2017年08月25日

《編集長EYE》 築地ブランドはよみがえれない

 東京都の小池百合子知事は、豊洲に市場を移転させた後、築地跡地を売却せず、5年後をメドに再開発し、「食のテーマパーク」にする方針だ。これは「築地ブランド」を守るためだと説明するが、築地ブランドとは何を指すのか。市場関係者は、それは「築地の魚」を指すという。築地の魚というだけで値段は高めだが、消費者は納得する。だから築地の魚というブランドを残したいため2つの市場の併存を小池知事は思いついたのだろう。

 築地の魚が世間から高く評価されるようになったのは、品質を見抜き、それに応じた値段を設定する目利き≠ノ優れた仲卸業者いたからだ。仲卸は卸業者から鮮魚などを買い、それを小売店や飲食店など「買い出し人」に売るのが仕事。

 築地で30年、鮮魚を扱う仲卸として働く東京中央卸売市場組合長の中澤誠さんは、こう言う。

 「かつて沖縄のマグロが高額でセリ落とされたことがある。ブロンド力のない生産者でも築地に持ち込めば、仲卸業者がちゃんとした値段をつけて買ってくれるという信頼性が広まった。従って漁師は『いい魚をとろう』とする。出荷する際もぞんざいに扱わない。目利きができる仲卸業者が取引する値段に信頼を置くから築地にいい魚が集まる。これが『築地の魚』というブランドが生まれた背景です」

 市場と言えば、威勢のいい掛け声が場内に響きわたるセリをイメージするが、築地では現在その割合は1割程度。卸業者と仲卸業者が話し合って値段や量を決める相対取引がメインだ。

 「仲卸はこの鮮魚ならこの値段であの小売店が買ってくれると頭で思い描きながら取引する。セリが少なくなっても、目利きの重要性は変わらない。しかし、土壌汚染の無害化ができない豊洲に市場が移転すると、豊洲を嫌う仲卸業者や小売店の廃業は続出します。移転した時点で、築地ブランドは消えます」(中澤さん)

 小池知事が守るといった築地ブランドは甦れない。

 橋詰雅博(JCJ事務局長も兼ねる)



※JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年8月25日号
posted by JCJ at 13:07 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする