2017年09月25日

加計疑惑―前川喜平・前文科相事務次官インタビュー 官邸「口封じ」で吹っ切れる=橋詰雅博

「官邸の動きがあった」―加計学園疑惑ついて国会で参考人として発言し、安倍晋三首相を告発した前文部科学省事務次官の前川喜平(62)氏が、本紙のインタビューに応じた。約3時間にわたる取材では、焦点の「総理のご意向」文書から官界の空気、今のメディアの状況、自らの生き方にも及んだ。聞き手はJCJ事務局長兼機関紙編集長の橋詰雅博。


――告発に至った最大の理由は何ですか?
 告発という言葉がその時の状況を的確にあらわしているとは思えないが、成り行き上、そうなった。意を決して立ち上がったみたいな、潔さとか悲壮感はなかった。かなり政治によって行政が歪められたという意識はやはりあった。 
 特定の者に対する利益誘導ではないか、国民のための権力が私物化されているとの疑念があった。これは国民が知るべき事実ではないかと思った。
 また、JCJ大賞を受賞した朝日新聞は、私でなく別の文科省の現役官僚からの取材で情報を得て報じてきたわけで、私は目の前で事実が明らかになればいいと思っていました。

信用落ちたら困る

 文科省は5月19日、メディアが報じた「官邸の最高レベルが言っている」「総理のご意向』などの文書は省内調査の結果、確認できなかったと発表した。だが、あの文書は関係者ならだれでも知っている。「出してくれ」と言えば、すぐ出てくるはず。その「存在を確認できない」のはおかしい。これでは文科省が情報を隠ぺいしていることになる。
 私は天下り問題で不名誉な形で辞めている。特に文科省の評判を落としたのは、違法な再就職あっせんに加えて、事実に反するストーリーで、糊塗つまり隠ぺい工作しようしたことだった。それを繰り返すのはいけない。教育行政に対する信用が一回、地に落ちていますから信用を回復する努力をしなければいけない時期なのに、さらに信用を落とすという気持ちもあり、ちょっと複雑な心境でした。
 ただ、積極的に打って出たのかと言うと、本当ところはそうではない。すでにNHK、朝日新聞週刊文春などと接触があったし、知っていることは話した。
 しかし、名前を出して告発するなんて考えてもいなかった。取材では「この文書は確かにあった」とか「経緯はこうです」などと答えたが、「名前や顔を出すのは勘弁してください」と、最初はそういうことでした。

記事は意外だった

――突き動かしたきっけは何ですか?
 ひとつは今、お話した文科省の隠ぺい工作。もうひとつは5月22日付読売新聞が報じた「出会い系バー」の記事です。私がメディアと接触して(加計疑惑で)コメントしていると、総理官邸には伝わっていたと想像している。実際、「前川が漏らしていると官邸サイドが言っている」と私に伝えたメディアの記者もいました。それとは別に出会い系バーについて一部週刊誌は接触しようとしていた。
 店に行っていたのは事実ですから書かれても仕方ないと思い、相手にせず取材申し込みを放置していた。そうしたら5月22日に読売の記事が出た。極めて意外だった。 
 読売はメールで何回か取材申し入れをしてきたが、記事にはしないと思った。信頼するメディアの記者に話したところ、週刊誌は分からないが、いくらなんでも読売は報じないだろうなという感じだった、私もそうだろうなと思っていたので、取材申し入れを放ったらかしていた。

総理官邸が企てる

(読売の記事の)情報の出どころは官邸、これか明らか。もともと官邸は出会い系バーのことを知っていた。昨年の秋に杉田和博官房副長官(警察庁出身で、警備・公安畑を長く歩み第二次安倍政権発足時に内閣官房副長官に就任)からこの問題でご注意を受けた。
 さらに今年2月にも電話で「あの問題を週刊誌が書こうとしているよ」とお知らせがあった。文春、新潮、ポスト、現代、どこだろうなと考えたが、結局、記事は出なかった。杉田さんの情報は何だっただろうなと首を傾げた。
 あの記事は官邸が書かせたと確信したのは、21日に後輩の文科省幹部から和泉洋人総理補佐官(旧建設省技官出身、第二次安倍政権発足直後の13年1月から総理大臣補佐官に就任)が「会いたいと言ったら対応するお考えがありますか」とメールがきたからです。記事を出させたくないなら取引に応じろ、加計学園関係文書について、発言は控えろという風に想像した。そうとしか考えられなかった。

ためらいが消えた

 読売の記事で私自身、完全に吹っ切れた。次官辞任(1月20日)する前までは政府の中にいた人間だし、私の名前でどこまで真実を言っていいのか、国民の知るべき事実を自ら言うべきか、ためらっていた。
 だが、官邸は加計問題で口封じに動き、読売新聞まで使っている。忖度する問題ではなくなった。堰が切れ、官邸に遠慮しなくていい、躊躇しなくていいという思いに変わり、5月25日に東京・霞が関の弁護士会館で記者会見。取材していた朝日、週刊文春、TBS番組「NEWS23」がその日に「文書は本物」と報じた。(続く)

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年9月25日号に掲載
posted by JCJ at 11:42 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする