2017年05月27日

阪神支局襲撃事件から30年 樋田毅さん講演 朝日記者ゆえに殺された=廣瀬 功

 87年5月3日、朝日新聞阪神支局が襲撃され、記者2人が散弾銃で殺傷された事件は、発生から今年で30年を迎えた。
 事件と時代状況を改めて問い直し、引き継いで行こうとする集いが4月27日、アジア記者クラブ主催で開かれた。
 会場には、朝日新聞で同事件の取材班キャップとして赤報隊を追い、現在も独自に事件を取材する樋田毅さん(朝日新聞大阪秘書役)が招かれ、事件について語った。
 樋田さんは、襲撃の状況から言えるのは「犯人の明確な殺意だけ。朝日の言論・報道」が標的で、「小尻記者が殺されたのは朝日の記者という以外考えられない」と述べた。
 赤報隊による一連の事件は、87年1月の朝日東京本社銃撃から90年5月の愛知韓国人会館放火まで、3年4カ月間に計8件。うち、前半の東京本社銃撃、阪神支局襲撃(銃撃で記者2人 を殺傷)、9月名古屋社員寮襲撃(銃撃)、88年3月静岡支局爆破未遂(時限式ピース缶爆弾)の4件で朝日が狙われた。
冷戦構造崩壊期  中曽根前首相、竹下首相への脅迫状は爆破未遂事件とほぼ同時に投函された。8月に江副・元リクルート会長宅への銃撃と、標的が変化。90年5月、名古屋市の愛知韓国 人会館への放火事件が最後となった。
 事件が起きた30年前は冷戦構造の崩壊期で、中曽根政権は日本版「新自由主義」推進。その一方で「戦後政治の総決算」を掲げて国家主義的傾向を強め、85年、靖国神社を公式参拝。中 韓両国の強い反発を受け、翌年以降は参拝を取りやめた。
 また、皇国史観や国家主義に基づく歴史教科書にも力を注いだ。
 こうした一連の動きを厳しく批判したのが朝日新聞だった。
 樋田さんは、「30年前、事件に結びついた政治的な問題が今も形を変えて存在している」と指摘。
 「赤報隊が当時『参拝しなければ処刑リストに載せる』と竹下首相、中曽根前首相を脅迫してまで求めた首相の靖国参拝は3年前の11月、安倍首相により実現した」
 「教科書問題では、現政権のもと『近隣条項』が骨抜きにされ、国家秘密法は、特定秘密保護法と名前を変えて成立」「安倍首相が唱える『戦後レジームからの脱却』、例えば『教育勅語を 全否定はしない』という閣議決定をみても赤報隊犯行声明文に流れる戦後体制への憎悪、否定が現実のものとなっている」と、過去と現在を比較。
 「中曽根首相は色々なところに配慮しながら政策を進めた。赤報隊はそれに怒り、事件を起こし、脅迫した」
 今、安倍政権の下で当時の課題がどんどん実現されている。
 「憲法改正や集団的自衛権の憲法解釈変更を含めて、リベラルな主張が受け入れられにくい社会になりつつある。これが30年後の今の状況だ」と述べた。
 また「赤報隊の事件は今も社会に深刻な影響を与えていると思う」、特に「事件が未解決であることが非常に深刻だ」と語り、「事件時効の紙面で右翼にあえて『どう思うか』と聞いたら『 事件の未解決は好都合だ。物議ある発言があれば赤報隊が動き出す、という無言の圧力。社会への重石になるから』という答えだった」のがその理由。
 安倍政権は特定秘密保護法、安保法制を強行採決した、共謀罪も強行成立目前の状況にある。
 「次は憲法9条だ」と勢いづく右傾化、国家主義の流れは民主主義を根底から揺るがしている。
(元朝日新聞記者)

*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年5月25日号


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