのない財産であり、視点を変えれば貴重な「経営資源」でもある。
 浅はかにも籾井氏は「ETVのような取材はやるな」と命じるも同然の指示を出した。報道にとって肝心かなめの大原則を弊履のごとく投げ捨てようとする籾井氏に会長の資格はない。

 こうした批判に公然と挑発するかのように、籾井氏は、狡猾で陰険な計画を進める。それは自らの発言でNHK全体を恫喝し、局内に蔓延する忖度の空気を末端まで広げることだ。それにより、制作者を萎縮させ、自主規制させ、政権に不都合な報道を極力抑え込もうとしている。
 原発以外でも、政権への忖度を感じさせるニュース編成が目立つ。
 オバマ米大統領の広島訪問決定を伝えた「ニュースウオッチ9」(5月10日)がその代表例だ。番組はこのニュースにトップ項目で20分近い時間を割き、中段とラストの計3回も報じた。3回とも安倍首相のぶら下がりインタビューを流して、安倍政権にたっぷりサービスした。

 JCJ賞を贈って志あるジャーナリストを励ましてきたJCJは、政権におもねる籾井NHK会長の姿勢を看過するわけには行かない。
 JCJと放送を語る会は9日、籾井会長の発言はNHKの在り方と会長の資格要件に明確に反するとして、来年1月の改選期を待たずに「即刻辞任、もしくは経営委員会による罷免」を求める申し入れ書をNHKに提出した。
 6月14日にはNHK前で、市民とともに大規模な抗議集会を開催し、籾井退陣へ運動を強める。

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年5月25日号


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posted by JCJ at 00:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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