2017年04月26日

イタリア「ジャーナリズム祭」 偽ニュース対処法模索/検証ツール、世界中で開発中=小林恭子

 昨年11月の米大統領選挙をきっかけに、「フェイクニュース」という言葉を頻繁に目にするようになった。
 4月5日から5日間、イタリアのペルージャで開催された「ジャーナリズム祭」では、フェイクニュースの定義や対処法についての議論とともに、中央アジア、トルコ、ロシアなど国家権力 による情報統制の実態を報告するセッションも多く見られた。
「みんなの問題」
 6日午前のセッションで、ソーシャルメディア上のコンテンツの使い方を考える組織「ファースト・ドラフト・ニューズ」のディレクター、クレア・ウオーディー氏は、米大統領選中に金儲 けが目的で嘘のニュースを流したマケドニアの青年たちに限った問題ではない、と述べる。「釣目的の見出しを付けてニュースを発信するメディア、自分が気に入らないニュースを発信するメ ディアを『フェイクニュース』と呼ぶ政治家たち」、情報を共有する人など全員が偽ニュースの生成・拡散に手を貸している、と。「世界的な情報生態圏の危機」に対し、一人一人が行動を起 こすべき、と主張した。

 ジャーナリストのマーク・リトル氏は同じセッションで「メディア側は情報の検証を行うけれども、検証すればするほど、読者は信じない」、と指摘する。同氏はいかに信頼感を勝ち取れる かがジャーナリストの課題という。
 米ポインター研究所では2015年から情報の検証を行うための「国際ファクトチェッキング・ネットワーク」を開設している。セッションに参加したネットワークのディレクター、アレク シオス・マンツァリル氏によると、ソーシャルメディアのタイムラインに表示されるニュースを検証するためのツールを昨年12月、完成させた。ニュースの下方に情報の真偽について論争が あることを示す印が付く。共有しようとすると警告が出る。昨年末来、さまざまな検証ツールが世界中で開発されてきたが、「どれほどの効果があるのか、まだ十分な解明ができていない」と いう。
国家権力が背後に
 フェイクニュースを米大統領選に関連付けて語る時、生成・拡散が問題視された。
 しかし、金目的以外の、政治勢力(しばしば国家権力)による偽情報の発信、いわゆる「ディスインフォメーション」やサイバー攻撃こそが民主主義にとって最大の脅威ではないかと筆者は 考える。欧州で言えば仏大統領選候補でロシアに批判的なエマニュエル・マクロン氏へのサイバー攻撃や偽ニュースの拡散があった。
 昨年夏のクーデター未遂事件以来、トルコではメディアに対する締め付けがさらに厳しくなっている。現在、逮捕中のジャーナリストは154人に上るという。8日午後「オンラインの嫌が らせ」のセッションに出たのが全国紙ヒュリエットのエミル・キズヤカヤ氏だ。「与党に近い人物が私の評判を落とすような文言をネット上で広めていることが分かった」そうで「投獄するぞ 、殺す」などのメッセージも来た。対処法を聞かれた同氏は、「堂々としていること」と答えた。その上で「誰が背後にいるのか、調査すること」。投獄中のあるジャーナリストが「自分は何 も変わっていない」というメッセージを出したことに力づけられたという。
(在英ジャーナリスト)

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年4月25日号


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posted by JCJ at 02:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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