2017年11月07日

《ワールドウォッチ》TSの“首都”は陥落したが、テロの脅威は続く=伊藤力司

 2014年6月にイスラム過激派のTS(カリフ制イスラム国)が、シリアとイラクの広範な地域を版図として成立したことが宣言されてから3年4カ月。今年7月にTSが占拠していたイラク第2の都市モスルの解放に次いでこの10月中旬、“首都”ラッカも陥落した。
 これでTSの拠点はほぼ消滅したが「カリフ制国家」のイデオロギーは消滅したわけではなく、これからも世界各地でテロ事件を引き起こす怖れが充分あると専門家は指摘している。カリフとはイスラム教の開祖ムハンマドの「後継者」、かつてイベリア半島から中東、中央アジア、東アジアにまで広がったイスラム大帝国の支配者を意味するアラビア語だ。
 シリア北部に位置するラッカはTSの“首都”とされ、モスルの陥落後もTSのエリート部隊に守られていた。米軍の支援を受けたクルド人とアラブ人の合同部隊「シリア民主軍(SDF)」は、4か月以上に及んだ奪還作戦の末、10月17日にラッカ解放を宣言した。
最盛期の2014年にはシリア北西部のアレッポからイラク国境までの全域を支配する勢いだったTSは、東部デリゾール県の小さな領域だけに追い込まれた。TSは根拠地を失ったわけだが、自爆攻撃やヨーロッパなどでのテロ活動を続ける可能性を失ったわけではない。
 イスラム過激派の政治暴力に詳しい英国の専門家C・ウィンター氏は「TSのイデオロギーはカリフ制国家が消滅した後も長く存続する」と指摘、現代のイスラム過激派は「カリフ制国家」の樹立宣言で、世界中のイスラム教徒に9世紀から16世紀まで中東を支配した「イスラム帝国」へのノスタルジーを掻き立てたと指摘した。
 西欧キリスト教社会で2級市民扱いを受けているイスラム教徒の2世、3世たちが、あちこちで起こすあれこれのテロ事件の遠因は、数世紀に及ぶこうしたイスラム教徒対キリスト教徒の対立関係にある。TSが事実上消滅したからと言って、イスラム教過激派のテロを根絶やしにすることはできない。


posted by JCJ at 17:24 | 政治・国際情勢 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする