2017年11月02日

≪リレー時評≫ ヒトへの汚染放置で再稼働が進む=中村梧郎

 大病院でX線撮影をした。右肺に小さな影があった。医師は「要注意、CTで変化を見る」と言う。肺癌の疑いである。
 私には思い当たるフシがあった。6年前の福島原発爆発のすぐ後に浪江町に入った。道路には地震による地割れが幾筋もあった。それを腹ばいになって撮った。筋目に入っている黄色い綿が呼吸で舞い上がる。後の報道で判ったのだが、その場所は原発から噴出した放射性粒子のプルーム(集合雲)が地表を通過した地点であった。黄色い物体は原発を覆っていた断熱材の粉塵。粒子はそれにも付いている。
 球状粒子はセシウムやウラン、プルトニウムやストロンチウムの混合物である。だが煙のひと粒よりも小さい球体だから目には見えない。吸い込んでも気づかない。
 数ヶ月後に喘息の症状が出た。初めてである。近所の医者は「老人性喘息、お大事に」と薬をくれた。しかし治らない。昼夜を問わぬ咳込みは、あるときピタリと止まった。なぜかは判らない。

 この一件を、X線写真を見た大病院の医師に伝え「内部被曝ではないか」と聞いてみた。しかし答えは「もしも肺の内部にまで影響する被曝があったのなら全身がやられてひどい状態のはず、そうなっていない」だった。
「それは外部被曝の概念ですね、でも、粒子が肺に入れば数ミクロンしか飛ばないアルファ線であっても周辺の何十万個もの細胞が破壊されて発がん要因になりますね」と重ねて尋ねたが回答は無かった。こんな言い合いで治療を拒まれても困るのでそれ以上はやめた。放射線医学で重視されてきたのは外部被曝、という噂は本当だったのかもしれない。
 内部被曝は私個人の問題ではない。プルームの下を逃げまどった浪江や双葉、飯館町の人びとがいる。さらに放射能雲は福島を越え、東京にも到達した。甲状腺がんを疑われる福島の子供たちもすでに180人を越えた。 通常の500倍ほどの発現率なのに国は「被曝との関連はない」と言い放つ。さらに1_Svの規制値を20倍に変えておいて安全だと偽り、住民を汚染地につれ戻す。そして東電柏崎をはじめとする再稼働容認である。

 日本にはすでに原爆6千発分のプルトニウムがある。放射性廃棄物処理の見通しもない。
 怖いのは8千ベクレルもの汚染土を政府が「公共工事に使う」と言い出したことだ。これでは汚染が全国民に広がる。
 10月10日、福島地裁は「津波が予見されたのに措置を怠った」と、国を鋭く断罪した。翌日、高江に落ちた米軍ヘリはストロンチウム90を飛散させた。日本は住民の被曝を平然と放置する。

 さて、私の肺の病態。半年後のCTで炎症部の成長がないことが確認された。ヒトの肺は酸素とCO2を交換するために血管と接している。肺胞の放射性粒子は血流に乗って幸いどこかへ移動しているのかもしれない。

posted by JCJ at 10:08 | Editorial&Column | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする