2017年02月09日

新春◇鼎談 ポピュリズムと対峙する年に マスコミ威圧、ウソとだましの安倍政治

 2016年は英国のEU(欧州連合)離脱に続きトランプが米大統領選に当選、世界がショックを受けた。これは反エリートを強調し、不安を煽るため、ウソも平気でつくポピュリズム(大衆迎合主義)の勝利という見立てが広がっている。一方、国民の声を無視し続けても安倍内閣の支持率は高止まり。とうとう5年目に入った。
 創立61年目の日本ジャーナリスト会議(JCJ)の隅井孝雄、中村梧郎、守屋龍一の各代表委員が国内外の情勢にふれて、JCJの今後の活動を話し合った。司会は事務局長兼機関紙編集長の橋詰雅博が務めた。
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司会 これから始まるオランダ、フランス、ドイツの欧州の選挙でポピュリズムが勢力をさらに伸ばしそうですが、この現象をどう見ますか。

隅井孝雄 民主主義の欠陥を補うという見方があるが、ボクは賛成できない。むしろ危険な方向に動いている。その象徴である米トランプ政権の閣僚人事をみても、大金融資本や米軍などの出身者が目立つ。トランプ自身も核開発拡充と言っている。富める者はますます富めるという構図が強まる。貧困と格差の是正はできない。これがはっきりしたら、米国内で若者を中心とした反乱が起きるかもしれない。
 一方、安倍首相は、選挙に勝つため改憲や秘密保護法、安保法など国民から反発を受けそうなテーマを引っ込めてアベノミクスに争点を集中させた。テレビ出演も多く、大メディア幹部との会食も盛ん。安倍首相は今のポピュリズム現象より一歩速く先行している。

中村梧郎 ポピュリズム台頭は、貧困と格差の拡大が底辺にあって、その怒りが政治に向けられアンチパワーとして作用したからだ。ポピュリズムと関連するのが、英国オックスフォード英語辞典が16年の言葉として選んだ「ポスト真実」。事実よりも感情に訴える方が影響を与えるという昨今の状況をあらわした言葉。要するにウソがまかり通り、それが分かった時は、もう遅いのです。トランプによるツイッターはその典型でした。
 安倍首相もウソを平気で言う。福島第一原発事故の放射能汚染水について「アンダーコントロールされている」、内戦状態の南スーダンの首都ジュバは「比較的落ち着いている」という発言はその代表です。さらに安倍政権は言い換えがひどい。戦争法を平和安全法制、年金カット法を年金改革法、カジノ法をIR法にすり変えた。戦前の旧日本軍が敗走を転進と言い換えたのと同じ。政治家がウソをつき、大衆を操作するのが露骨になってきた。戦前の日本に近づいている。
隅井 米大統領選での偽ニュースの横行が後日、米国内で喧伝された。そのおかげか、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポスト、ウォール・ストリート・ジャーナルが部数と有料ネット読者を急増させた。信頼できるニュースソースに人々が関心と興味を示したからだ。日本でも同じような現象は起こり得ます。
守屋龍一 ポピュリズムに加担しているのが週刊誌とテレビのワイド番組です。たとえばASKAの覚せい剤騒動では何週にもわたり取り上げているが、安保法、駆け付け警護という新任務を与えられた南スーダンへの陸上自衛隊派遣、沖縄の辺野古新基地や東村高江のヘリパッドの建設工事といった国を揺さぶる問題をロクに取り上げない。
 これは国民思考の分断につながりかねない。こういう風潮は怖い。また、アクセス数の多いネットのサイトが真実性を持っていると誤魔化されている点にも怖さを感じる。事実を伝えることに力を注ぐべきだ。
隅井 まとめサイトの弊害が明るみに出て事実の重みが注目されている。米国では、ファクトチェックが常態化している。大統領選ではよく使われ、候補者の過去の発言と現在の発言を比べてウソがないかをメディアが調べる。ウソが多い候補者は支持を失うわけだが、今回はそれが機能しなかった。ともあれファクトチェックは効果があり、真実は別にあることを明らかにできる。

司会 支持率高止まりの安倍内閣はこのまま続くのでしょうか。

隅井 各国はアベノミクスを破綻と受けとめている。カジノ法、南スーダンの陸自派遣、憲法改正などについて国民の反対は多い。安倍政権が引き続き安泰とは限らない。何か大きなつまずきがあり、そこに強い野党選挙共闘が成立すれば、一挙に瓦解する恐れがある。
守屋 国の借金が千兆円を超え、国民一人当たりの借金は約826万円にものぼる。財政破綻が取りざたされているほどだ。黒田日銀は安倍内閣の従属機関に成り下がっている。矛盾が弾け、国民生活に直撃となると、内閣支持率は激減する。
中村 安倍内閣を追いこむキーポイントは放送メディアです。15年の沖縄全戦没者追悼式に出席した安倍首相に「帰れ」という激しいヤジがあびせられたが、NHKはこのヤジを消去して報じた。沖縄の声を伝えない虚偽の報道だ。内閣のプロパガンダに手を貸しているようなもの。
 年金カット法が成立した16年12月のときは、おでんツンツン男を民放は最優先で取り上げた。政権へのすり寄りと見られても仕方ない。
隅井 NHKの籾井会長の退任が決まった後、12月22日に沖縄県名護市で行われた米軍訓練場返還記念式典をNHKのニュースウオッチ9が報道した。現地入りしたキャスターがリポートしていたが、放送時間約20分間のうち式典は1分50秒だけで、残りは東村高江を取り巻く問題やオスプレイ墜落事故、式典抗議集会、県民の考えなどを伝えていた。新聞を読む人は減っているが、NHKニュースを見る人は結構多い。式典報道くらいの中身を報じてくれれば、公正報道に近づく。そうなれば民意は変わる。
中村 籾井会長の再任を阻んだのは、市民運動の力。籾井会長辞めろという声をNHKの最高意思決定機関の経営委員会は無視できなかった。市民団体が会長候補として3人推薦したが、推薦制で会長を選べるかもしれないと一般の人たちに気づかせたのは大きかった。NHK内部で変化が起きればいいが……。
 ただ、オスプレイ墜落事故報道を見ると、不時着と報じて米軍と日本政府の釈明を垂れ流している。沖縄で起きることは本土でも起きる可能性が高い。なり行きまかせのNHK報道の姿勢に変化が見られず、歯がゆいね。
守屋 昨年末、最高裁は、沖縄県の翁長知事の辺野古新基地建設取り消し処分を違法とする判決を下した。これにより工事が再開された。司法は行政と一体化している。癒着と言ってもいい。沖縄県民の人権を守る立場ではなく、政府も追認する米軍による植民地支配を認めたことになる。
 同じく12月中旬の厚木基地騒音訴訟でも、最高裁は高裁で初めて認められた自衛隊機運航の差し止めを覆す判決を下した。司法の堕落ではないか。
中村 あの最高裁判決は沖縄県民に対する恫喝に等しい。沖縄では機動隊員による地元紙記者2人への取材妨害事件が起きた。平和運動センターの山城博治議長は、微罪での不当逮捕にもかかわらず今も拘留(3カ月)されている。国家権力が市民運動潰しをしている。こうした政治的な弾圧を、本土の人たちはあまり知らないのが残念だ。

司会 最後にJCJの活動を盛り上げるにはどうするかアドバイスを。

中村 このところ市民や主婦、学生が政治にかかわるようになってきた。 JCJはこうした流れを大きくするような役割を果たせたらいい。市民運動が急拡大している韓国では、議員の落選運動が盛ん。民意に反する言動をとる議員を落とそうということで、かなりの成果をあげている。
 日本でそれをやるならネット。選挙での利用が解禁になっているので、ツイッターやフェースブックなどのSNSで公示前ならば公然とできる。JCJが日本の落選運動をサポートできれば、仲間以外の輪を広げられ、存在意義は高まる。
守屋 JCJは企業ジャーナリストとフリージャーナリストが混在する横断的な組織。言うまでもないが両者の交流を拡充させる。2つ目にはきれいになった新事務所の活用です。ミニ講座、映画観賞会などの開催をさらに積み重ねる。3つ目にはジャーナリスト講座を組織として積極的にバックアップする。大学に呼びかけキャンパスで開催する、関西メディアから講師を呼ぶといった広がりをもたせる。4つ目はJCJ賞の賞金などをねん出するためネットで資金を集める「クラウドファンディング」の利用を検討してみてはどうか。
隅井 メディアの課題や問題をさまざまな角度から研究し、提言できるようなシステムがほしい。かつてJCJはそうしたことをやった経験があるので、復活させる。専門家や学者を巻き込んだ研究母体になる。大メディア、地方紙、日刊ゲンダイのような特殊メディア、週刊誌、NHKなどテーマはいっぱいある。
 MICとか各労組などと恒常的な連携強化も必要。集会の共催などで支持の輪を広げる。現役記者との結びつきが足りない。この懸案の課題を少しでも突き抜ければ組織としてさらに充実できる。
中村 現役記者にまず機関紙読者になってもらう。仕事が忙しいので集会には参加できなくても、機関紙を読んでもらえば、JCJが何をやり、どう考えているのかが伝わる。ひとまわり組織が大きくなる。
隅井 A4判1枚のニュースレターを作成し、JCJとつながりをもつ人に郵送する。会員加入の誘い、カンパ、集会参加を呼びかける。担当者を決めてやる。

(まとめ 橋詰雅博)


*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年1月25日号

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posted by JCJ at 21:59 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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