2017年05月02日

共謀罪、「横浜事件」をまたも起こすのか=中村梧郎

 東京都中央区銀座一丁目一番地。
 その一画にあるオフィスに細川嘉六夫妻の肖像画が掛かっていた。私にはそんな記憶が鮮明にある。戦後のレッドパージで新聞・通信社から追われたジャーナリストたちが作った組織「国際 事情研究会」。共同通信外信部長でパージされ、後にJCJ副議長となった本田良介氏もそこにいた。細川嘉六氏は研究会の創建を支援していた。
 国際政治学者であった細川氏の論文が戦前の「改造」誌に掲載されると特高は彼を逮捕する。治安維持法第2条「…其ノ目的タル事項ノ実行ニ関シ協議ヲ為シタル者ハ七年以下ノ懲役又ハ禁 錮ニ処ス」で引っ掛けたのだ。協議したわけではない、「民族自決権こそが大事だ」との見解を著しただけであった。逮捕前、編集者らをねぎらおうと細川氏は富山・泊の宿に皆を招き、一献 かたむける。何かの相談などはない。しかしその後「改造」の小野康人氏、「中公」の木村亨氏ら62名が、神奈川県警の特高に逮捕される。これが4人を獄死させた「横浜事件」の発端であ る。政党再建を「共謀」したとされたのだ。
 司法は戦後、関係書類を焼いた。だが犠牲者らは24年をかけて無実(免訴)を勝ち取る。この「権力がそうと見なせば」誰をも犯罪者にできるという仕組みが、今日の「共謀罪」につなが っている。
 メールや通話、SNSがすべて盗み見されうる監視社会の今日、共謀罪は市民の「内心」をも処罰の対象にできる。「座り込みに行こう」「官邸前で反原発のデモをやろう」と話し合意する だけで犯罪者としての標的になりうる。しかも市民相互の密告が奨励される。
 治安維持法も当初は「一般には無関係」とされた。それが嘘だと判ったころには、労働運動も宗教も、共産党・革新政党もジャーナリズムも壊滅か隷属か、の状況へと追い込まれていた。  ヒトラーは全権委任法で権力を握ると、ユダヤ人より先に市民組織や革新派、共産党を徹底弾圧した。皆殺しである。「ナチスの手口に学べばいい」と言った麻生大臣の発言が不気味に響く 。
 戦前のファシズム体制に憧れ、教育勅語を義務教育にまで取り込もうとする面々がいま、内閣を握る。右翼結社「日本会議」が背後にいるのにメディア、特にテレビ報道はそれをほとんど伝 えない。国会議員288名、安倍首相も麻生経産相も桜井よし子氏も小池百合子都知事もみんなその結社でくくれるのだと知れば事態が誰にも判るのに、報じない。
 彼らは機を見て一気に憲法改悪と弾圧を断行するはずである。メディアはそこに到るまで、「両論併記」だ「中立」だなどと言って、傍観者であり続けるつもりなのだろうか。
(JCJ代表委員)


*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年4月25日号


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