2017年05月27日

「中立」を隠れ蓑にするな 世界報道自由デー・フォーラム=鈴木賀津彦

 「ヘイトスピーチとメディアの責任―メディアリテラシーの可能性」をテーマに「世界報道自由デー」フォーラムが5月6日、教育関係者や高校生・大学生、研究者やジャーナリストらが参 加して都内の法政大学市ケ谷キャンパスで開かれた。
 国連が定めた3日の「世界報道自由デー」(World Press Freedom Day)に合わせ、アジア太平洋メディア情報リテラシー教育センター(AMILEC、理事長・坂 本旬法政大教授)が主催して企画。JCJも今回初めて共催に加わって協力した。
 川崎市の在日朝鮮人へのヘイトスピーチ問題の取材を続けている神奈川新聞デジタル編集部編集委員の石橋学さんと、生活保護者に対するヘイトを追っている毎日新聞新潟支局の東海林智さ んがメディア側からの問題点と課題を報告。参加者からの質問を受ける形で議論を深めた。
 石橋さんは、昨年6月にヘイトスピーチ対策法が成立したのを受け、補完する条例づくりを川崎市が進めるようになった成果を説明した一方で、「ヘイトは人権侵害で、差別だということを メディアがきちんと報道しなければならない。『報道の中立』を理由に両論併記のような報じ方も見られるが、彼らの言うことは『論』ではなく暴力であることをきちんと指摘する必要がある 」と強調し、「中立」がメディアの隠れ蓑になっている現実を批判した。
 「マイノリティーを死ね殺せと言っている連中を批判するのが先決だ。朝鮮学校の無償化制度からの除外など政府の差別政策がヘイトにお墨付きを与えている現実もある。真の意味での公正 ・公平な報道ができるのか、権力と対峙する覚悟が問われている」と強調した。
 東海林さんは、在日特権を許さない市民の会(在特会)などのヘイトの動きを取り上げると、在特会からメディアに抗議行動が起こされ、記者が「厄介な存在」と面倒なことになるのを避け 「書かない」傾向になると指摘。そこからヘイト以外の分野にも自主規制が拡大し、記者会見で政治家から本音(ファクト)を引き出さない勝負しない¢フ質につながっている状況を報告し た。
 こうしたメディアの状況に対し、坂本教授からはネットに流れた記事や意見を鵜呑みにする学生が多くなっている問題を、授業での具体的な事例を示して紹介。
 「学生たちの批判的に情報を読み解く力をつけていくメディア情報リテラシー教育を、各地で展開する必要がある。対策法では、地方公共団体が不当な差別的言動を解消するための教育活動 を実施すると定めていることを追い風に、教育関係者とジャーナリストが協力する取り組みを重ねていきたい」と展望を語った。
 議論の中では「ヘイトスピーチ問題は人権問題であり、人間の尊厳という教育の根幹に関わる問題であることを共有していこう」と確認した。
 JCJは今後、同センターと継続的に連携し、学校や図書館などでの教育活動に取り組みたいと考えている。
*JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2016年5月25日号


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posted by JCJ at 01:00 | TrackBack(0) | メディアウォッチ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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