2016年12月04日

□■経営委の同意得られず、NHK籾井会長退任へ/NHK全国退職者有志が次期会長候補推薦名簿を提出

 NHK全国退職者有志世話人5氏及び「次期会長候補推薦委員会」4氏が、2日午前11時、NHK放送センターを訪れ、NHK経営委員会に対して「会長候補推薦名簿」を提出した。籾井会長の再任絶対反対の姿勢をはっきり打ち出し、視聴者・市民の意向に留意した会長選任を求め、次期会長候補として落合恵子氏(作家)、廣渡清吾氏(法学者)、村松泰子氏(社会学者)の三氏(五十音順)を推薦した。
 同有志は「会長候補」を推薦するに当たって、学識経験者・文化人・NHKOBなど諸分野から推薦することに留意して議論をすすめ、その内容を反映した「会長候補推薦名簿」となっている。
 NHK経営委員会に対する名簿提出にあたり、「私たちの行動が、公募・推薦制導入など、会長選任過程が視聴者・市民に開かれ透明化される一歩になることを期待しています」とのコメントを出した。
(JCJふらっしゅ「ニュースの検証」=小鷲順造)

 また、「推薦基準」として、「政権からのメディア干渉に立ち向かえる人」「視聴者の広い信頼と支持を得られる人」を挙げ、その根拠として<私たちは、「放送は文化である」と考えます。文化にとって必要な要件は、「自律性」です。ドラマも音楽番組もバラエテイーも、ドキュメンタリーもニュースも何者にも支配されず、NHKの責任において、制作されるべきものと考えます。会長はその先頭に立ち、「文化の創造」という理念に基づいて、経営にあたる象徴的存在であるべきであると考えます>として、三代続いた財界人ではなく文化人・学識経験者・NHKOBなどに視野を広げて議論してきたという。

 NHK全国退職者有志「次期会長候補推薦委員会」が、NHK経営委員会委員長・石原進氏及び経営委員各位宛に提出した<NHK次期会長候補推薦名簿を提出します>の文書は、下記URLをクリックしてお読みください。

NHK次期会長候補推薦名簿を提出します(NHK全国退職者有志)
http://www.jcj.gr.jp/images/20161130NHKsuisennmeibo.pdf

▽経営委は6日に「会長指名部会」

 週刊朝日が11月30日付で「これで大荒れになってきた」で始まる<大荒れのNHK会長人事 「ポスト籾井」は政権寄り?>の記事を出していた。
 11月22日、NHKの経営委員会は籾井勝人会長らが提案していた受信料の値下げを見送る方針を決めた。籾井会長は、「今後、受信料収入などが余る」と試し「視聴者に還元すべきだ」と、来年秋から月額50円程度の値下げを提案し、経営委の出方が注目されていた。籾井が出したこの値下げ案は、慎重姿勢の経営委の意向を無視するかたちで記者会見ででぶち上げたという。経営委はこれまでに三度、籾井会長に対して注意を出してきた。


 そして朝日新聞が12月2日早朝、「NHK籾井会長、再任困難 経営委員の同意足りず」の記事を出した。
 共同通信も10時半過ぎに「NHK籾井会長、再任困難」の記事を出して後を追った。

 朝日新聞は<再任が、極めて困難な見通しであることがわかった。任命権を持つ経営委員会(石原進委員長)の複数の委員が籾井氏の続投に否定的で、会長の任命にあたって放送法が規定する、経営委員12人中9人以上の同意が得られない状況だ。経営委は6日に開く「会長指名部会」で、籾井氏も含めた次期会長候補について協議する予定>と報じた。

 共同通信も、<来年1月24日に任期満了を迎えるNHKの籾井勝人会長の再任が極めて困難な情勢であることが2日、関係者の話で分かった>と報じ、理由について<会長の任命権を持つ経営委員会内で、籾井会長の手腕を疑問視する声が相次ぎ、全委員12人のうち、任命に当たって放送法が定めた9人以上の同意を得られない見通しとなったため>と伝えた。

 籾井会長本人の2期目への続投の意欲について、朝日新聞は、<これまで会見で「普通の人は、やりますかって言われたら、やるって言うんじゃないですか」と述べるなど、意欲をにじませていた>としつつ、1日の定例会見では<「(続投を)決めるのは経営委。任期の1月24日までは全力投球する」と述べた>とした。
 共同通信は、<籾井会長は1日の定例記者会見で、再任について「話があった時点で考える。今は何も考えていない」と述べていた>と伝えた。

 6日、経営委が次期会長の指名部会を開く。籾井会長のほか、各経営委員が推薦する会長候補を選考し、年内にも新会長を決める予定となっている。次期会長候補について、朝日新聞は<後任の会長候補には、現経営委員で元三菱商事副社長の上田良一氏などの名前が挙がっているという>と書いている。

 後任については、時事通信が2日夜11時半に「NHK籾井会長退任へ=経営委の同意得られず−後任候補に上田氏」の記事を出した。<上田氏は三菱商事副社長を経て、13年6月にNHK経営委員に就任。現在は常勤経営委員、監査委員を務め、NHKの経営全般に明るい。関係者によると、「籾井会長のハイヤー問題の際に毅然と対応し、他の委員からの信頼も厚い」という>と報じた。もし上田氏が指名されることになると、財界出身者が四代続けてNHK会長に就くことになる。公共放送としてそれでいいのか、NHK全国退職者有志「次期会長候補推薦委員会」の三氏の推薦も含めて、市民社会として広範な議論が必要になっているように思う。

 次期会長候補については、週刊朝日も11月30日付で、<今、候補者として名前が挙がっているのは堂元光副会長だ。最近は外部登用が続いたが、決まれば9年ぶりの内部昇格となる>と書いていた。<堂元氏は政治部出身。04年のNHK不祥事で海老沢勝二会長(当時)の対応が問題視されたとき、海老沢氏を擁護するため奔走した幹部の一人とされる>。

 週刊朝日の取材に対しNHK関係者は、堂元氏について<「政治部らしく裏工作が好きで、官邸から会長に推してもらおうと、政治部で安倍首相と親しい記者が暗躍してプッシュしているとNHKではうわさされています。しかし政治部出身の会長になればますます官邸の御用聞きのような報道姿勢になる。まだ籾井会長のほうがマシだという声もあり、米国大統領選じゃないが、史上最悪の会長選という感じです」>と話したという。

 籾井氏をめぐるこれまでの経過について、朝日新聞は<3年前の就任当初から「政府が右ということを左というわけにいかない」と述べるなど、公共放送トップとしての言動がたびたび問題視され、経営委が3度にわたって注意。国会によるNHKの予算承認も、通例の全会一致が3年連続で崩れる事態を招いた>と指摘。

 時事通信は、<籾井氏は2014年1月の就任記者会見で「政府が右と言っているものを左と言うわけにはいかない」と発言。従軍慰安婦問題でも「戦争しているどこの国でもあった」と述べ、強い批判を浴びた。15年には私的なゴルフで使用したハイヤー代を請求していたことが発覚するなど、言動がたびたび問題視されてきた。NHK予算は全会一致での国会承認が通例となっていたが、籾井氏の会長就任後、3年連続で野党に反対される事態となった>と指摘し、<こうした経緯を踏まえ、経営委は次期会長の資格要件として「政治的に中立であること」をより重視する姿勢を打ち出した。これまでの議論では再任に否定的な委員が優勢で、放送法で会長選任に必要な9人以上の賛同は得られない見込みとなった>と伝えた。

 朝日新聞は11月26日に社説<NHK会長 公共・独立守る人こそ>を出している。
 そのなかで、経営委の全12委員でつくる会長指名部会は、NHKトップにふさわしい人材の要件として、経営能力だけでなく、▽公共放送としての使命を十分に理解している▽政治的に中立である▽人格高潔であり、説明力に優れ、広く国民から信頼を得られる──をあげているが、これを物差しに籾井氏の3年間をふり返ると、あらためて疑問がわいてくると指弾して、以下を列挙していた。

1)14年の就任会見で「政府が右ということを左というわけにはいかない」と語った。
2)翌年には戦後70年で慰安婦問題を扱うかは「政府の方針がポイント」と述べた。
3)今年4月の局内会議で熊本地震の原発報道に関し、「公式発表をベースに」と求めた。
4)私用のハイヤー代をNHKに立て替えさせたこともあった。
5)こうしたふるまいは国会でも追及され、予算は3年度続けて全会一致の承認を得られなかった。
6)退任する経営委員や理事からは「異常事態が続き、職場に不安が広がっている」などと憂慮する発言が相次いだ。
7)籾井氏も最近は自重しているようだが、NHKは予算や人事をめぐって政治権力の影響を受けやすいといわれる。その疑念や不信を深めた責任は重い。

 また社説は結びで、<次期会長を待ち受ける課題は山積している>として、総務省で検討が始まったネット同時配信について触れた。
 <ネット同時配信については放送法の改正が必要で、受信料制度の見直しにも直結する。4K・8Kの次世代放送への取り組みもある>と指摘、これには<国民の理解が欠かせな>とし、<そのためにはNHKが信頼される存在でなければならない>と強調した。

 最後にNHK会長について、<組織の独立を守り、現場の自由な取材や番組づくりを支える。そんな見識と覚悟、手腕をもつ人物こそ、会長にふさわしい>と書いて結んでいる。
 いま、あらためて読み返しておきたい社説である。

 また、2日にNHK会長候補推薦名簿を経営委員会宛提出したNHK全国退職者有志のメンバーは、「今回、財界人を避けて文化人・学識経験者・NHKOBなどに視野を広げて議論を重ね、落合・広渡・村松3氏を推薦した。上田氏は、前三菱商事副社長で、もし指名されればNHK会長は4代続けて財界出身者が占めることになる」と注意を促している。6日の経営委員会・指名部会については、日本の市民社会総体として、厳しく注視していく必要がある。

(こわし・じゅんぞう/日本ジャーナリスト会議会員)


NHK籾井会長、再任困難 経営委員の同意足りず(朝日新聞2日)
http://digital.asahi.com/articles/ASJD177LYJD1UCLV01J.html?rm=596
NHK籾井会長、再任困難 経営委の同意得られず(共同通信2日)
http://this.kiji.is/177207677874782209?c=110564226228225532
NHK籾井会長退任へ=経営委の同意得られず−後任候補に上田氏(時事通信2日)
http://www.jiji.com/sp/article?k=2016120200419&g=eco
大荒れのNHK会長人事 「ポスト籾井」は政権寄り?(週刊朝日11/30)
https://dot.asahi.com/wa/2016112900106.html?page=1
NHK会長 公共・独立守る人こそ(朝日新聞11月26日付社説)
http://www.asahi.com/articles/DA3S12676542.html?ref=editorial_backnumber


posted by JCJ at 19:48 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

この記事へのトラックバック