2016年10月30日

「アメリカ帝国」復活は至難の業=伊藤力司

 米大統領選挙は11月8日の投票日を前に、民主党のヒラリー・クリントン候補の当選がほぼ確実となった。共和党ドナルド・トランプ候補の女性蔑視発言が明るみに出て、大統領としての資質が問われることになったからだ。
 その発言とはワシントン・ポスト紙が10月7日、人気TV番組のホストだったトランプ氏が2005年に番組クルーを相手にした猥談の録画をスクープしたもの。「スターなら女に何でもできる。女のプッシー(秘所)をつかむことだって…」といった言葉が続々。

 こういう口さがない話はあっという間に広がる。トランプ氏はすぐに「私の家族と国民に謝罪する」と述べたが「これは男性更衣室での雑談だ」との弁解も。しかしこれでライアン下院議長、マケイン上院議員ら共和党の大物たちがトランプ氏との絶縁を声明した。
 10月9日夜セントルイスで両候補が対決する第2回TV討論会が開かれた。トランプ氏は開会前に、ヒラリー氏の夫のビル・クリントン元大統領に凌辱されたとする4人の女性を率いて記者会見して反撃を試みたが、効果は薄かったようだ。討論会でもトランプ氏は謝罪したが、ヒラリー氏に「あなたは大統領の資質に欠ける」とピシャリ断罪された。

 この討論会の直後CNNテレビの視聴者調査では、ヒラリー支持57%、トランプ支持34%という大差がついた。
 草の根のトランプ支持者たち、ワシントンの既成権力に反感を持つ高卒の白人労働者階層は、マスコミが何を報じようとトランプ支持は不変だ。しかしトランプ氏のスキャンダルが明るみに出た結果、これまで旗色を明らかにしなかった無党派層(全有権者の4割)の票がヒラリー氏に流れそうだ。これまでアメリカを支配してきた既成権力、つまりウォール街と軍産複合体とメディアの勝利を意味しよう。
 ソ連崩壊後4半世紀余、唯一の超大国として覇権を握った米国だが、勝利なきイラク戦争、アフガン戦争とリーマン危機を経て「アメリカ帝国」が壊れかけていることが明白になった。ヒラリー大統領が実現しても、「帝国」を復活させることは至難の業だろう。

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2015年10月25日号


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