2016年12月25日

法令違反の電通事件 人間を軽視していた経営陣/「五輪業務」への批判恐れる 首相、石井社長を叱責――作家・本間龍氏に聞く/聞き手=橋詰雅博

 女性新入社員の過労自殺に端を発した電通事件。違法な長時間労働が常態化しているとして東京など各労働局は、本社や各支社を労働基準法違反容疑で家宅捜索した。幹部社員と法人としての電通の立件は、越年する見込み。元博報堂社員で広告代理店業界に詳しく、「電通と原発報道」「原発プロパガンダ」などの著書がある作家の本間龍(54)さんが、この事件について取材に応じた。

――本間さんは、石井直(ただし)社長が首相官邸に呼ばれたという情報をいち早くキャッチしたそうですが……。
本間 10月中旬ごろ、官邸で石井社長が安倍首相から直接、注意を受けたという。首相は「事件によるイメージ悪化は、電通が担当している東京オリンピック・パラリンピック業務に支障をきたす恐れがあるので、一刻も早く事態を終息するように」と社長に告げたそうです。ところが石井社長の反応がいまいちだったので、19日に官邸で開かれた働き方改革の意見交換会で、安倍首相は電通と過労自殺した高橋まつりさんの名前をあえて口に出し、お灸を据えたと思う。

■仕事量は変わらず

――確かにその後、電通は「全館10時消灯」や「労働環境改革本部」の立ち上げ、手帳から「鬼十則」を外すことを検討(9日に削除発表)、さらに来年の「電通年賀会」の中止など矢継ぎ早に手を打った。
本間 夜10時以降の仕事はダメという方針は、社員に評判が悪い。仕事量は減らないから、家や電通の協力会社で仕事を続けているのが実態。石井社長が、売り上げが減ってもいいと言うなら話は別ですが、そうではない。「新しい電通をつくり上げよう」と呼びかけるだけ。ライバルの博報堂などに仕事を取られたら死活問題。売り上げを維持するため従前と変わらずに仕事をこなさなければならないのです。

――今回の事件では、ツイッターなどが大きな役割を果たしたのでは……。
本間 高橋さんが亡くなる前にツイートした「本気で死んでしまいたい」「もう体も心もズタズタだ」「何のために生きているのか分からない」などの魂の叫びや電通を告発する母親の写真がネットで拡散された。電通と関係ない人たちがこれを見て凍りつき、この会社はおかしいとネット上で盛んに発信した。既存メディアもその勢いに押され事件や強制調査、強制捜査を報じた。ネットの力を軽視していた電通経営陣の対応の失敗が事態を悪化させてしまった。

■指名・受注停止も

――幹部社員や会社が刑事処分される可能性があるが、電通が恐れるのは何か。
本間 労基署による長時間労働是正勧告を無視してきた電通は「法令違反企業」に間違いありません。官庁関連業務の指名・受注の停止もあり得る。なによりもそんな企業に世界的な五輪イベントを仕切らせていいのかという批判の声が高まる。電通はこれを一番恐れています。東京オリ・パラのイメージを傷つけ、企業倫理に厳しい欧米からは電通独占業務に対して疑問視する意見も出てくるはず。誘致した安倍首相のメンツを潰しかねない。野党だって国会で追及する。窮地に立ちます、電通は。

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年12月25日号


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posted by JCJ at 09:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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