2016年10月03日

原爆・沖縄で新たな事実発掘 「戦争の記憶」に挑むドラマも=隅井孝雄

 8月は忘れがたい日々が続く。私は涙をこらえつつ25本の特集番組を見た。地上波プライムタイムは8番組(うち民放は1)にとどまった。他にBSが9番組、深夜や早朝の放送が8番組であった。8月6日が開会式のオリンピックに覆われたテレビで、「戦争の惨禍」は風化しつつある。
 それでも新しい事実を知る番組があった。

◆被爆米兵の墓標が広島に

 原爆投下直後、広島に救援に入った5万人の米軍兵士。偏見を恐れて口を閉ざし、苦難の年月を重ねた「原爆救援、被爆した兵士たちの歳月」(7月24日NHKBSスペシャル)。被爆米兵を悼む木の墓標が広島の廃墟にあった「知られざる被爆米兵、ヒロシマの墓標は語る」(7月31日・広島テレビ)、緑十字を機体につけた飛行機がフィリピンに飛び、米軍と終戦処理の交渉を行った「71年目の真実、緑十字機決死の飛行」(8月7日テレビ朝日)、戦後生き残った沖縄の住民の多くが収容所に入れられた間、彼らの土地に次々にブルドーザーが投入された。それが基地の原型になった「沖縄空白の一年、基地の島はこうして生まれた」(8月20日NHKスペシャル)。

 「決断なき原爆投下〜米大統領71年目の真実」(8月6日NHKスペシャル)は、トルーマン大統領が、自身で決断することはなく、原爆の威力を実証したい軍首脳部の意向を追認した事実を、新資料で実証した番組であった。「大統領は(原発は)戦争を早期に終わらせ、多くの米兵の命を救った」とのラジオ演説で、?責任を糊塗した”と番組は批判的に述べた。

◆世界的視野から敗戦追う

 第二次大戦中をテーマにした大型ドラマがNHKで3本あった。体験者が次々世を去り、歴史の掘り起しが困難になっているが、ドラマで戦争の記憶に挑戦することはできる。「百合子さんの絵本〜陸軍武官小野夫妻の戦争」(7月30日・NHKスペシャル)は、戦争末期ストックホルムに駐在した将校とその妻が、正確な情報を送り続けたにもかかわらず、軍部が受け入れなかった事実を描き、敗戦を世界的視野で追った。レイテ島沖で沈み昨年海底で発見された「戦艦武蔵」の生存者がたどった運命が初めてドラマ化された(9月3日・NHKスペシャル)。
 また日本軍がいなかった沖縄最北端伊平屋島を舞台にした「ラストアタック〜引き裂かれた島の記憶」(8月15日NHKBSプレミア)など、敗戦への道程と戦争の不条理が描かれた。

◆アジアの苦難に触れない

 国家権力による満州移住の強制「村人は満州に送られた」(8月14日NHKスペシャル)、満州で孤児になった兄弟の今に続く苦悩を描いた「望郷の河」(8月30日関西テレビ)、サイパン島にいまだにうずもれている遺骨「誰が遺骨を帰すのか、玉砕サイパンの戦後72年」(8月28日・毎日放送)など耐え難い苦難も繰りかえし描かれた。しかしアジアの人々の苦難を描いた番組は目にすることがなかった。安倍首相は8月15日の追悼式で今年も日本の侵略行為に一切触れなかった。“テレビよ、お前もか”という思いが残った。

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」(2016年9月25日号)


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posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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