2017年02月19日

【今週の風考計】2.19─介護保険改悪を“成果”と自慢する感覚

武家・町人91万人が住む江戸の町は、意外や長寿の町。年寄りの介護にあたる「介抱人」お咲は、その誠実さが評判で引っ張りだこ。三日泊まり込み・一日休みの介護仕事はきつい。朝井まかて『銀の猫』(文藝春秋)に描かれる主人公・お咲は、自分が会得した「生き生き楽楽・介抱」のノウハウを、多くの人に伝えたいと思い、『往生訓』の刊行にも協力する。読んで、ほっくり心が温まる。さて、いまの日本はどうか。要介護・要支援認定者は、昨年末で約631万人。9年後の団塊世代が75歳以上になる2025年には、716 万人となる。介護職員38万人が不足するという。介護の現場では、低賃金・重労働・高齢化が進み、介護職を希望する人は少ない。平均収入は月額22万円。全産業平均を10万円近く下回っている。また難しい国家資格を取得しても、賃金に反映されない。3人に1人は3年以内に辞めてしまう。人手不足による職員の介護スキルや介護サービスの低下も問題になる。合わせて新人が定着しないため現場を支える職員が高齢化している。まさに現場に3重苦が襲う。介護保険が始まって17年。その内容は改善どころか改悪が進む。要支援者向けの訪問・通所サービスを保険給付から外し、利用料2割負担へ引き上げたのに加え、さらに一定の所得以上の人には、利用料を3割負担にする法案が閣議決定されている。毎年2200億円の 「社会保障費の増加を抑えることが、経済成長に寄与する」とまで明言し、削減を“成果”と自慢するに及んでは、もう言語道断。(2017/2/19)
posted by JCJ at 08:53 | TrackBack(0) | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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