2016年06月09日

現憲法が国民を主権者にしてくれた=吉原 功

 「人民の人民による人民のための政治」誰でも知っている米国第16代大統領の言葉だ。
 「過去に目を閉ざすものは現在に対しても盲目になる。過去の罪を心に刻まなければ和解の道はない」これは昨年5月に物故した西ドイツ(当時)ヴァイツゼッカー大統領の国会演説。戦後40年に自国の戦争責任を直視し痛切に反省、「我々は若かろうが年をとっていようがみな過去を受入れなければならない」と国民にも被害を与えた国々との和解を呼びかけた。
 唐突だが、日本国憲法はこの二つの歴史的な言明と通底しているのではあるまいか。
 大日本帝国憲法下において国民は主権者たる天皇の臣民であり、その命令とあれば命を差し出さねばならなかった。300万の国民が犠牲となり東アジアを中心とする2000万を超える民衆を殺戮した昭和の戦争はこの体制の帰結である。

 敗戦後、新憲法が成立し、日本国民は国の主権者になった。憲法は権力者が国民に命令を下す道具から、国民が権力者に守らせる決まり、となった。まさに「人民の人民による人民のための政治」を実現するための憲法を獲得したのである。その中心である平和主義・戦争放棄の条項は、昭和の戦争への痛切な反省であり、東アジア諸国との和解の道を切り開く可能性をもつとともに、人類社会の理想をも表現したものといっていいであろう。

 日本のみならず世界の宝ともいうべきこの憲法を、現政権がかなぐり捨てて国民から主権を取り上げ、格差社会を推し進め、戦時体制下に向かって猛進しているのは周知の通りである。国民は「人民による政治」をいまこそ実践しなければ、空前絶後の犠牲をはらって獲得した宝を根こそぎ失うことになろう。

 このような緊急事態のとき、「世界で一番貧しい大統領」と言われている南米ウルグアイの前大統領ホセ・ムヒカさんが来日した。ムヒカさんはいつでもどこでもノーネクタイ。好々爺のような風貌だが、2012年「リオ国際会議」(「国連持続可能な開発会議」)のスピーチで「貧乏な人とは、少ししか物をもっていない人ではなく、無限の欲がありいくらあっても満足しない人のこと」と発言して一躍注目される存在になった。
 さらに「欧米の富裕社会が持つ傲慢な消費を世界の70億〜80億の人ができると思いますか。そんな原料がこの地球上にあるのでしょうか」と問い、世界の根本問題をズバリと提起した。

 また平和は現代人の義務と説き「科学が想像を絶する邪悪な道具」となる可能性に言及、産業と科学研究の軍事化を進める日本政府には警告を発し、民衆には日本国憲法という宝を放棄せず、希望をもって共に闘おうとエールを送ってくれたのである。
(JCJ代表委員)

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年5月25日号


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posted by JCJ at 05:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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