2017年01月30日

トランプ政権は自由と民主主義を放棄=伊藤力司

 記者会見で吠えたてるトランプ氏をTV画面で見た人々は、アメリカが西部劇の時代に戻ったかと錯覚したのではあるまいか。その風貌はマフィアの親分かと思わせるし、気に入らない質問者を大声で排除する姿は、とても大統領らしい品位の持ち主とは思えない。
 まさかと思われたトランプ大統領の選出はアメリカが壊れつつあることを示すとともに、冷戦終結後4半世紀を経て世界は混沌たる時代に入ったことを意味する。
 冷戦後から2008年のリーマン危機までの20年間は、先進国も途上国も繁栄し世界は安定していた。リーマン後の世界は「ヒト、モノ、カネ」が自由に移動するグローバル化と新自由主義の横行で、先進国から労賃の安い地域への産業の移転が進んだ。少数の富裕層への富の偏在と中間層の貧困層への転落が「1%の金持ちと99%の貧乏人」の対立を生んだ。

 こうした風潮が世界の政治文化に、ローカリズム(地域主義)、ポピュリズム(大衆迎合主義)、ナショナリズム(民族主義)を持ち込ませた。こうした時代には人々は単純な答えを発見したがる。それがあるかのように主張する人間には、権力を握る機会が用意される。
 トランプ氏の勝利はこうした世界の流れを決定的にした。彼は多様で寛容な米国の価値観や、既存の自由な世界貿易体制や国際協力の枠組みを進める伝統に反対した。ブルーカラーの不満をあおって米国第一主義の実現を目指すのである。
 トランプ氏の米国第一主義とは、中南米やイスラム圏からの移民の排除であり、保護貿易主義による貿易赤字の解消であり、米国から途上国に移転した産業を呼び戻すことである。
 しかしこれらの措置はいずれもアメリカの消費生活のコストを高める作用を持つ。しかも、アメリカの基本哲学である自由な資本主義のルールに反する。
 人種や宗教による差別に反対し、世界に自由と民主主義のモデルを示すという、第2次世界大戦後アメリカが掲げてきた国是は、トランプ政権によって放棄されるのか。他方、反トランプ・デモに立ち上がったアメリカ市民の闘いの今後に注目したい。

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年1月25日号


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posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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