2016年11月27日

【今週の風考計】11.27─没後30年の島尾敏雄とミホに惹かれて

2カ月前、筆者がポーランドの旅を始める際、事前に島尾敏雄『夢のかげを求めて─東欧紀行』(河出書房新社)を読み、役にたったことが忘れられない。帰ってきてまもなく、梯久美子『狂うひと─「死の棘」の妻・島尾ミホ』(新潮社)が刊行された。夢中になって読んだ。島尾家に残された夫婦の日記や新たに見つかった原稿など、膨大な新資料をもとに、ミホの心情に分け入り、凄絶な生活を描いた『死の棘』の謎に迫った評伝である。描かれた1953〜55年の事態と生活の中で、本当に狂っていたのは妻か夫か、梯久美子さんが10年の歳月をかけて実相に迫った執念に感動した。敏雄の<東欧紀行>は、1967年10月末から12月初めまでの単独旅行。心身も落ち着いていたころだ。周囲への観察も行き届き、筆致も滑らか、長文が続いている。島尾敏雄は1986年11月12日、69歳で死去。今年は没後30年になる。死の前年に刊行された『魚雷艇学生』に胸が震え、また敗戦後すぐに書かれた短編をまとめた『夢の中での日常』も記憶に残る。そして今、島尾ミホ『海辺の生と死』(中公文庫)を読み終えて、奄美大島の南にある加計呂麻島の自然と習俗のなかで、記憶に刻まれた幼き頃のミホの生活と原点がほうふつとして、浮かびあがる。さらに『妻への祈り─島尾敏雄作品集』(中公文庫)を購書した。そして島尾伸三『小高へ─ 父 島尾敏雄への旅』(河出書房新社)も読んでみたい。(2016/11/27)
posted by JCJ at 10:38 | TrackBack(0) | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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