2016年07月01日

米国社会崩壊へ─大統領予備選の実相=伊藤力司

 11月のアメリカ大統領選挙は7月の民主、共和両党の党大会を待たず、ヒラリー・クリントン前国務長官(民主党)と不動産王ドナルド・トランプ氏(共和党)の間で争われることが確定した。両党予備選の過程はアメリカが壊れつつあることを示していたようだ。
 何といっても驚きは、予備選が始まる2月まで泡沫候補とみられていたトランプ氏が各州の予備選を通じてトップの地位を守り続け、本命視されていた共和党の有力者を次々と蹴落とし、ついには共和党大統領候補として生き残ったことである。

 中南米からの不法移民を封じるために、メキシコ国境に「万里の長城」を築きその費用をメキシコに払わせるとか、テロリストを封じるためにイスラム教徒の入国を禁止するとか、建国以来の自由なアメリカ社会の基盤を揺るがすエゴイスティックな主張をふり撒いた。
 これまでのアメリカならそんな主張は歯牙にもかけられなかっただろうが、現今ではそれが喝采を浴びる。つまり「貧しい白人」(poor white)と呼ばれる階層の人々の琴線に触れたのだ。20世紀の米国には分厚い中間層が存在したが、1980年代の「新自由主義」路線で中間層が消滅、1%の富者と99%の貧者が対立する社会に変容しつつあるからだ。
 一方の民主党の予備選は当初ヒラリー氏の楽勝とみられていたのが、民主社会主義者を自称するバーニー・サンダース上院議員の健闘が、貧富の格差拡大を正すための政策に関心を集めた。公立大学の学費無料化を訴えた同議員の政策は、若者たちを奮い立たせた。
 ヒラリー氏は今世紀初頭の8年間、冷戦に勝ったアメリカのビル・クリントン大統領の夫人として国際政治に参画。さらに2009年から4年間は、オバマ政権の国務長官として米国のパワーポリティクスを取り仕切ってきた。まさに歴戦の勇士である。
 11月にトランプ氏に勝てば、ヒラリーはまさに米国史上初の女性大統領として君臨するだけでなく、日本を含む世界中の女性たちへのメッセージを伝える存在となる。惜しむらくはなぜかヒラリー氏は、大衆的人気に乏しいパーソナリティのようだ。

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年6月25日号


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