2016年09月26日

金王朝を支え続ける中国の思惑=伊藤力司

 9月初め中国・杭州で開かれたG10首脳会談をはさんで、北朝鮮が立て続けに行ったミサイル・核実験は、米中を先頭とする世界秩序に対する挑戦であった。  正式名称朝鮮民主主義人民共和国の実態が人民・民主のためでなく「金王朝」存続の絶対王政国家であることは世界の常識だ。
 3代目の金正恩朝鮮労働党委員長が核にかける目標は何よりもまず王朝を維持すること、換言すれば米国による金政権つぶし(レジーム・チェンジ)を防ぐことである。

 1998年の長距離弾道ミサイル「テポドン1号」の発射と2006年の第1回核実験で始まった王朝2代目金正日総書記時代からの核開発は、度重なる国連安保理の制裁決議をかいくぐって核弾頭付きミサイル装備が現実味を帯びる段階にまで進んだようだ。
 金王朝の存続を毛頭望むものではないが、圧倒的に優勢な核攻撃力を持つ米国に狙われてきた北朝鮮が生き残りのために「核抑止力」を持とうと考える論理は理解できる。
 核拡散防止条約(NPT、1970年発効)は米仏露中の5大国の核保有を合法化している点で不平等条約である。しかも5大国はこの時点で核軍縮の努力を約束していたにもかかわらず、事実上核軍縮をサボリ続けている。その後インド、パキスタン、イスラエルが核保有国になったのに国連は無力である。
 ほぼ世界中から嫌われている北朝鮮の核保有が総スカンを食い、安保理が制裁を決議するのは当然だ。だが米国を先頭とする核5大国(安保理常任理事国)は自分達の核軍縮が進んでいないことを自省すべきだ。
 中でも朝鮮戦争以来、北朝鮮を事実上の保護国とみなしてきた中国の責任は大きい。中国は北朝鮮制裁の安保理決議に賛成しながら、「民生保護」を口実に金王朝の生き残りに不可欠な石油と食料の輸出を続けているといわれている。

 中国が厳しい制裁に後ろ向きなのは、北朝鮮を米軍駐留の韓国との「緩衝地帯」と位置づけてきたこと。また金王朝崩壊後に多数の難民流入を恐れているからと言われている。

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」(2016年9月25日号)


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