2017年09月25日

前川喜平インタビュー2 権力すり寄りすぎ、危険な読売・産経 取材しても出ず―可哀想なNHK記者=橋詰雅博

――取材が集中した当事者として今のメディアの状況をどう見ています。

加計問題で最も先行していたのはNHKです。複数の現役官僚から情報を得ていた。私の知る限り朝日より深く取材していた。GW前の4月ごろ、メディアで最初にインタビューを受け、「この文書を見たことがあるか」「加計学園の獣医学部新設をめぐり内閣官房から働きかけがあったか」などの質問をされた。ところがいつまで経っても放送されない。どうしたのだろうと思っていた。

社会部意地の映像

すると5月16日のNHK番組「ニュースチェック11」は大学設置委員会が建設中の加計学園の獣医学部を実地調査するというニュースを流した。ところが画面に映っていたのは、平成28年9月26日の日付が入った内閣府伝達ペーパーでした。「平成30年4月開学を大前提」は映っていたが、「官邸の最高レベルが言っている」や当事者名などは黒塗りでした。

私も日付入りを見たのは初めて。日付入りは課長レベル以下のための記録用で、私が見た日付なしは、ダイジェスト版で省内上層部などへの説明資料。大臣も副大臣も見ているはず。本当にヘンな形で文書が報じられました。

この映像は私に接触していた記者に言わせると、「我々社会部の意地。黒塗りでもいいから出したかった」と。恐らく朝日はこの番組を見て翌日の朝刊で報じた。しかし日付入りではなく、翌18日に日付入り文書を掲載した。

NHKが私のインタビューを放送しないのは、上から抑えられているからだろうと思っていたが、断続的に接触していた記者は「いくら取材してもこのままではニュースとして出ない、記者会見してもらわないと報じる方法はない」と言うのです。取材を積み重ね、情報を持っているに、可哀想だなと思いました。NHK社会部からの記者会見要請もありました。

政府側に立ち報道

読売と産経はものすごく権力寄り。特に読売は相当、政権寄りであることは間違いない。全国紙で唯一教育部がある。教育問題に熱心という評価はしていた。私も使わせていただいたが、「他社には言っていません、話すのは読売だけです」と言うと、大きく書いてくれた。

下村博文大臣(12年12月に就任、15年10月に退任)はそれを散々やっていた。大きく報じて欲しい時は事前に読売に話していた。義家弘介副大臣(今年8月退任)は産経に。出どころが大臣と副大臣で読売と産経がスクープしても問題にしなかった。ところが朝日や毎日が文科省の動きをスクープしたら、犯人探しを始める。

読売は政府側に立って動いてくれるので便利。しかも発行部数日本一で、政府の意図を国民に浸透させるツールとして重宝していた。文科省自身もお世話になっていた。

だが、安倍晋三首相の改憲構想を読売が憲法記念日の5月3日朝刊1面に載せたのは、どうかナと思った。安倍「広報紙」という感じがした。国会でも「読売を熟読」と発言し、とてもじゃないが一国の首相が言う言葉ではない。

私物化される読売

安倍政権によるメディアの私物化は、読売について特にその感がある。NHKも記者があれだけ取材しているのに報じない。しかも他社がどんどんと報道しているにもかかわらずまだ報じない、どうなっているのかと思った。

私は、安保法制は憲法違反だと思っているし、集団的自衛権行使容認は現憲法で認められるとはとうてい思えない。行政府が勝手に法制局の見解とか閣議決定で憲法の中身を変えるなど、あってはならない。憲法は権力をしばるもので、しばられている本人がしばりを解きますなどということができる話ではない。まさに立憲主義の危機で、違憲立法が行われたと思っている。これをおかしいと言った新聞と、言わなかった新聞があり、そこで線が引かれている。

読売と産経はかなり危険です。あまりにも権力にすり寄りすぎている。私の意見に近いのは朝日、毎日、東京。念のため読売も産経も読んだりします。(1面参照)

聞き手 橋詰雅博(JCJ事務局長兼機関紙編集長)

インタビューの続きは次号10月25日号に掲載します。

JCJ月刊機関紙「ジャーナリスト」2017年9月25日号8面掲載
posted by JCJ at 15:19 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする