2016年12月12日

産経、日テレの番組たたきに執念/南京虐殺写真に難癖、印象操作と萎縮ねらう=河野慎二

 産経新聞が10月16日、「歴史戦」と題する企画コーナーに「『虐殺』写真に裏付けなし」との大見出しで、日本テレビの番組「検証」記事を掲載した。1年前に放送された番組について、1ページの半分以上を使って批判するのだから、ただ事ではない。
 産経新聞が仰々しく批判したのは、日本テレビが昨年10月4日に放送したNNNドキュメント15・シリーズ戦後70年「南京事件 兵士たちの遺言」である。
 この番組は、旧日本軍による南京虐殺事件について、兵士たちの日記や元海軍兵の証言をもとに、綿密な取材で事件を検証した調査報道の力作である。放送直後から大きな反響を呼び、2015年度のギャラクシー賞優秀賞を受賞した。

 産経は記事の中で、揚子江の川岸に倒れている多くの人たちの写真について、番組の取り上げ方に対する疑問を列挙。その上で「番組は、断定は避けながらも、“捕虜銃殺”を強く印象付けた」と“検証”した。
 これに対し、日本テレビは26日「番組は『実際の南京の揚子江岸から見える山並みと写真の背景の山の形状が似ている』と報じたもので、虐殺写真と断定して放送はしていない」と指摘。「産経新聞記者の『印象』から『虐殺写真』という言葉を独自に導き、大見出しに掲げた。いかにも放送全体に問題があるかのように書かれた記事は不適切と言わざるをえない」と反論。「産経新聞の記事は客観性を著しく欠く恣意的なもの」と文書で抗議した。

 産経新聞は11月6日の「歴史戦」コーナーで再度この問題を取り上げ、番組が放送した写真について「入手経緯不明、問い合わせ答えぬ謎」と題する記事を掲載した。
 日本テレビの番組叩きに異常な執念を燃やす産経の狙いは何か。
 真っ先に思い当たるのは、写真への?疑惑?を書きたてることで、番組全体の評価を貶めようとする「印象操作」だ。そして、もう一つの狙いは番組制作者への萎縮効果だ。

 プロデューサーやディレクターは、クレームやトラブルには神経を使う。大は安倍官邸、自民党、総務省から、小はネトウヨに至るまで、介入・攻撃のチャンスを狙っている。
 番組制作者が産経の記事を読んで「面倒なトラブルは避けたい」と、権力の核心に迫る取材を手控えるようなことがあれば、メディアを恫喝し沈黙させようとする勢力の思うつぼだ。
 この問題は、産経と日本テレビだけの争いではない。テレビに携わるジャーナリストが“高みの見物”を決めこむことは報道の自由について墓穴を掘ることにつながる。何よりも、周囲の空気を忖度したり、自己規制したりせず、自律した番組制作に取り組むべきだ。

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年11月25日号


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posted by JCJ at 17:41 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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