2016年07月01日

根絶できぬ暴行殺人事件 沖縄県民の願いは「普通の暮らし」=与那原良彦

 我々、沖縄に住む人々が望んでいるのはちっぽけで、ごく当たり前の願いである。普通の暮らしがしたい、ただそれだけである。米軍関係者の凶悪事件、航空機の墜落、部品落下への恐怖、殺人的な騒音、基地からもたらされる被害におびえることがない日常を求めているだけである。
 沖縄戦の犠牲になったひめゆり学徒隊の女生徒の一人は亡くなる前、「もう一度、弾の落ちてこない空の下を、大手を振って歩きたい」と悔しげに叫んだという。
 敗戦50年後の1995年、米兵3人による暴行事件が起きた。復帰後最大の規模になった同年10月の県民大会で高校生代表の女生徒は訴えた。「私たちに静かな沖縄を返してください。軍隊のない、悲劇のない、平和の島を返してください」
 2016年、元海兵隊の米軍属の男による暴行殺人事件で、20歳の女性の命が奪われた。戦後71年たって、何が変わったのだろうか。なぜ、沖縄だけが米軍基地があるが故に繰り返される事件や事故に苦しめられないといけないのか。沖縄の人々は怒りと悲しみだけでなく、若い命を守れなかったことへの胸をかきむしられるような自責の念にさいなまれている。

 女性は4月28日午後8時頃、「ウオーキングしてくる」と出掛けた。元海兵隊の男は、棒で頭を殴り、草地に連れ込んだ上、刃物で刺すなどして殺害した疑いがある。
 女性が直面した恐怖や絶望、悔しさを思うと気持ちのやり場がない。
 事件の背景にある問題の根は深い。沖縄に過重な基地を押し付けて放置する日米両政府も裁かれるべきだ。

 在沖米軍は5月27日に、県内に住む軍人・軍属やその家族に、基地の外での飲酒を禁じ、午前零時までの帰宅を義務づけた。「喪に服するため」の1カ月の措置としていた。在沖米軍トップのフローレンス・ニコルソン中将は「沖縄の人たちと共に喪に服し、悲しみを分かち合う」と記者会見で述べた。ところが、6月4日、米軍嘉手納基地所属の海軍2等兵曹の女が酒に酔った状態で車を運転し、国道を逆走し、軽乗用車と衝突する事故を起こし、2人にけがを負わせた。綱紀粛正の徹底が不可能ということを露呈した。

 県議会は5月26日に抗議決議案を可決し、6月中には41市町村の全議会が抗議決議案を可決する。事件・事故の元凶は米軍基地の過重負担と日米地位協定で一致している。県議会決議案は米海兵隊の全面撤退を自民党が退場した上で、全会一致で可決した。自民も反対できず、公明党やおおさか維新の所属県議も賛成した。
 県議選でも名護市辺野古の新基地建設に反対する翁長知事を支える与党が48議席中で3議席増の27議席に躍進し、過半数を維持した。県民はあらためて新基地建設ノーの民意を示した。

 日米両政府は綱紀粛正と日米地位協定の運用改善で収拾を図る方針だ。その程度で、県民の怒りを抑えるのは不可能だ。
 6月19日には事件に抗議する県民大会が、6万5千人が参加して開かれ、海兵隊撤退を求め、決議した。
 沖縄の人々は、家族や友人、大切な人を守るために立ち上がる。
(沖縄タイムス政経部長)

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年6月25日号


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posted by JCJ at 04:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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